言葉も抱くのも三塚は意地悪に凪を攻め立てた。言葉だけを耳に囁き触ってくれなかったり、イかせてくれなかったり。でもそのくせ優しく甘く蕩けそうな位に凪を抱いた。
思いが零れそうな位に。
指輪を絡め、腕を絡め、舌を絡め、全部が溶け合う位に。身体中に残る赤い鬱血の痕を散らばせながら…。
三塚の邪魔をさせないように立花の家には行くけれど大丈夫だと思える位に感じさせてくれた。
そして眠りたくないと思いつつ疲れた身体は気だるく意識は沈んでしまった。
「凪…」
声をかけられてはっと目を開けるとまだ重く感じる身体で凪は三塚に抱きついた。
「もう…起きる時間…?」
「ちょっと早いですけどね。今、もう一回えっちしとく?」
「……いい…。三塚が倒れたら困る…」
「…凪に搾り取られたからねぇ。でも平気ですよ?若いし!ああ、でもちょっと立ちっぱも多いし腰にきてる感じはあるかな…」
「…若くないな…」
「いえ?大丈夫ですよ?凪が望むなら」
「いいよ。ぎっくり腰になったら大変だ」
「失礼な」
そんな軽口を言いながらキスを交わす。そして腕を離したくなくて凪はぎゅうっと力を込めた。…でも三塚が遅れてしまう…。
「生徒さんのレッスンは休みですよね?」
「今週はそう…先もちょっと分からないけど…言いなりになるつもりはない…。三塚もカフェオープン近いし頑張って」
「そのつもりです。これで仕事まで失敗したら目も当てられない…。凪は無理しないように。食べられない時も電話でもメールでも下さい。それだけじゃなくてもいい。いつでも。……離れないって言ってるのに」
「……ごめん」
「今回は特別ですからね。凪の父親の問題という事もあるし。そこは俺の口出しするところじゃないから。凪が決めて答えを出すんです」
「僕は決まっているんだ…。大事なのは三塚だけだ…」
「俺もですよ。でも大事だからこそ目先の事で将来を棒に振りたくはない。俺は凪と一緒にいるためにしている事ですから」
「………僕の事だったら本当は何でもどうでもいいんだけど」
「そういうわけにいきません。今回の件が片付いたら離しませんからね。……いいけど…ずっと立花の方に住むから…とか言い出さないでしょうね?」
「言わない!…父の事…は僕はそんなに…一緒にいたいとか思わないから。父はいない…そう思っている」
「それならなんで……っと、聞いても仕方のない事ですね…」
「ごめん…」
内情は三塚の為であってもこれは凪の我儘なんだ。
「三塚…好きだ…」
「俺もですよ。凪、愛してます。コンサートまで頑張って。……コンサートまで会わない…とかないですよね?」
「……多分。……我慢出来ないと思う」
「それならいいですけど」
凪は名残惜しいと思いながらも三塚から腕を離した。
「鍵はそのまま持ってていいよ。出入りするならしてもいいし」
「…どう…かな…。凪がいない家はさびしすぎるからね…」
三塚が苦笑する。
どうして…離れなきゃないのだろうか…。着替えをする三塚を見ながら顔を歪ませると三塚が凪の頭を抱えてくれる。
「我慢しないで吐き出せばいいのに…甘えて全部なんでも言っていいっていったのに…」
「…三塚…」
キスを何回も交わす。
立花の家に行ってどうなるのか…。創英は何を考えているのか。訳も分からないで行くのは無謀だとは思うけれど…。
「何があっても俺には凪だけですから。いい?」
「僕も…だ…」
そして三塚はいつもよりも多い荷物を持って車で出て行った。
もしこのまま本当に別れる事になったらどうしようか…?
三塚の運転する車が小さくなるのを見送りながら凪の中は寂寥感でいっぱいになる。でもこれは凪が自分でえらんだんだ。三塚を守る為に。
泣きそうに瞳が潤んで顔を歪ませたがこれからあと創英が来ると思えば感傷に浸っている暇はない。
心に鎧をつけないと。つけ込まれないように。弱みを見せないように。そして反対にずるくならないといけない。凪が創英の弱味を握られるように。三塚との邪魔をされないようにしなくてはいけない。
きっちりと落とし前をつけてこの先誰にも邪魔されないようにしないと。
家の中で荷物を纏めて家を眺める。凪がここに住んだのは母がいなくなってからで年数はさほどまだ経ってはいない。三塚が一緒に住むようになってからはさらに期間が短いはずなのにそこかしこに三塚の気配が残っている。とりわけキッチンには三塚が立っている姿しか残っていない。
全部三塚が運び込んできたものばかりなのだ。
※mm3さん!大丈夫ですか~!(><)
後から来る事もあるのでお大事にしてくださいね(T-T)
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