もうすぐレッスンが終わる時間なのに今日はまだ三塚が帰ってきてない。どうしたのだろうか…?どうにも凪の気がそぞろになってしまう。
凪の家に帰ってくるようになってから初めてじゃないだろうか…?
携帯も鳴っていないしきっとちょっと時間が遅れているだけなのだろうとは思うけれど…。試食を作るのになにか上手くいかなかっただけかもしれないし。
そう思ってもどうしても神経が散漫としてしまっていた。
「じゃあ、また来週ね」
「ありがとうございました」
最終の生徒のレッスンも終わってしまう。玄関で見送りレッスン室の電気を消してリビングに行った。
いつもはキッチンにある三塚の姿がない。
どうしてこれだけなのに心細くなってしまうのだろうか?今日は三塚は来ない…?でも朝は何も言ってなかったし…。
ドキドキといやな感じで考えが悪いほうへといってしまいそうになる。
携帯を取り出してみても着信もメールも入ってない。
…と思ったら玄関から物音がした。
来た!
なんだ、やっぱりいらない心配か、と凪は玄関にぱたぱたと向かった。
「すみません!遅れた!」
「いいけど…」
走ってきたのか三塚が汗を流してぜいぜいと息を荒たげていた。
「別にちょっといつもより遅くなるとか入れてくれれば慌てることもなかったのに…」
「いや、メールとかしてるより走った方早いかなと思って」
靴を脱いではぁ、と深呼吸する三塚の背中に抱きついた。
「すみません…すぐ用意しますね」
「別に毎日作らなくてもいいのに…なにか店屋物でもとろうか」
「え?嫌ですよ。凪が俺の以外のを食べたいと言うならですけど…」
「いや!そんな事はないけど…」
「じゃ、簡単にパスタとかでもいい?すぐ出来ますから」
こくんと凪が頷くと三塚がくすりと笑って位置を変え、正面から凪を抱きしめた。
ふわりと鼻腔をつく香水…。ほんの少しだけだけど三塚の甘い香りの中に不似合いな香水の匂いがする!
どん!と凪は三塚の胸を押して離れた。
「凪?」
「…………」
どう…したらいい…?
ざっと顔色が変わったのが自分でも分かった。
「凪…?…どう…?」
三塚が手を伸ばしてきたのを思わず払ってしまった。
「や…っ……!あ……ちが……ごめ……」
そして自分で慌てた。
女の人と会ってるのは見たけど、きっとなんでもないと言い聞かせていたのに。匂いが移る位って…。今日は甘い匂いも薄い。
はぁ、と三塚が溜息を吐き出して凪は慌てた。
「ちがう!」
「何がです?………凪…凪が信じてくれている事…分かってます。あともう少しだけ待ってもらえる?」
「な…に……?」
「ちょっと内緒にしている事があります。凪、なんとなく分かっているでしょう?」
……あの女の人と会ってた…事…?
「今日のも多分…匂いでしょう?でもこれも本当になんでもないです。本当に!呆れる位に…。これは不可抗力でした。……信じてもらえる…?」
信じたい…けど…。
そっと三塚が凪を抱きしめた。
「先にお風呂行きましょうか?匂い…嫌なんでしょう?」
「………いやだ…」
三塚の腕の中で小さく頷けば三塚がくすりと笑って凪の眦にキスした。
「不可抗力ですけど、近づいたのは本当です。凪に嘘は言いませんから。その時に思ったのは前だったらきっと役得と思っただろうに、かえって凪の事を思い出した。匂いが移るくらいきつい香水が気持ち悪くて、凪のボディソープとかシャンプーの香りが好ましくて…かえって凪のエロいとこ思い出してしまってたんです…なんかもう自分で言うのもアレなんですけど…本当にこんなに一人に夢中になるなんて思ってもなかった…この匂いもね…凪気付くかな…って思ってたんです…。そうしたら凪はエロく誘ってくれるかと思って。手を払われたのに焦りましたけど…なのでちょっとだけ暴露。本当はちゃんとしてから言うつもりだったんですけど」
「……全部…分かってた…のか?」
「なんとなくね」
「ず、ずるい!」
必死に三塚を信じようと自分に言い聞かせていたのに!
「だって…凪が可愛いから…あとちょっとだけ…待って?ちゃんと報告出来るようにしますから。先にこんな事言うのもかっこ悪いですけど」
そんな事ない!
「信じて…いい…?」
「勿論。凪だけですから…」
三塚の首に腕を回して抱きつくとやっぱり少しだけ香水の匂いがする。
「……風呂!」
三塚から香水の香りがするのが嫌だ。
「風呂一緒行きましょ」
いや!行きましょじゃなくて三塚だけでいいんだけど!自分は後からでも…。
…と思ったけど三塚に手を引かれて風呂場に行ってしまうんだ。
たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
にほんブログ村小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村 BL小説