控え室に戻った凪の所に桐生 明羅と二階堂 怜が揃ってやってきた。
「今日はわざわざお越しいただいてありがとうございます!お耳汚しだとは思いますが…」
「よかったよ!よかったんだけど、言っていい?」
「?」
桐生 明羅が顔を真っ赤にしてた。
「恥ずかしいっ!告白なら家でやって!」
「いや、あれはあれでいいだろう」
二階堂 怜が苦笑している。
「分かってるけどっ!」
ジュ・トゥ・ヴの事だ!
…と凪もかぁっと顔を真っ赤にさせた。
「…すみません」
思わず声を小さくして体を竦めて謝ってしまう。
「いえ!すみません!演奏はいいの!いい…んだけど!」
「あれくらいあからさまでも俺は好きだけどぉ?」
「……あ、あからさま…でしたか…?」
いや、自覚はあるけど…まさか人に指摘されるとは思いも寄らなかった!
「君にあんなに熱烈に思う人がいると分かって俺は安心した!」
二階堂が凪の肩をぽんと叩いて笑っている。
「だ~か~ら~!違う!って言ってるのに!」
「?」
凪は目の前の天才二人がじゃれあってる様子にきょとんとしてしまう。 …っと!ジュ・トゥ・ヴの事じゃなくて!
「曲!ありがとうございます」
「お礼は僕が言うべきです!こちらこそありがとうございます!」
桐生 明羅に頭を下げられて、凪も慌てて頭を下げた。
「いいえ!あんな風に綺麗に弾いていただけて嬉しいです。演奏も…良かったです。ジュ・トゥ・ヴもね!」
悪戯っ子のように頬をちょっと赤くしながら桐生明羅にそう言ってもらえたのが嬉しい。…恥ずかしいけど。
「今日のCD化するって生方さんに聞いたけど…」
「あ、そうみたいです」
「ジュ・トゥ・ヴはヘッドホンして聴こうっと!」
「いえ、あの…それは…」
羞恥プレイだ…。
「この間の携帯の番号…登録させてもらってたんだけど、今度電話してもいい?」
「え?あ、はい!もちろん」
何を気に入られたのか桐生 明羅からの申し出に凪は頷いた。
そして帰っていった二人と入れ違いに立花親子がやってきた。
「高比良くん、よかったよ!」
人の目もあると思ったのか初氏は凪を苗字で呼んだ。
「…ありがとうございます…。ちゃんと注意いただいた所は直っていたでしょうか?」
「大丈夫。ステージでの入った状態で弾けている時はいい演奏だ、と決まっている」
…よかった…。
「いつでもおいで」
「はい…ありがとうございます」
初氏は優しい笑みを浮べながらそれだけを言って、そして創英は愛も変わらず難しい表情のまま何も言わずに二人も行ってしまう。
その後も大学の恩師やら高学年の生徒さんとその保護者やらと次々顔を見せに楽屋に現れる。
「…終わった」
「……お疲れ様でした」
やっと挨拶が一段落し、三塚がパタンと控え室のドアを閉めた。ずっと凪の後ろに控えるようにしていてくれたのだ。
「凪」
ずっと人がいる状態で全然抱きつくことも出来なくて…と思っていたら三塚が力をこめて抱きしめてきた。
「汗っ!…かいたから…」
「……」
何も言わずに三塚が凪を抱きしめている。
「……三塚…」
凪も手を三塚の背中に回してしがみついた。
朝も会場に着いてもコンサート前で落ち着かなくそして三塚の腕を求めてしまったら離れられなさそうでずっと我慢していた。
「長かった…」
三塚が小さく声を戦慄かせながら呟いた。
「やっと…戻って来た」
「三塚…っ」
唇が自然に重なる。軽く何度も合わせるだけだったのが段々と深くなっていく。舌を絡めて唾液を交じわせ互いを貪るように。角度も変え何度も何度も。凪の息が漏れ荒くなってくる。三塚の体も熱を持ったように熱くなってくる。
そして三塚がそっと唇を離し凪を離そうとしたが凪は自分から三塚の首にしがみついた。
「ダメです…。着替えないと」
「……着替えさせて」
小さく凪がねだると三塚の手が凪のシャツのボタンを外し始めた。
「……ホント…意地悪ですね。今出来ないのが分かっててこういう事させるなんて」
「そ、んな…つもりじゃ!」
ただ離れたくなかっただけなのに…。
「分かってますよ」
三塚が笑って凪のこめかみにキスした。
「意地悪言っただけです」
むっと凪が唇を尖らせると三塚がシャツのボタンを外しながらまた軽くキスして来る。
「…もっと…だ」
「分かってます…」
そしてやっぱり何度もキスを味わってしまう。
「すぐにでも押し倒したいの必死に我慢してるのに」
「だ、ダメ…」
「分かってます」
三塚が苦笑を漏らした。
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