なんかずっとどきどきして落ち着かない。
やっぱりスーツなんか着ていつもと違うからだろうか?
三塚が凪の気になっていた事を消化して、また友達に紹介され、そして指輪とか…。
左手薬指用なんて…。
コーヒーショップで女の人が三塚に彼女いるのかと聞いていたけど、指輪をしていれば少しは牽制になってそんな質問もされなくなるだろうし、三塚に会った人が結婚してるんだ、と思うに違いない。
信じていないわけじゃないけどそうしたら少しは凪の不安も薄れそうな気がする。
だって見た目がカッコよくて、この声で話されたら誰だって惹かれるに決まってる。
絶対。
…今日の女の人にはそういう穿った所が見えなくて本当にほっとした、なんて言ったら三塚に怒られてしまうだろうか?
だって…信じると言ったってやっぱり心配はしてしまう…。
ちらっとちょっと前を歩く三塚の鞄と一緒に手に持っている袋に視線を向けて照れくさくなる。
欲しいものが指輪って…。
好き合って一緒に住んで…なんだから…間違ってない…よな…?
足元がふわふわと浮いている気がする。
「凪、時間ちょっと早いですけどレストラン行きましょう」
「…え?…あ、うん…」
ぽーっとしている気がする。
「凪?どうかした?」
「え?ああ…なんでもないよ?ちょっと夢見てるような感じだな、って思ってただけ」
くすりと三塚が口元を緩めた。
「本当はこのままホテル行きたいとこですけどね。……凪、食べるの平気そう?」
「多分。……そういや三塚以外のって…野田さんとこ以来だな…。今は全然前とは違っているしお前がいるから大丈夫だと思う」
大体にして今日は全然ピアノの事なんて考えてもいないのだ。コンサートが近いのにそんな事が初めてだ。以前は何かに追いかけられているような脅迫概念に襲われていたのに今は全然なのだから。
「…俺がいるから?…いなかったら…?」
「いなかったらきっと何も変わっていないと思う。前と一緒。ピアノも変わらない。食べられなくなるのも変わらない。何も変われなかったと思う…」
だからこそ凪にとって三塚だけが特別なんだ。
でも、凪はだからこそ三塚が特別だと思うけど、三塚は凪のどこが特別なんだろう?自分にいいとこなんて一つもないと思うけど…。世話になるばっかりだしこんな風に幸せだと自分が思うようになれるのも全部三塚ばかりからなような気がする。
でも凪がそう答えれば三塚が嬉しそうに顔を緩めていた。どこが嬉しかったのか…?
こうして隣に三塚がいてくれて凪は安心していられるけど、じゃあ今、もし三塚がいなくなったら…?
考えられない事だけど…きっと前よりもおかしくなってしまうだろう。幸せで満たされる事を知った今ではそれがなくなるのが一番怖いんだ。
本当に…男なのにいいのか?とか色々思う事はあるけれど、それを今言っても仕方のない事というのも分かっている。
三塚はちゃんとこうして凪の事を考えてくれているのだから。
やっぱり抱きつきたいな…と思ってしまう。さっきは三塚にダメ、と言ったけど。
「ん?」
じっと凪が見つめていると三塚が気付いて促してくる。
「抱きつきたいな…と思って」
「いいですよ!どうぞ?」
三塚が両手を広げるけど、凪はそれを無視してすたすたと歩いてスルーする。
「え?なんで?」
「できるかっ!」
恥かしい!そんなのはもし自分が女だったとしたって出来るわけないだろ!
「別に近所でもないしいいですよ?」
…こういう所は凪はついていけないけど、多分自分の感覚は普通なはず。ちろっと三塚を流し目で睨むと苦笑しながら三塚が隣に並んだ。
「シャイなんだから」
「……そういう問題と違うと思うけど?常識だろう?」
三塚が楽しそうに笑っている。
「しまったなぁ…コース料理になんかするんじゃなかった。時間かかる」
「………別にいいだろう…?時間はいっぱいあるんだから」
「そうですね。…そうなんですけどね~…じゃあホテル行ったらね」
「…ああ」
ホテルに行けば勿論誰の目があるわけでもない。抱きつくのだってキスだって…いくらでも…。
凪だって当然それを望んでいるのだから。
そのままフレンチの予約していた店に入る。デザートが三塚の作ったものじゃないのが残念だが、今日はどこか凪も夢見心地でどうも意識が散漫。食事の味もふわふわした気分のままでイマイチ分からないような感じだった。
※tsrさん、mm3さんいつもありがとうございます~(T-T)
皆様の拍手コメ、コメントもスルーで申し訳ありません(><)
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