こんな狂気ににた思いを向けられているなんて宗が知ったらどうしよう。
だってこんな思いは初めてで自分でも制御できない。
何でもないと宗が言ったあの綺麗な子、桐生という子の事も宗が呼ぶのさえもが嫌なのだ。
宗があの子の肩を抱きすくめていたと思った時はもうどうしようもなくなった。
どす黒く自分が染まっていくのを感じた。
嫉妬があんなに激しく自分を狂わせてしまいそうになるなんて知らなかった。
「宗っ」
瑞希はぎゅっと宗の首にしがみついた。
「俺……宗、だけ…」
「俺も…だ。瑞希」
ぐっと瑞希の中に宗の質感が増した。
それを感じられれば嬉しくて…。
「宗…いっぱい……して」
「言われなくとも」
「あぁ……宗っ…」
かっこよくて、何でも持っている宗が何もない自分を抱いてくれている。
激しい抽送、中に出された宗の飛沫が潤滑油代わりになってぐちゅぐちゅと音を立てている。
「瑞希のヤラシイ音、聞こえる…?」
「や……言わない、で…」
「嘘。言うと感じて締まるくせに…」
宗が律動を繰り返しながら瑞希の耳に囁くと瑞希の身体にぞくぞくと官能がさらに湧いてくる。
「いい…瑞希」
「ああんっ!…宗…」
女みたいにあられもない声が漏れてしまう。
本当だったら宗はそれに幻滅してもおかしくはないのに、瑞希が声を上げればさらに激しく瑞希の奥へと入ってくる。
「やぁ…っ……」
「瑞希…っ」
瑞希の腰が揺れてもっともっととねだる。
「イく……瑞希は?」
「あっ…ぁああ……んっ……宗…一緒、がいい…」
「ああ…」
「はっ……あ、あぁっ」
宗の手が瑞希の腰をぐいと引き寄せるとさらに奥に宗の滾りを感じる。
「宗っ……好き、離さ、ないで…」
「離さないっ」
一層律動は激しさを増し、宗は瑞希の舌を貪るように絡めてきた。
嬌声は宗の口に吸収され、瑞希はぎゅっと宗の背を抱きしめる腕に力を込めた。
宗の膨張した欲が瑞希の最奥に白濁を放つ。
「瑞希っ」
宗の焦燥感の籠もった熱い息で呼ばれた名に瑞希も身体を震わせた。
「……宗」
顔はどうしたって見られない。
後ろから宗の手が回っていて顔を合わせなくていいのが幸いだけど、でも恥かしすぎる。
風呂場は広くて、宗が言ってた通りに浴槽も二人で入られる、けれど…。
「そ、宗…っ」
宗の手がさわさわとお湯の中で動く。
「ん?だって瑞希の身体触り心地いいから」
宗の唇が後ろから瑞希の首筋に這ってくる。
「んっ」
強く吸われて思わず鼻から声がもれてしまい、恥かしくて口を押さえた。
「抑えなくていいよ」
いくらなんでも恥かしすぎるから瑞希は小さく首を振るとくっと宗の笑い声が聞こえた。
「可愛いね…瑞希」
高校生に可愛い、っていわれるのは一体どうなんだろう?
瑞希は顔を取り繕って後ろの宗に振り返った。
「何?」
面白そうにして宗が聞いてきた。
「…なんでもない」
瑞希は宗にもあまり自分を出すのを控えなくては、と自分に言い聞かせた。
そうじゃなければ、自分は重すぎる。
境遇だって重いのに、気持ちはさらに重いのは自分でもよく分かっているのだ。
依存しないように…。
無理だろうけれど、なるべく。
ふいと瑞希は顔を前に戻した。
宗の肩幅が広くて瑞希が腕の中に入ってしまっているのもずるいと思う。
4つも下なはずなのに、全然どこもかしこもそう見えない。
「…ずるい」
「何が?」
「……こんな高校生いるはずない」
「いるし?」
「……普通じゃない」
「まぁ、普通ではないな。でもまだ俺なんて可愛いほうだろう」
「はぁ?どこが?」
「世の中には想像できない位凄いやつはもっといるさ」
とてもじゃないが瑞希にこれ以上想像する事は出来ない。
「それも俺みたいに自分の知恵絞ってじゃなくて素だ。俺には理解できねぇ」
宗の表情が違う。
誰、の事…?
瑞希は顔を俯けた。
「ん?気にするな。桐生の事だ」
またあの子の事なのか…。
やっぱりあの子は宗の中で特別らしい。
兄嫁だとかってわけの分からない事を言っていたけど。
「そのうち…ああ、でも奴ら今は忙しいから…4月に入ってからになるかな…」
奴ら…?
宗のお兄さんと、という事だろうか?
なんとなく胸がつかえている感じがするけれど瑞希はただ宗の話を聞いていた。
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