今から帰ります、と電車の駅で待っている間に凪にメールするとすぐに気をつけてと返事が返ってきた。
…遠いな、と思ってしまう。
今までは自宅と凪の家は近くだったので、仕事が終わればすぐ凪の家に帰れたのに仕事が終わってもこの移動時間が長すぎる。
どうしても開店前のことなので詰め込んで忙しくなるのは仕方のない事だが…。
早く凪の顔が見たいなぁ…とか…毎日見ててもつい見惚れてしまう凪の顔を思い出せば顔がニヤケそうだ。
今日は指輪の事もすぐに気付かれからかわれた。
凪も誰かに…いや、凪が会うのは生徒さん位で誰も指摘しないか、とちょっと残念になる。
電車は帰宅ラッシュは過ぎているはずなのにまだ混みあっている。段々空いてきてやっと一息つくような感じだ。
凪がコンサート前だというのに重なったのは痛い。だが今の所凪は大丈夫そうだし、信じてもくれたようで安心した。朝も早くて帰りも遅くなってしまうがその分一緒にいるときは凪から離れないようにしよう。
凪は精神的に弱いくせにすぐに我慢するから…。全部ぶつけてくれればいいのに。
昔の自分にはそんな事思うなんて考えられない事だ。いや、凪だからだ。凪相手じゃなければやっぱり面倒だと思うだけだろう。
早く帰って凪を安心させてやらないと。
仕事のほうはどうやら上手くいきそうだ。スイーツも気に入ってくれてるし、仕事の手順の説明でもレシピでも分かりやすいと好評価で是非季節ごとの限定メニューなんかもお願いしたいと今回だけでは終わらないようで安心する。これから繋がっていければ…。これから先の事がどうなるかは分からないが凪に置いていかれない様に自分も頑張らないと。凪にスイーツを食べて幸せな顔をしてもらえるようにも腕も磨かないといけない。
一人電車でぐっと手を握り締め力を入れた。
凪の家に着いたのはもう夜の11時になろうかという頃だった。鍵は貰っていたがインターホンを鳴らすとばたばたと走ってくるのが聞こえてくすりと笑ってしまった。
外灯の下で鍵を開けて玄関に入ると凪が飛びついてきた。
「…おかえりっ」
「ただいま」
凪の耳にキスしながら声をかけると凪がくすぐったそうにする。
…可愛いじゃないか!このままベッドにと言いたいところだが…凪がぎゅうっと抱きついて離れない。
「……寂しかった?」
小さく凪の耳に聞くと凪がこくんと微かに頷きぐわっと胸に焦燥感が湧き上がる。
なんでこんな可愛い事するんだろうか!たった一日も離れたわけでもないのに!やっぱり自分がずっとついていないと、なんて変な責任感も湧いてくる。いい大人の男相手なのに、凪に関しては可愛いにしか思えない。
「凪…」
凪の体を抱きしめながら唇を重ねた。
「ただいま…」
「おかえり」
いつも凪がレッスンを終われば一緒の時間だったのに大分ずれ込んでいる。仕方ないが…また我慢してるはず。
何度も軽くキスを交わしたまま凪の体を抱き上げてリビングに行った。
「ちゃんと食べた?」
「食べたよ。三塚は?」
「カフェでまかないをいただきました」
「…そっか」
ソファに凪を降ろすとわずかに凪が体を竦ませた。
「…?…凪?どうかした?」
「え?何が?どうもしないよ…。ただ…三塚がいなかったから…」
まだ凪が抱きついているぼだが、そんなに心細かったのだろうか?
「ごめん…ずっと一人だったのに…別に平気だったのに…おかしいだろ…?」
恥ずかしそうに凪が顔を仄かに赤くしてるのが可愛くてつい凪の頭を抱えて眦にキスする。
「全然。可愛い…甘えてるんだ?」
「そうだ…甘えていいって…言ったよな…?」
「勿論。いくらでも。キスもいくらでも…」
ちゅっちゅっと音を立てて戯れてると恥ずかしいからやめろと凪が言いつつも離れる気はないらしい。
「……すみません…ちょっと離れるのいいかも…」
「ああ!?」
「だって凪が可愛く甘ったれてくるなんて…」
どうしようもない位可愛くて凪の体をぎゅっと抱きしめると凪も手を絋士の背中に回してくる。
「ほら…可愛い…」
「………」
じゃあしない、といつもなら言いそうなのにやっぱり言わないでぎゅっとしたままだ。
「凪お風呂は?入った?」
「…まだ」
「時間も遅いしじゃ一緒いきましょ」
…それもいいよ、行かない!といつもは断るのに言わないらしい。
ちょっと…いや、かなりいい!…なんて言ったら凪に怒られそうだけど。あまり言って臍曲げられても大変なので黙っておいたほうがいいだろう。
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