「凪!………何笑ってるんです?」
「いや…だって…お前の姿を見たら頭の中で一斉にハレルヤが流れ出して…」
「ハレルヤ…」
くっと三塚も笑う。
「随分と目出度い感じですね。いいけどこっち!」
三塚が凪の腕を取り、立たせると公園のトイレに連れ込んだ。そして狭い個室に慌しく連れ込まれたと思ったら荒々しくキスされた。
「みつ…づか…」
凪も三塚の首に腕を回して抱きつきながら三塚のキスの感触を追う。三日ぶりの三塚だ。何度も何度も…長いキスを交わす。舌を絡めて吸って吸われて…唾液を交わらせる。
「あ…っ!」
三塚の手が凪のシャツをスラックスから引き出し、そして肌を撫でてくる。
「触らせてない?」
「ないよ…」
三塚の声…。
ぎゅっと抱きつき体を震わせた。その手を外すと三塚がシャツを捲くって胸に唇を這わせきゅっとまたキスマークをつけた。
「俺のものですからちゃんと印つけておかないと」
そしてあちこちを吸われる。
「マーキング完了。さ、行きますよ」
三塚はあっさりと凪を離し乱れた凪の服装を整える。
「…行く?どこに?」
「店。お昼食べさせてあげます。ろくに食べないでしょう?痩せた」
「でも……」
食べるよりキスしてたい…。
「そんな物欲しそうな顔してもだめ。コンサート近いんですから食べないと!欲しい気持ちは溜め込んでいてください。俺も溜め込んでるんですから。体力奪うより今は栄養補給の方が凪には必要です。顔色も悪い!」
むっと凪が唇を尖らせると三塚が軽くキスする。
「欲求不満解消よりそっちの方が大事です。言ったでしょう?あなたを支えるたいと。俺は凪個人も勿論大事にしたいけどピアニストの凪も大事にしたい」
……そんな風に言われたら自分の方が浅はかじゃないか。
「その代わりコンサート終わったら離しませんから覚悟しといてください」
「……ん…」
「じゃ行きますよ」
三塚の手を引かれて今三塚のプロデュースしてる店に連れて行かれた。
「いい、のか…?」
「いいですよ。ちゃんと言ってあります」
そう言って三塚に連れられて店に入るといらっしゃいませ、と声がかけられた。
「あ、接客の実験台もお願いしますね。プレオープン前なので」
「え?あ、うん。それは…いいけど」
お席に案内します、こちらにどうぞ、と若い女の子がニコニコしながら凪を案内してくれ、三塚は店の奥に消えた。
……落ち着かないんだけど、どうしよう…。
端の窓際の席に案内されて座ったけど席に一人というのが落ち着かない。
そしてすぐに料理が運ばれてくると三塚も出てきた。
「厨房借りて俺が作ったものですから」
「……あ、ありがとう…」
野菜がいっぱい入ったスープにリゾットにサラダ。おまけに鶏肉のソテーまで。
「こんなに?」
「だめです。食べて」
量は多くはなさそうだけど…、凪にしてみたら多い方だ。
「賄いで今日は俺担当にしてもらったんで。店の料理人でもないのに好き勝手させてもらってるんです」
くすくすと三塚が笑っている。
よかった…。本当に上手くいってるんだ。
そっとスープを掬って口に運ぶ。
「おいしい…」
やっぱり三塚が目の前にいて食べるとおいしく感じてしまう。
「よかった」
三塚がそう言いながら道路に面した窓のブラインドを降ろした。凪の姿は店の人達には背中を向けているような形になっている場所で顔は三塚しか見えてないのが安心する。…多分席も三塚が指定したのだろうとは思うが。
「僕は…本当にダメだな…」
「ん?何が?」
「……三塚いないと多分死んじゃうな」
「自分から離れたくせに」
「……そうだけど!……」
凪は俯いた。
「……俺が凪に内緒で仕事の事で動いていた時、凪は黙って信じてくれていた。だから俺も黙って凪を信じて待ってる。あ、でもすみません、それも明日までですけどね。オープンしちゃえば後は今ほど忙しい事はなくなりますから。土曜日も一応リサーチ兼ねて入りますけど…。凪はリハですよね?」
「…うん」
「リハの日…会いません」
「え?」
「我慢できそうになくなるから。その代わりコンサート当日は離れませんから」
「え、あ…でも……」
「今はレッスンも充実しているみたいだし凪の為にはいい事だと思いますから今日もそのまま返します。でももうダメ。大人しく待っているだけはやっぱり俺の性には会わないので」
三塚が凪の食べ具合を見てスタッフに手を上げて合図を出すとデザートが運ばれて来た。
「凪用に特別です」
うわ、と凪が顔を綻ばせれば三塚も満足そうな表情を浮かべていた。
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