「なんせ狭くて…やっぱ広い所をちゃんと借りないと!」
風呂場でもう一回戦、と思っていたけどそれは広さの関係でどうしても無理があった。いくら細身といっても凪だって男だ。
仕方なく風呂場では凪の身体を綺麗にしてやるだけで、…ちょっとはイタズラしたけど、普通に入っただけですぐに風呂を上がった。
「凪…なんか食べる?」
「ううん。いい…」
凪は離れたくないのかずっとくっ付いているのに顔がにやけてしまう。
「今日の演奏…すごくよかった…」
「……ありがとう」
「俺も弾いた事あるのもありましたけど…ホント全然違う曲…それに《ピエタ》がまるっきり違う曲になってた」
「だってあれは初見でただ弾いただけだから…」
「いや、そうですけど…はぁ…ピアニストってすげぇな…。それに暗譜もどれ位の曲数頭に入ってるんですか?」
「さぁ?弾いた事ある曲は入ってる、と思うけど…。三塚だってほとんど楽譜見ないで弾いてるじゃないか」
「俺のは限られた曲数だけです。一緒にしないでください。恥かしい。それは置いといて。俺的に一番よかったのはやっぱり《ジュ・トゥ・ヴ》なんですけど?」
「そ、それはいいから…」
凪が絋士の背中に顔を隠してしまった。
「俺にだけ向けて弾いた…でいいんですよね?残念ながらあの桐生 明羅が恥かしい!なんて言ってたけど俺には全然どこが恥かしいのかワカランなのですが」
「……たぶん普通はそうだろう、と思ったんだけど…」
「ただ俺が言ってたから…俺の為に弾いてくれたのは分かる。分かるけど、なんで他人に告白とかまで言われてるのに俺が分からないのかがムカつく」
「いや…それが普通だから…たぶん桐生 明羅が特別だからだ…」
「…二階堂って人も分かってるっぽかったですけど?」
「だからその二人が特別なの!立花の二人は何も言ってなかったでしょ?」
「……まぁ。……ピアニストで父親の初氏が何も言わないんだから…じゃあピアニストでもない俺が分からなくてもいいか…」
仕方なくそこで納得することにする。
「…恥かしい」
「俺は驚いて嬉しかったですけど。凪からの熱烈なラブコールだったんでしょ?〝あなたが欲しい〟って」
「もういいからっ!」
「よくないです。で、今日のコンサートってCD化するんでしょ?」
「そうみたいだけど…」
「俺もヘッドホンつけて聞こう…。あ、携帯の凪からの着信の音にしよう…イテ!」
背中をぎゅっと凪が抓った。
「やめてくれ!」
「凪からの電話だったらいいでしょう?凪が傍にいない時って事ですもん。場義が離れなきゃ鳴りませんけど?」
「そんなの!だって三塚だって仕事とかあるだろう?」
「だから、そこには凪はいないですから凪が聴くわけじゃないでしょうに。すっごい感動して泣きそうになってたんだけどなぁ?」
「え?」
凪が顔を戻して赤くなりながらも絋士の顔を見た。
「凪も欲しいと思ってくれていたんだ、と思って…。それに舞台で弾いてもいい位に弾いてたって事でしょ?いくら簡単な曲だって出来上がってなければ凪は舞台じゃ弾かない。…でしょ?」
「………」
かぁっとまた凪が真っ赤になっていく。きっと何回も何回も弾いていたんだ。でも聴かせてはもらえなかったのに…。ステージでまさか聴かせられるとは思ってもいなかった。
きっと練習の時だって自分の事を思いながら弾いてくれたに違いない。この真っ赤になっている凪の反応をみればまたむくむくと欲望が包んで来た。
「三塚?」
「ん?」
「あの……?何?もう寝るのか?」
もっと話をしていたいと凪の目が訴えているその凪を後ろの布団に押し倒した。
「何寝言言ってるんです?今日は寝かせないって言ってたでしょう?」
「え!…あ、だ…って」
「一週間分ってもさっき言ったでしょう?全然足りませんけど?」
「嘘……ほ、ホントに…?」
「ホント。何?嫌なの?」
「や…嫌、じゃない…けど…動けなくなる…」
「別にいいでしょう。明日は休み。俺も休みです。二週間休みなしでしたからね。実は次の仕事も入りました。でもあと一週間は丸まる休みですから責任持って凪の介抱しますので。諦めて」
「…あの…明日…レッスン…」
「レッスンも休みです。凪はコンサートで疲れたので。大体なんでコンサート翌日にレッスン入れてるんですか!休みです!」
再び凪の肌に触れればすぐに凪の息もあがってくる。
「ほら凪だって足りなかったくせに」
むっと口を尖らせるけど可愛いだけだ。キスしてそして再び熱い息が交じり合った。
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