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熱吐息 agitato~激して~7

 「あそこにいた一人若い方のやつ」
 「え?」
 瑞希はどきりとした。
 「…あれが同期か…?」 
 「うん」
 宗が考え込んでいる向かいで瑞希は宗が入れてくれたスープに口を付けた。
 「宗、ご飯食べた…?」
 「ん?ああ、レトルトカレー」
 「え!!」
 やっぱり用意していけばよかった。
 「…やだな」
 「なにが?……なぁ、うどん食わねぇ?俺作ってやるからどうしたらいいかそっから指示して?」
 「いいよ。俺作るから」
 「……瑞希が食わないと」
 あ、……瑞希が何も食べてなかったら消化のいいうどんなのか。
 「じゃ作るよ。宗一緒に食べよう?今は本当大丈夫。薬が効いたのか落ち着いたからか分からないけど。顔色も悪くないでしょ?」
 「ああ、悪くないけど。…本当か?」
 「ん」
 瑞希は笑みを浮べて立ち上がった。
 食欲もなかったのに宗が言ってくれればお腹がすいてきた気がして来る。
 「さっと作るから」
 「おう」
 不思議だ。
 あんなに痛かったのに。
 卵でとじただけの簡単うどんだけどすごく温かかった。


 お風呂に入って宗と一緒にベッドに入った。
 宗が横を向いて瑞希のお腹に手を置いてた。
 「大丈夫だってば」
 「でもあったかいだろ?」
 「…ん」
 「な……あの同級生……」
 宗は勘が鋭いんだろう。気にしている宗に瑞希が口を開いた。
 「………ん…と…小学校の時の話、…なんか、俺の事…気になって、避けたって…」
 「…ああ、なるほど。で?また好きだって?」
 「違う……好きになっても、いいか…って。でも迷惑だからって、ちゃんと言ったし…」
 「………今日、俺が顔を見せたのが正解か…それとも刺激してしまうか…」
 「え?」
 「もう一人はお前の上司、だろ?」
 「うん」
 「……分かられた、かな」
 「何が?」
 「う~~~ん……色々と。……何かあったら言えよ?」
 「ん」
 何がだろう?瑞希との事だろうか?
 お腹がほっこり温かくて気分がふわふわしてくる。
 その宗の腕を抱きしめるように手を回した。
 「宗……ありがとう」
 「どういたしまして。…当然だけどな。ほら寝ろ」
 「ん」
 宗が瑞希の唇に軽くキスした。

 安心してとろりと瑞希は眠くなってきた。
 宗がすぐに助けに来てくれた。
 胃が痛くて…。
 病院に連れて行ってくれて。
 泣きたくなってくる。
 宗がいなかったらただじっと痛みがさるのを待つだけだっただろう。
 そして今だってこんなに安心して寝られるなんて事などなかったはず。
 思わず泣きたくなって宗に頼って電話してしまった。
 そんな事だってなかったのに、でも宗は応えてくれて。
 店の中まで来てくれた。
 斉藤には同居人がいると言っていたけど、考えていたら瑞希が具合が悪いからってすぐに待っていたかのように来てくれる同居人っておかしいかも…。
 具合が悪いのを知ってたから、たまたますぐ近くにいたから。
 そんな都合のいい言い訳なんて信じるだろうか?
 瑞希が付き合ってるのは宗でいいけれど、宗の相手が瑞希はだめだと思う。
 そう思ってくるとまた胃が痛んでくる。
 「瑞希…?寝たか…?」
 寝てないよ、と声を出そうと思ったけどもう半分意識が沈みかけている。
 「…何悩んでる…?仕事だけじゃなだろ…?不安か…?俺では役不足か…?」
 まさか、そんな事ない。
 自分の方が宗に相応しくないのに。
 「瑞希」
 宗が瑞希の額に頬にキスしてくれている。
 嬉しい。
 好きだ。
 「そ、う…」
 「ああ、わり……寝ていいから…」
 宗が瑞希の髪を撫でているのに安心する。
 違う。悪くない。もっと触ってほしい。
 「さわ…って…て…」
 宗の手に擦り寄るように身を寄せた。
 宗が抱きしめてくれる。
 温かい。
 宗…。
 一緒にいてくれる人。瑞希に安心をくれる人。
 愛情、…恋人。
 恋人…。
 宗は瑞希をとてもだいじにしてくれる。
 瑞希も宗を大事にしたいのだ。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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