航さんのマンションに住む様になって初めての週末になった。
とはいっても航さんは仕事で唯は光流と勉強会だ。
朝に弱い光流が来たのは昼過ぎでそれでもまだ寝たりないと言う光流には笑ってしまうけど、勉強に苦労しない光流にはちょっと面白くないなとも思ってしまう。
羨んでも仕方のない事だし、光流はそれをひけらかすことも鼻にかけることもないし、唯は教えてもらってばかりいるのだから申し訳ない位だ。
でも光流は恩着せがましくもない。家でずっとお世話になったのもそんな事などなかったような感じだ。
「僕は助かってるけど…光流は自分の勉強しなくていいの?」
「いいよ。唯に教えるのは復習兼ねてるし。唯は飲み込みも早いからイラっともこないし。俺バカな奴にはかなりイラっときちゃうから」
「そうなの…?全然そんな風には見えないけど」
光流はいつでも笑っているし人当たりもいいように見えてた。
「そりゃそれを表に出すほどバカじゃないから。学校ではちゃんと綺麗に隠しますよ?」
堂々と猫かぶり宣言する光流に笑ってしまう。
人当たりはいいけど、本来光流は意地悪なのかもしれない。唯にはよくからかってくるし。
「唯には猫かぶってないから。ほら、俺だって唯の最大の秘密知ってるからね。そうすると俺もわざわざ疲れる事しなくてもいいかなぁって」
「うん、いいよ。いいけど…からかわれるのはちょっと…」
「ダメ。それが楽しいんだから~。でも唯って恋愛系だと可愛くなっちゃうけど、その外の事ってあんまり反応うすいよね」
「…そう?…興味があんまりないから…かな。人とも関わらないようにしていたし。真面目なのも先生とかに目をつけられるのが嫌だったから…」
「全部そこに繋がるのか…。でも叔父貴には繋がらなくて慌ててるって感じかな…?」
「そうかも…。人にどう思われるかなんて小さい頃から分かってた事で諦めきってたから…。親にさえ怖いとか思われてたしね…。でも航さんといると僕は普通の人で…だから、かも…」
「俺は?知ってるのに」
「光流も特別だ。知ってるのに…友達にって…ないから…」
「え~?そう?でももしかしたら俺はチョー悪い奴かもよ?今は中いいふりしてるけど、その内に唯を利用しちゃうかも」
「利用?」
「だって人の心が読めちゃうなんて。そのうちに誰々が何考えてるか見てきてとか言っちゃうかも?」
唯は試すような事を言う光流にくすっと笑った。
「言わないでしょ」
「え~?」
「光流は僕の事知っても触るし、でも僕が嫌がってるのを分かってるから触ってこない。電車に乗ってても人が触らないように気をつけてくれてるし、人の多いとこでも気にしてくれてる。僕を利用しようとしてるならそんなとこまで気遣わないでしょ。むしろ何考えたか教えてとか、そういう事言うはず。一度だって光流はそんな事言わないし」
「やめて。恥ずかしい」
光流が頭を押さえた。
…珍しく照れているらしい。
「だって本当の事なのに」
「……はぁ…」
光流が溜息を吐き出して唯をじっと見た。
「素直なんだよねぇ…。唯の環境でどうしてそんないい子になっちゃうか謎なんだけど。さ!いいから勉強しよ!何から?文系は唯は問題ないでしょ?」
「まぁ」
光流が自分からふってきたのに強制的に話題を終了させた。
そこからは真面目に勉強モードだ。週明けからはテスト期間に突入で唯ものんびりしていられないので促されるままノートを開いた。
航さんとは相変わらず一緒のベッドで寝てるけどそれだけで、そのままテスト期間に突入。
お昼前に終わっちゃうのでそのまま光流と一緒に帰って来てお昼を光流と一緒に食べて勉強。
光流が帰り、唯は息抜きに夜ご飯の用意をして航さんの帰りを待つ。
そんなパターンが出来上がってそしてテストも終了した。
出来はまぁまぁかも、と唯も満足だけど、それは光流のおかげでもある。自分だけだったらさすがにこんなに真面目に勉強しなかったかもしれないし、理解もできなかったかもしれない。
付き合ってくれた光流に感謝しつつ勉強から解放された。
最終日、テストを終えた後は光流とゲームで時間を潰し、つくづくとこんな友達が出来るなんて思ってもみなかったと感謝してしまう。
本当に普通の友達な感じだ。
ありがとう、なんて言ったらまた光流が照れちゃいそうで言わないけれど何もかもが今は充実していると思えた。
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