「おかえりなさい!」
光流の家で航さんを迎えるのがちょっと変な感じだ。
「ただいま」
光流の家の玄関で航さんはそう言って唯の頭をくしゃりと撫でた。
「唯くん、航くん座って」
一緒にダイニングに向かうと光流のお母さんが声をかけてきてくれて航さんと隣同士に座る。
光流の家に居候してた時を思い出して唯はくすりと笑ってしまった。ちょっと前の事なのに随分と前だったような気がしてくる。そして帰る場所は、航さんを迎える場所はやっぱり航さんの部屋がいいな、と思ってしまう。
「義姉さん、すみません」
「いいのよ。唯くん可愛いし!さっきもお手伝いしてくれたの」
「…手伝い?」
航さんが唯の顔をちらっと見た。
「あの…料理…ちょっと教えてもらってた…」
恥ずかしい!まさか光流のお母さんにばらされるとは思ってもみなかった。
「唯くんも航くんもたまにはうちにおいでね。唯くんが来れば自動的に航くんが来るかな?」
「…自動的…?」
…ってどういう意味だろうとちらと航さんを窺うと航さんは動揺もしていないようで普通の表情だった。
「唯は真面目で頑張りやさんだからね。俺が連れてくればいいでしょ」
光流が唯の向い側でへらっと笑った。
光流も光流のお母さんも唯の事を心配してくれているんだとちょっと嬉しくなった。どうにも人の好意に慣れていないのでちょっとした事がすごく嬉しい。
「そうだな。唯もここならそんなに構える事もないようだし」
そうなんだ。光流が唯の事情を知っているのと、光流のお母さんが本当に唯の事を心配してくれるのも分かるから居心地がいいんだと思う。
唯は航さんと視線を合わせて小さく頷いた。
晩御飯をご馳走になり、少ししてから航さんと光流の家を出た。
「じゃ、また明日ね。ごちそうさまでした」
光流と光流のお母さんに挨拶して航さんの車の助手席に乗って光流の家を出た。
「光流のお父さんはまだ帰ってこないんだ…?」
「もうそろそろだろ。俺は会わなくたっていいから別にいいけど」
「そうなの…?そういえば航さんって光流の家によく泊まったりするの?」
「しないな」
「え?そうなの?」
「……家出てから泊まったのはこの間が初めてだ」
「……そうなんだ?」
「ああ」
「ね!光流小さい時と一緒に住んでたの?」
「…まぁ。まだあの家にいたな。親もいたし結構大家族だったかも…」
「航さんのご両親…光流のおじいちゃんおばあちゃん?今は?」
「今は田舎で二人でのんびり暮らしてる」
そうなんだ、と唯は航さんが唯の聞くまま答えてくれるのが嬉しくて顔が緩んでしまう。
「唯のじいさんばあさんは?」
「…母親の方はもういない。父親の方はいるみたいだけど…行った記憶がないかな…。ほら、僕がアレだから…変な事言ったらってのもあったみたいだし、あと離れててなかなか行けないっていうのもあったみたいで」
「……そうか」
航さんがハンドルから片手を離すとくしゃりと唯の頭を撫でた。
「家に帰りたいか?」
「ううん。全然。…あ、全然とか言ったら悪いかな…。今の距離がいいんだと思う。帰ってもやっぱり二人とも困るとは思うんだ。それに…航さんといたい…。航さんは迷惑かも…だけど」
小さい声でぽそぽそと唯が言うと航さんがさらに唯の頭をごしゃごしゃと撫でた。
「ばかだな。迷惑だなんて思うはずないだろ」
航さんの声が優しく響いた。
夜の道を航さんの車が航さんのマンションに向かって走っていく。こんな風に一緒にいられるだけで嬉しいと思えてしまうんだ。ちらっと運転する航さんの横顔を盗み見た。
絶対好きになった欲目じゃなくてかっこいいと思う。航さんに似てる光流も学校じゃもてもてだし。
今まで航さんだって亜矢加さんだけじゃなくて何人か付き合った事あるみたいだし…。そこはちょっと気にならないと言ったら嘘だけど、航さんがちゃんと唯の事だけは別だと言ってくれたからそこは考えないようにする。だって過去の事考えても唯にとっては仕方のない事だ。15歳も違うし、今だって唯は航さんに比べたら子供なのは分かってるから。それでも航さんは子ども扱いはしてないし…。
「たまには今日みたいなのもいいかもな。唯の負担ばっか増えてるから」
「全然!あの…やっぱりおかえりって…航さんの家で言いたい、な…」
だってそうしたらキスしてもらえるし、光流の家だとそんなわけにはいかないから。
「そうか…?」
「うん」
そして航さんがふっと表情を緩めたのが嬉しいな、とか思っちゃうんだ。
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お知らせ^^
坂崎 若さんから航さんと唯ちゃんいただきました~^^
是非行ってみて下さい~
あ、一応肌色注意かな…?^^;
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