今日がオープンだった三塚のプロデュースの店の反響がどうだったかと落ち着かない気持ちで電話を待った。
多分遅くなると思うとは言ってたけどどうにもベッドに入る気にもなれずに凪は携帯を持ってうろうろしていた。
その待ちに待った三塚からの電話がなってすぐに出る。
「もしもし!?どうだった!?」
『電話出るの早!…うまくいきましたよ?』
「よかった…」
ほうっと安心して力が抜けそうになってくる。
『男性でも来てた人もいたんで凪も…あ、いや…来ないほういいかな』
「ん?どうして?」
『いや、俺も最近ずっとテレビとか見る時間もないし、今の部屋にまだテレビないので忘れてたんですけど、凪のコンサート宣伝してるでしょう?カフェの女の子達が凪に気付いてまた連れてきてってうるさいんです』
「あ……」
そういえば昨日電車に乗った時もちらちらと見られてた気がしたが…、そうか。
「僕も…忘れてた。テレビ見てなかったから…」
『…だと思いましたよ。まぁ、それがなくともまた連れてこいって言われてますけど』
「そう…?」
『そう。俺の大事な人ってのに興味津々なので』
「………」
…大事な人?
「…それ…あの…どういう意味?」
『どういう…って、そういう意味ですけど?』
「はぁっ!?」
凪は思わず大きい声を上げてしまった。
『あ…凪は言われるのやだった?』
「そこじゃなくて!」
『え?どこ?』
どこって……。
『ほら凪の指輪に気付かれて…。それに、隠してて後から変な風に言われるのも嫌だったのでさらっと前に大事な人は同性ですが、って言ってたんです。女の子達に食いつかれましたけど。俺が凪の自慢ばかりしてて連れて来いコールがうるさかったんですけど…。綺麗だって言ってたから…もしそうじゃなかったら笑ってやるって言われてたんですけどねぇ…昨日凪本人見ちゃったらみんな凪のファンですよ…ちょっと引き気味だった男子にまであれじゃ仕方ないって納得されて…俺は非難浴びました』
「は?非難?…ど、うして…?」
『嘘臭そうなのになんで?って』
嘘臭いって…。
『多分ね…若い頃は気付かれなかったんでしょうけど…俺の、こう…なんというか世の中に興味ないっていうか、他人に興味ないとうか…そういう所が出てるんだと思います。仕事も真面目にしますよ。時間だって守ります。けど、正直言って凪以外はどうでもいいとも思ってる。ただ、それじゃいかんと思うから一応頑張ってるつもりですけど、そういうのが漏れちゃってるんでしょうねぇ』
…でしょうねぇ…って…。
『今までなんか…というか凪の存在できるまで大事なものってなかったですからね』
「いいけど……いいのか…?」
もう何を聞いていいのか分からなくなってくる。
『うん?いいんじゃないですか?』
「は……っ…」
軽くあっさりと言う三塚に笑いが出てきた。
じゃあ創英にバラすなんて言われた時にはもうばれてたって事か!?一体凪は何を我慢していたのだろう?ただの馬鹿じゃないか!いやでも初氏にレッスンしてもらったのだけは収穫だ。できればこれから先も見て欲しいと思う位。
「はは…っ…」
電話口で笑ってしまう。
『分かりました?俺は凪の口から今回の事…事情を全部話してもらえるの待ってたんですけど。話してくれませんでしたね…これからは全部話してください』
どうやら三塚はなんとなく事情を察知しているような口調だ。
「そうする!」
そうしたら何も問題はなかったのに…。いや、でもこれはこれでよかったのかもしれない、とも思う。信じる気持ちも大きくなったし、離れて存在の大きさを痛感した。それに立花創英の事も初氏の事も自分の過去も…まぁ知らないよりは知ってよかったかもしれない、とまで思えるようになった。通らなくてはいけない道だったのだろう。
『凪、日曜日、燕尾服だなんだと荷物あるでしょう?迎えに行きますね』
「…うん。…なぁ…迎えに来てくれたとき…初氏に紹介していいか?」
『え!?ま、マジで言ってる?』
「真面目に。父とは呼べない。多分ずっと…。でも…」
父と呼んではいけないと思う。血の繋がりはあるのかもしれない。でも今更父親は凪はいらない。初氏を父と呼ぶのはたった一人でいいのだと思う。
「僕の荷物も全部持って…車に乗せてくれる?コンサート終わったら連れて行ってくれる?」
『勿論。離す気ないと言ってるでしょう?』
「うん…日曜日に…ね…。待ってる」
『俺…挨拶するのにスーツの方いいかな…』
「いいよ!僕だって着替えるのは会場でなんだから!」
緊張したような声音を出す三塚に笑ってしまう。いつも余裕で飄々な感じに見えるのに…。
『いや、やっぱりちゃんとして…』
いいと言ってるのに気にする三塚が可愛い!
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