車を先にホテルに置いてあとは電車で移動。
三塚はスーツ着用で凪も一応スーツを着ていた。夜にディナーにという事らしいし、スーツを着ていると仕事関係だと思われるかな、ともつい余計な事まで心配して考えてしまう。
三塚とは同い年だし一緒にいても友達だろうと思われるだけだろうけど、つい自分の中では違うので穿った考えをしてしまう。
電車で三塚と一緒に乗って並ぶと三塚の肩が凪の肩よりも高い位置にある。背も高いので当たり前だが、頭も人より飛び出している。肩幅も広いしがっしりしているし…。凪は自分の姿を見てガックリしてしまう。
なよなよ…とまではいかないが近い感じはする。
はぁ、と溜息をつくと三塚がどうしました?と小さく聞いて来た。
「いや…背は高いし体も筋肉ついてていいな、と」
ぷっと笑われた。
「イマドキは凪みたいな方がモテるでしょう。周りの女性もみんな凪見てるし。俺の方が気が気じゃないです。ウチの店の人達も一人残らず皆凪のファンですからね」
絶対そんな事はないと思う。むしろ見られているのは三塚のほうだろうに…。
とりあえず黙って乗り過ごす事にする。あまりくっ付いて話すのもなんとなく恥かしい。
そのまま三塚の待ち合わせのカフェへ向かった。コーヒーを頼んで別のテーブルへ。
離れた方がいいかなと思ったら三塚がこっち、と密接した二人掛けのテーブルが隣同士で空いていた所を指差した。
…話が聞こえるだろうけど…いいのか…?
すぐ隣に凪は腰かけコーヒーに少しだけ口をつける。
手持ち無沙汰で滅多に弄らない携帯を取り出し眺めているふりをする。だってまさか隣の席の話をじっと聞くわけにはいなかいだろう。
勿論弄っているふりだけで耳は会話をしっかりと聞くつもりだ。聞いてもいいから三塚だって凪を隣に座らせたはず…。
「すみません!お待たせしました!」
「いえ…」
隣に女の声!来た!三塚が立って頭を下げている。
「…それで…?」
「ええ!是非三塚くんにお願いしたいと」
「…決まり…ですか?」
「ええ!正式な契約は来週明けにすぐにでもしたいのだけれどいいかしら?」
「大丈夫です」
「先方のカフェのオープン予定が19日の金曜日です。忙しくなりますよ」
「19日…」
「何か?」
「あ、いえ。大丈夫です」
カフェ?オープン?
凪は携帯を手で弄っていたが勿論全然見てなどいない。
「このままスイーツプランニングのお仕事続けるつもりならこっちに事務所作るとか会社起こすとかした方がいいと思うけど?個人で、でもいいけれど将来的な事を思えばね。これからもウチとしても是非懇意にして欲しいと思っているので」
「是非よろしくお願い致します」
スイーツプランニング?
「将来の事より目先の事が先だわ…開店は待ってくれないから…。これタイムスケジュールです。月曜日に契約でその後からもうすぐに詰まっているから。それから契約書にも目を通してもらっておいていいかしら?」
女の人がパンパンに膨れたバッグから紙を取り出している。
「はい」
三塚の態度は終始変わりない。女性もそれを指摘するわけでもないのでいつもこんな感じなのか…?
顔を隣に向けないように気をつけながら会話を聞いていた。
…三塚は家のケーキ屋さんを辞めるという事なのだろうか…?
こっちで仕事…?どういう事だろう…?三塚はこっちに住むつもりなのか…?
「あ、そうそう!私はこれからまた先方の方に伺う事になっているんだけど、バイト予定の子に三塚くんに付き合ってる人いるか聴いて来てって言われてたんだ…」
「います」
「だよね。いないわけないでしょって言ってたんだけど」
「……大事な人がね」
三塚の声が凪の耳に響いてきて顔を俯けるときゅっと目を閉じた。絶対凪に聞こえるように言ってる…。
「はぁ~!幸せそうねぇ…羨ましい。彼女にスイーツ作ってあげたりするの?」
「ええ。毎日」
「毎日!はぁ~ん…それはまたスイーツ好きな彼女だわねぇ…三塚くんが彼氏で彼女は幸せだ?毎日スイーツ食べられて?」
「そうだといいのですけど……幸せそうに食べてくれるのが可愛くて…」
「あ~…はいはい。ごちそうさまでした。バイトの子達には言っておきます。あ、彼女には言ってあるの?こっちに…って」
「いえ……」
「大丈夫?」
「…どうでしょう…?」
どうなんだろう…?こっちにって事は三塚は帰って来ないって事なのか…?
なんか何がどうなっているのかどうにも頭が混乱してしまう。
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