ああ、でもかえって知らないでよかったのかも。知っていたら演奏なんて無理だった!多分!
「うわぁ…でも…ああ…もっと話したかった…気付いてれば…」
「…凪ファンなの?」
「だって!ホントすごいんだぞ?今度コンサート行くか?チケット取るの難しいけど…。あ、CD持ってるから帰ったら聴く?あ、でも…」
二階堂 怜の演奏聴いたら…凪のなんかヘボいと思われそうで…それもやだな、と複雑な気持ちになってしまう。
そう凪が思ったのを三塚は分かったのかくすっと笑った。
「俺には凪の演奏は特別に聴こえるから大丈夫です」
「べ、別に…」
自分が狭量すぎだろうとかっと赤面してしまう。
「高比良さん?どうか?」
「あ、野田さん!あの男性の二人連れの予約って…」
「ああ、急にでしたよ?昨日予約できますか?って。実はちょっと前にウチ雑誌に載った事があって…。それ見て電話してきたみたいですけど」
「そうなんだ…確か先週コンサートあったはずだが…」
驚きすぎて何を考えていいのか分からなくなってしまう。だってまさか!世界で活躍している人になんて…。
はぁ~と興奮が少し治まって凪は溜息を吐き出した。
「有名な方だったんですか?」
「そう!僕も今気付いてかなり驚いちゃったけど…」
クラシック界いや、一般の人でも知っていると思うのだが野田さんはそういうのには本当に興味ないらしい。
奥さんの方がうそー!と騒いでいた。
興奮も終わり、残っていた三塚のデザートをいただく。
落ち着かなくて後回しにしてもらっていたのだが…。
「おいしい…」
大人の味と言っていたように濃厚で苦味のある洋酒のきいた味。それにアイスがまた美味しい。
これが凪にとって何よりのご褒美だと思う。疲れも何もかもが甘く溶けてなくなってしまいそうだ。
その凪の顔を三塚が傍に座ってじっと見ていた。
店の従業員もテーブルを片付けたりと忙しく働いているので黙って顔を合わせているだけだけど、じいっと凪を見る三塚の目が優しい。
「……あんまり見るな」
「どうして?凪が幸せそうに食べてるとこを見るのは俺だけですからいいでしょ」
…そうだけど…。恥かしいは恥かしいだろうが。
「それ食べたら帰りましょう」
「……ん」
凪が小さく頷きそして味わいながら残りのケーキを口に運ぶ。くすっと三塚が笑ってそれを見ている。この何気ない時間が大好きだ、と思ってしまうんだ。凪にとっての幸せがここに感じられる…。
「ああ…僕がケーキ好きなの…」
「ん?」
「僕が…なんでこんなにケーキ好きかな…って…きっと小さい頃のせいだ…」
「小さい頃?」
「そう…。ほら母親が…ピアノばかりで、って言っただろう?それでもクリスマスには一応ケーキとか食べた。他にも…いただいたりとか、その時にはさすがにピアノの事なんて一言も出なくて…勿論ケーキがおいしい、というのもあるけど、それできっと…僕にとっては特別なのかも…。単に母親もケーキ好きだったのかも、ってのもあるが」
くすと凪が笑うと三塚が手を伸ばして凪の口端を指で拭った。
「アイスついてた」
「……恥かしいな…もう…」
「舐めてあげたいとこですけど」
「やめてくれ…」
そんな事言われるのにも動揺してしまうじゃないか。
「…凪の特殊な環境でケーキが特別だったんですね」
「多分。その中でも三塚のケーキは特に別格だ。…こっちに来てすぐに買って食べて…全種類一気に食べたい位だった…我慢したけど」
ぷっと三塚が笑う。
「…本当に見てるこっちが嬉しくなる位にいい顔してくれるから…」
なんかそんな風に見られているのも恥ずかしい。
「あんま…見るな」
「ダメに決まってるでしょ。あ、俺以外には見せないように。他でケーキ食べるの我慢してくださいね。その代わりに我慢したらいっぱい作ってあげますから」
「………人前じゃ食べないよ」
自分の顔がにやけて締まりない事になっているのは自分でもよく分かってるから。
「それに…ここまで顔が崩壊するのも三塚のケーキにだけだ…」
「…崩壊っていうか…俺的には撃たれた感じですけどね」
「撃たれた?」
「そ。あまりにも可愛くて。一番初めに見た時は萌え死ぬかと思いましたよ。そのあとのバイバイとかも悶えましたけど」
「うるさいな」
自分では別に何ともない、下手したらみっともないような所が三塚は好みなのだろうか?
※昨日はたくさんの拍手コメありがとうございます~^^
たま~にサプライズしたくなるので(笑)
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