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追憶の彼方には戻らない 94

 愛おしい、なんて…高校生が思うようなことじゃないと思うけど、でもそう感じた。
 航さんが好きだけど、好きよりもずっと深い。
 愛してるなんてそんなのは嘘くさい感じがするから…だから愛おしい、だ。

 航さんの方がずっと大人だし、その人にこんな事思うのなんて変だとは思うけれど。
 航さんの背中に回した手に航さんの汗を感じた。
 「…唯…」
 「はぁ…んっ…や…」
 航さんがイったばかりなのにそのまままた唯の中をゆっくり動き始めた。

 「う、そ…」
 「…唯は今イってなかっただろう…?」
 「いいよっ!さっき…出した、し…」
 「ダメ。今度は一緒に…。どうせ一回で終われないし。明日は出かけるのキャンセルと言ったはずだ。唯は明日はなにもしないで動かないでいいから。それにほら、唯にも滅茶苦茶にしていいって言われてるしな」

 「う、動けない…位…?」
 「そう。一回じゃ俺も治まらない。いい年してな…」
 「あ、ん…っ…」
 ゆっくりと航さんに中をかき回されていくうちに航さんがみるみるまた大きくなっていく。

 「我慢してたから…何回いけるかな…」
 「ちょ……そんな…」
 そんなに!?
 止めようと思ってももう航さんが動き始めて唯の敏感になっている身体もそれに追随してしまう。だって航さんにもっと欲しいって思われるのならそれでいいんだ。

 航さんが唯の限界になっているものに手を添えながら腰を衝いてくる。
 体を揺さぶられ、唯はもう何も考えられない位にぐちゃぐちゃにされた。
 航さんが何度イったのか、唯も何度イかせられたのか全然分からない位に溶け合った。
 声も言葉も意味を成さないくらいに喘いで、最後には懇願していたようだけど、それすらも覚えていない。
 息遣いもキスも全部が溶け合って自分のものか航さんのものかさえ判別つかない位に交じり合った。
 

 あれ…?
 唯がうっすらと目を開けると航さんの眠った顔が目の前にあった。
 鼻高いよなぁ…とじっと航さんの顔を見た。目も唯のはぱっちり二重でどう見たって凛々しいとはかけ離れている目だけど、航さんの目元はかっこいいと思う。口元だって唯の小さな口と違ってニヒルな感じで大人だ。
 全部が唯のないものだ。体だって筋肉なんてものがないだろう唯の体とは違って男らしいかっこいい締まった体だ。

 「ぁ…」
 肌が触れている。
 えっちしたんだ…と唯は体に残る違和感と鉛の様に重い体にどきりと心臓が跳ねた。
 なんか体中に自分の出した精液がかかってぐちゃぐちゃになっていたけど今は全然気持ち悪くない。…ということが航さんが綺麗にしてくれたんだろうか…?

 全然いつ眠ったのかも覚えてなくて、覚えているのは色々言わされた事と喘いで感じまくっていた事だ。
 …初めてだったのに、あんなになるものなのだろうか…?
 航さんの腕がしっかりと唯の体に巻きついている。
 そしてぐっすり眠っている航さんが可愛くて唯はついくすりと笑みを浮べた。

 滅茶苦茶にするとか言って、その通りにぐちゃぐちゃになっていたとは思うけれど、でも航さんは大事にしてくれたとは思う。
 後ろに突っ込んで終わりだと思っていたのに全然そうじゃなかった。

 …セックスってこんななんだ…と初めての唯には恥ずかしいやら照れくさいやらでどうしようと動揺してくる。
 航さんが眠っているからいいけど、顔を見たらどんな反応をしたらいいのだろう…?
 航さんの腕から抜け出そうかとそっと身じろぎしたら航さんの腕がぎゅっと力を入れてさらに唯の体を抱きしめた。

 「…唯…?起きた…?」
 「え…あ…う、ん…」
 「……タフだな。唯は起きられないのかと思ったら…おはよう」
 「おは、よ…」
 航さんがくすりと笑いながら唯に軽いキスをしてきた。
 恥ずかしい…。

 顔を見られなくて航さんの腕の中にもぐりこんだ。
 「唯…?」
 「か、顔…見ないで…恥ずかしい…」
 「だめ」
 航さんが笑いながら唯の頭にキスする。

 「お前ね…昨日さんざんしたのに朝からそんな可愛い事言ったらまたしちゃうよ?」
 「え!?」
 思わず顔を上げたら航さんが蕩けそうな顔で唯を見ていた。
 「さすがに今日はやめておくけど…。立てる?」
 航さんがそっと唯の体から手を離したので唯は体を起こしてベッドから降りようとした。

 「………無理かも…」
 足に力が入ってない。
 「だろうね。時間が経てばましになるだろうけど…。唯は今日はおとなしくだらだらしてて」
 航さんが唯の額にキスしてすらりとベッドから立ち上がった。
 航さんは下を穿いていたし、ベッドもそういえばぐちゃぐちゃになっていない。唯が意識を手放した後に綺麗にしてくれたらしい。
 やっぱり恥ずかしい、と唯は布団に包まるしかなかった。
 
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