どうしようと考えても答えが出ないまま生徒のレッスンもこなして終わった。
一人でいるとテレビをつける事もなく生徒や親御さんからコンサートのCMを見た、頑張ってと声をかけられるがそれどころじゃなくて困ってしまった。
コンサートの事よりも三塚の事が気がかりだなんて…。
ただもうどうなるにしても凪には三塚だけだ。
たとえ…離れる事になっても…。
ちょっと離れただけでも心細いのに…でも三塚の邪魔する位ならいくらでも我慢する。
来週まで…月曜に創英が迎えに来ると言った。その先がどうなるかなんて凪にも分からない。でも今目の前にある事が大事なんだ。三塚を守らないと…。凪の為に失敗するなんて耐えられない事。そのために自分が耐えればいいだけだ。
今までずっと三塚に貰ってばかりだった…。凪も三塚を守りたいのだから。
ソファに座って一人考え込んでいると三塚から今から帰りますとメールが来た。本当に今日は早い!毎日11時過ぎ位に帰って来てたのに今日は二時間位早いかも…。果たして本当に早く終わったのか、凪の日中の電話が気になってしまったのか…。電話でうまく誤魔化せなかった自分を悔やむ。
一人でぐだぐだと考えているだけで大分時間を過ごしてしまったらしい。玄関のチャイムがなってばたばたと凪は玄関に向かった。
「おかえり!」
「ただいま!凪!何があった?」
凪の声色だけでも三塚は察し、確信しているらしい。
三塚に抱きつき胸に顔を埋め、そして小さく首を横に振った。
「凪!ちゃんと言って!」
「……まだ…言えない…」
自分の考えさえも纏まってはいないのだ。
「まだ…?」
「うん……まとまらなくて…」
「でも…凪が今、動揺するような事って…父親の事位じゃないんですか…?…立花 創英が来た…違いますか?」
三塚が抱きついている凪の身体をぎゅっと抱きしめながら聞いて来た。
「…そう…だ」
「…やっぱり…。…何もされてませんか!?」
あ…。
キス……色を含んだものじゃないけど…されてる…。
凪が返事に詰まると三塚は凪の頬を掴んで上を向かせた。
「何をされたんです!?」
荒たげた声に眉根を寄せた怖い顔になっている。
「キ、ス……あ、でも違う!そういう…意味合いじゃない!」
「キス!?されたんですか!?」
「ちがう…本当に…親愛でもないけど…しいて言うなら…嫌味か嫌がらせとか…そんな…あ、っ……三塚…っ!?」
ぐいと三塚が凪の身体を持ち上げた。
抱き上げるんじゃなくて持ち上げる、だ。肩に荷物を運ぶように担がれて寝室に連れて行かれるとベッドに投げ出された。
三塚が静かに怒っている。身体から怒りのオーラが見えそうな位に。
「凪は俺のものだ…ですよね…?」
そのオーラとは反対に静かな声だった。
「そう…」
「何を簡単に触れさせているんです?」
三塚がすらりとスーツを脱いでそしてネクタイを緩めた。凪の身体を組み敷き凪の着ていた衣類を剥いでいく。優しく…じゃない…もどかしそうに荒々しくだ。怒りの矛先が凪に向かないようにセーブしているのも分かる。
「僕には…三塚だけだ…」
三塚は自分の解いたネクタイを手に取りそして凪の手にかけると凪の手をベッドに結わえ付けた。
「な、に……?」
「閉じ込めておきたい…。鍵をかけて…」
凪の脇の下に三塚が顔を埋めて匂いを確かめるように舐めた。
「縛り付けて外に出さないで…俺だけを見て俺だけを待ってればいいのに…」
「三塚…だけだ、…と言って、る…」
「嘘でしょう?じゃあなんでキスなんてされるんです?」
「だから、それは…違う…」
「違う?じゃあ俺も誰かとキスしてきてもいい?」
「嫌だっ!三塚は僕の!…僕だけの……っ」
「そうでしょう?俺だってそうです。分かりますか…?俺の中が煮え滾っている…」
「いい…いくらでも…滅茶苦茶にして…」
むしろして欲しい。何もかもを忘れられる位に!コンサートの事も父親の事も創英の事もこの先の事も…全部今は考えられない位にぐちゃぐちゃにして欲しい。
三塚だけの存在がここにあるんだと教えて刻んで欲しい。
「三塚…だけ…あ、ぅ…っ」
ぎゅっと痛い位に肌を吸われた。そしてそれが身体中あちこちに散らばっていく。甘くなんかじゃなくてキツくだ。
「もっと…キツく…いっぱい…してっ」
「…煽ってきて…知りませんよ?余裕なんか今一つもないですから」
「いい、んだ…あぁっ…」
優しいだけじゃなくていい。痛みも全部刻んでほしいんだ。
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