「………女の人といたから……」
言ってもいいかな…と風呂を出て暑さにぐたりとした身体で三塚に寄りかかりながら呟いた。
「え?」
「………見た…んだ」
「………いつ?」
きょとんとしながらも三塚が凪の腰を支え、キッチンに向かいながら聞き返してくる。その三塚の顔を凪は見る事が出来ない。
「僕がっ!…東京行ってた…日…お前も…いただろう?」
「………まじで?」
「見た」
小さくこくりと頷いた。俯いたまま、三塚の顔を見ないで。
「……うそでしょ」
「本当だ!きりっとした女の人だった…」
怖い。さっきは違うと言ってくれたけど…でも…万が一…違うとか否定されたら…もしくはばれてたならもう凪はいらないとか…。
ドキドキと心臓が嫌な音をたてる。
「凪!」
三塚がぐいと凪の身体を抱き上げてリビングのソファに凪を座らせた。
「見た!?でも凪は…一言も…?」
「だから!…信じたいって……でも…ずっと…聞きたかった…でも…怖かった…んだ…」
三塚に捨てられるんじゃないかと思って。
三塚は凪の顔を押さえて真正面から凪を見ていた。
「すみません!」
三塚が眉間に深い皺を刻んでいた。
な、に…が……すみません…なんだ…?
凪の唇が緊張で乾いてくる。
「まさか見られたたなんて!」
やっぱり…凪とはもう…?
凪の顔が歪んでくる。
今さっきセックスしたばかっりなのに…?きちんと気持ちを確かめられたと思ったのは凪だけだったのか…?
「凪?どうしました…?」
「やっぱり…三塚は…女性の方いい…?今日だって…香水…」
それが分かっていても凪は離せないのに…。
「違うって言ったでしょ!ああ!もう!何の心配ですか!今凪を抱いたばかりなのに!」
「………」
三塚がぎゅうっと凪を痛い位抱きしめた。
「ずっと…凪…聞きたいのを我慢してた…?」
三塚の低い凪の神経を擽る声が耳に響くとぞくりと背中が戦慄かせながらも小さく頷いた。
「……だから匂い…確かめてたんだ…?」
凪が身体を竦ませて小さくなった。
「ずっと…不安だった…?」
「……信じるって……違うって……思おうって…」
「…それで今日だったから…余計に…?」
小さく頷く。
「本当になんでもないです。好きなのは凪だけです。…好きじゃ足りないな…。愛してる…嘘くさいですけど」
「………嘘っぽい」
三塚ががくりと頭を下げる。
「自分でも嘘くさい気はしますけど…凪に言われたら落ち込みます…」
はぁ、と溜息を吐き出しながら凪の肩に三塚が頭を乗せた。その三塚の頭をそっと凪が撫でるとくりっと三塚が視線を凪に向けた。
「でも本当です。信じて…?」
「………ん…」
三塚は誤魔化さなかった。
「まだ…言いたくない。本当にあとちょっとだけなんです…待って…?」
「………うん」
その三塚の言葉にも凪は小さく頷いた。
「……不安だったら言って下さい!凪を不安にさせたいわけじゃない!凪がいいように…ピアノに専念できるようにしたいのに…俺が邪魔しちゃだめでしょう…」
はぁ、と深い溜息を吐き出している。
「今日も東京の方に行ってました。香水は帰りの電車で香水を瓶ごとふりかけたような感じの匂いを巻き散らかした女がすぐ傍にいたんです。本当にそれだけ」
「………どうだか…」
今まで我慢していた分意地悪く言えば三塚が勘弁してくださいとまた溜息を吐き出す。
「今回の事だけです。内緒にするのは。確証がまだ得られないので…。話してもいいんですけど、ポシャッった場合俺がかっこ悪いから、ってだけなんですけど!」
「…三塚はかっこいいよ…」
いつだって…何したって。
「ああ!もう!……いや、ダメだ。凪お腹すいたでしょう!急いで用意しますね!凪も手伝って」
「……うん。何すればいい…?」
初めて手伝ってと言われた事が嬉しくてはにかむと三塚がまた力強く抱きしめた。
「ああ、くそ…ホント…理性抑えるのが大変…」
抑える必要なんてないのに…。
「でもダメ!ちゃんと凪の体調管理しなきゃないから!」
三塚が凪の手を取って立たせる。
「皿出して。サラダ作りもその間に俺はクレープ作ってあげますね!甘いの食べたいでしょう?」
「クレープ…」
三塚のクレープは初めてだ…。
こくりと頷けばくすりと笑われキスされる。
「凪…これから先は凪しか抱く予定はないです。ずっと一緒にいる予定です。コンサートにもついて回ります。…いい?」
勿論だ…。なんといっても精神安定剤みたいになってるから。
こくんとまた頷いた。
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