宗がいてくれると言った。
好きだと。
それが嘘でも嬉しくて…。
「宗……」
宗の肌が温かい。人肌って優しい。気持ちいい。
宗の手が瑞希に触れる。
もういつでも瑞希の身体は宗を待ち構えている。
瑞希の身体の中も宗を知っている。
それなのに、今までにない感覚に襲われた。
「やっ…だめ…」
宗が起ち上がった瑞希を手で覆っただけでもう我慢出来ないほどの快感が襲ってくる。
「それ、いい…やだ…一人じゃなくて…」
宗の手を止めた。
「入れて欲しい?」
「……欲しい…宗…ちょうだい…」
「…だから、やばいって…」
宗の呟きが瑞希の耳元に聞こえる。
「ほんと煽ってくるよな…」
煽る…?
宗は枕元からローションをとり、指に掬って瑞希の後ろに手を回した。
「ぁっ……!」
ぞくっと瑞希の身体に官能が走る。
宗の指がぬるりと後ろから瑞希の中に入ってきた。
「宗っ…」
瑞希はぎゅっと宗に抱きついた。
「指だけでも感じるんだよな?」
だって宗がしてる、と思えば当たり前だ。
「宗…俺でも、いい…の…?」
「ん?何が?よくなきゃしてないけど?つうか起つはずないだろ。お前以外の男なんて絶対に無理だ」
宗の指が瑞希の内壁を刺激する。
そしてもう片手で瑞希の起ち上がったものを上下に扱く。
「や、だめ…イっちゃうから……やだ!宗が……して…」
「ったく…そんな事言って…」
宗の唇が瑞希の喉下に噛み付くようにキスしてきた。
「ああんっ」
「もっと、言って…瑞希」
「宗っ…早く……欲しい……」
「ああ…入れてやるよ…」
宗の存在感のあるそれが瑞希の中に少しずつ入ってくる。
「はぁ…ぅっ……宗……宗…っ」
「ああ…いい……瑞希……」
宗がゆっくりと奥に奥にと向かってくる。
何度も宗を感じて奥に何度もその欲望を受け取ったのに、今これが全然違うように感じる。
宗が言葉をくれたことによってその歓喜は今までに感じたことがない位に心は嬉しいと叫んでいた。
同じ事なのに…。
なんでこんなに違うんだろう…?
ただ抱かれるだけでも嬉しい事だったのに、宗が好きだと、言ってくれただけでこんなに愛おしい。
「俺…だめ……イっちゃいそう……だって、嬉しい……」
「俺もだ。瑞希……好きだなんて人に言ったの始めてだ」
「宗、が……?」
「ああ…。俺に寄ってくるのはろくなのがいないからな…瑞希…」
宗が奥まで来たと思ったら腰を思い切り引いた。
「やぁっ!」
そしてまた衝いてくる。
大きく律動が繰り返され奥へ奥へと宗が瑞希を貪るように抽送を繰り返した。
圧迫感はどうしたってある。
けれどそれよりも精神的に歓喜を訴えてくるし、圧迫感だけの所から甘い疼きが、痺れが広がっていく。
「や、…もっと……いい、から…して……宗っ」
「いくらでも。我慢してた分奥に注いでやる」
後始末されるのは恥ずかしくて嫌なのだが、今はそんな事どうでもいい。とにかく宗を感じたかった。
どこもかしこも宗でいっぱいにしてほしい。
「宗…いっぱい……して…」
「瑞希……不安になど思わなくていいから…いつでもいる。いつでも…」
「宗……」
瑞希にはどうしたって不安がつきまとっている。それは決して死ぬまで消えることはないと思う。
それも宗は感じ取ってくれているんだろうか?
どうしたって釣り合うはずないと分かっているのに、それでも宗を求めてしまう。
「宗……ごめん…っ……好き、でごめん……」
「ばか。俺のほうこそお前を全部繋ぎとめるためになんでもしてしまうような男だぞ」
「いいんだ…宗なら…何しても……いいから…お願い……離さないで…」
「離すかっ」
宗が深く瑞希の中に穿ってくる。
「あ、ああっ!」
瑞希の顎が仰け反った。
ずっと宗が好きだと言ってくれたとしてもきっと瑞希の心の奥底が満足してそれに身を委ねる事はないと思う。
どこかいつかは離れてるんだ、と思ってしまう心がいる。
それでも、今言葉をくれているのは本当で、今までそんな事を言ってくれた人などいない。
それだけでもう瑞希にとっては完全に特別な人だ。
心の奥底で諦めていてもでも本当はそうなって欲しくないと望んでいるのだ。
お願い、宗をずっとちょうだい。
自分には何もない。
宗だけでいいから。
瑞希が心の中で何かに願った時、宗が瑞希の奥に飛沫を放ち、それを感じた瑞希もまた宗の手のなかに同じものを放った。
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