「どんなの…?」
「細いヤツ。俺のは別に細くなくていいけど…」
三塚の影から三塚と友達をじっと見比べる。
「凪、細い方がいいでしょ?」
「え?…あ、ああ…う、ん………」
指輪…するのか…?
照れくさしてかぁっとしてくると三塚と友達が今度は凪をじっと見ている。
「年いくつ?」
「一緒」
「……見えないな。…女だったら美男美女…って言いたいとこだけどヤローだから美男美男…?」
「アホぅ」
「いや…分かるけど…ちょっとは…綺麗だから……うん、アリだな…」
「…………もう二度と来ないようにしよう。来ても凪は連れてこない」
三塚が真面目な顔で言いきると友達が慌てていた。
「別に!俺がどうこうしようなんて思っちゃねぇよ!」
「…いや、危険だ。凪、さっさと決めて店出ましょう。凪のサイズで一番細いのこれだな…してみて?…どう?邪魔になる?」
「…いや、どうだろう…?大丈夫…かな…?多分」
鍵盤にぶつからない事はないと思うけれど邪魔にはならないと思う…が。
シルバーなのかプラチナなのか…凪には分からないけれど…。
「それの太いバージョンがある。見た目は違う感じに見えるけどな」
「…いいなそれ」
26歳の男三人で頭を寄せて話してるのが指輪ってどうも変な気がするのは間違いじゃないよな…?
しかも…この指輪って…三塚は…そういうつもりの…指輪…?
三塚がそれに決め一旦箱に包装してもらい、支払いは仲良く半分こだ。
「なぁ、一緒住んでんの?」
「そう。っていうか俺が押しかけたんだけどな」
三塚の友達がレジ打ちしながら聞いてくる。興味津々らしい。
「へぇ…。しっかしホント綺麗な人だなぁ…同じ人間でこんなに造形が違うもんかね?目に鼻にってパーツの内容は変わらねぇのにな…」
「ウチの近所では王子様って言われてる」
「あははは!確かに!うん!分かる!…近所って事は幼馴染なのか?」
「いや、最近だ、知り合ったのは。半年…満たないか」
「へぇ~…」
いたたまれない…と凪は三塚の後ろに隠れるようにして小さくなっていた。元々自分から気軽に話しかけるとかいう性格ではないし、黙っておいた方がいい。
「ええと…凪さん、っていうの?いいのコイツで?」
「……なんで皆同じような事言うかな?」
「当たり前だろ。二股三股かけても平気なヤツだぞ。…それがどうやら本気らしいのは分かるけど」
……そうなのか…?
ちらっと三塚を窺う様に見上げると三塚が凪の耳を塞いだ。
「なんで皆凪にバラそうとするかな!」
「そりゃお前の行動が今までさいってーだったからだろうよ」
ははは、と友達が笑ってるのが聞こえる。
…三塚が自分の友達の所に凪を連れて行ってくれるのは嬉しいと思う。友達にちゃんと言える位自分の事を考えてくれているという事なんだ。
残念ながら凪はそんな友達もいなくて三塚を紹介なんて出来ないけれど。
「今は凪だけでいい」
「……誰だ?お前は?…って感じだな、おい」
「凪、聞かなくていいです!」
「聞いても聞かなくても変わらないけど…?」
だって凪が欲しいと思うのは三塚だけなのだから。
「……姿だけじゃなくてホント綺麗な人だなぁ~…」
「そうなんだ」
三塚がこくこくと頷いているけど…それが恥かしい!というのに!
「…お前今フリーだっけ?」
「そ!誰がいい女いねぇ?」
「いない。お前に彼女出来たらまた来る」
「……できるまで来ないって」
「来ない!危険だ。さ、凪!いきましょ」
友達から紙袋に入れてもらった物を受け取るとさっさと三塚は凪の腕を引っ張って店を出て行こうとした。
「毎度~。また待ってるよ!」
「何かあればな!」
凪は三塚の友達に小さく頭を下げると三塚の友達がにこにこと笑っていた。
「また来てくださいね。別に三塚いなくてもいいし」
「凪!こなくていいですから!」
「ひでぇなぁ…」
そのまま、じゃ、と店を出るけど、そんな風に気を遣わない存在だろう三塚の友達、野田さんといい…いいなと思ってしまう。
「まったくどいつもこいつも…」
「三塚を心配してた、って事だろう?」
「………まぁ…確かに悪いけど…酷いヤツだったと自分でも思いますけどね。でもだからなのか…どいつもこいつも凪の事好意的だし。…そこはいいけど…凪…すみません」
「何が?」
「いや、なんか、ね…」
こりこりと三塚がこめかみをかいているのが可愛くてとんと三塚の背中を拳で突いた。
「僕は嬉しいよ…。ちゃんと三塚の中に入れてもらえてると分かるから」
「……………抱きしめたい!」
「だめ」
分かってますよ…と三塚が溜息を吐き出すのもやっぱり可愛い。
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