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追憶の彼方には戻らない 131

 電話を変わった先生がはい、と何度も頷いて航さんと話をしていた。
 何を言っているのだろう?と思いつつ待っていると先生から電話を返された。
 「もしもし?」

 『唯がストーカーに合ってる事にした。内情はちょっと違うが内容は大きく外れてもないだろう?だから不審者とかも校内に入れないように注意してほしいと頼んだ。今のかかってきた電話で信憑性が増しただろうからな。今日は外で聞き込みだから学校終わる頃に迎えに行く。学校に着いたらメールするから帰るなよ?ああ、俺も職員室にも顔を出して挨拶した方がいいかな。警察も動いてます、となれば学校側も協力してくれるだろうし』

 「うん…分かった」
 『光流も拾ってやるから一緒に待ってろ』
 「うん」
 じゃ、と電話を切ると先生二人が心配そうな目で唯を見ていた。

 「紺野、大丈夫なのか?」
 「…今の所は…。あの帰りに迎えに来てくれるそうなので…あと職員室にも顔を出すそうです」
 「分かった」
 航さんの声を聞いて、帰りも迎えに来てくれると聞いてさらに唯は甘えてるなぁと思いつつも安心した。

 今日は金曜日だからマンションに帰ればあとはもうずっと安心だ。
 「じゃあ教室に戻ります」
 「ああ、…その、気をつけるように」
 先生がなんと言っていいのか分からないような複雑そうな顔でそう言ってきて唯は軽く頭を下げた。

 すでに次の授業が始まっているので静かになっている廊下を唯は歩いて自分の教室に向かった。
 途中特別教室の当たりを通って途中で止まり光流に昼休みに行くね、とメールしておく。
 電源は授業中は切っているはず。…多分。
 さっきの放送で光流はきっとやきもきしてるだろう。
 

 昼休みに唯のほうから光流の教室に顔を出した。いつもは光流が唯の所まで来るのが普通で、唯から光流のクラスに行ったのは初めてだった。
 唯が教室を覗き込むとどよっと声が上がる。
 「?」
 なんだろう?と思いつつ光流を探すとすぐに光流が気づいて廊下に出てきた。

 「唯!いったい何?放送なんだった?」
 「うん…ちょっと」
 人気のない所まで移動していくのもいつもの事だ。

 廊下の奥まった所で頭をくっ付けるようにして唯はさっきの事と航さんの事を光流に報告した。それと昨夜の光流の家から車でつけられたこともだ。
 「…随分と動いてきたね」
 「うん…」

 「しかし…なんだって唯にばっかりそんなとばっちりがくるかね。うちの親父だって警察だけど、俺はそんな目にあった事ないぞ」
 「…うーん…」
 「叔父貴が悪いな」
 「悪くないよ」

 「まぁ…悪いのは犯人だけどさ」
 はぁと光流も諦めた溜息を吐き出す。
 「帰りの事も了解。唯についとけ、って事だろうしね」
 「…ごめんね」
 「全然!唯ってば守ってあげたくなる位可愛いから問題なし。…それはいいんだけど、今日はどうした?」

 「どうした?何が?」
 「気だるそう……って…ああ、…野暮だったね」
 「ん?」
 何が?
 「……困った叔父貴だね…はぁ…」

 「何?」
 「んんー…唯がエロ気ダダ漏れって感じ」
 「な、な……」
 「この間もそうだったけど…そうか…そりゃね一緒住んでればそうなっちゃうよねぇ」
 唯はどうしていいか分からずにぱくぱくと口を開けたり閉めたりする。

 「唯、顔真っ赤だぁ」
 「からかうなよ!」
 「からかってないよ。本当の事だからね。教室で何か言われない?」
 「……具合悪いかっては聞かれたけど…」
 「…それだけならいいけど。変な目で見る奴増えるかもなぁ…。なんか女子よりも妖しい色気漏れてるもん」

 「そ、んな事…ない」
 「あるって。朝の噂もあるし。俺との噂なんか可愛いもんだよね」
 「…噂?」
 「唯知らないの?…ああ、クラスで話す人ってあんまいないんだっけ?朝に送られてくるのは誰かって噂だよ。年離れてるからねぇ…。この間までは俺が彼氏扱いだったけど今は半々かなぁ?」

 「か、か、…彼氏!?」
 「そ」
 光流が楽しそうに笑った。
 「愉快だよね」
 「愉快じゃない!」
 「うん。叔父貴には言えないけど。嫉妬ですごい事になりそう…」

 「………なる、かな」
 「なるでしょ。俺の事は仕方なく諦めてるっぽいけど。っていうか、叔父貴が嫉妬丸出しなるの分かってるんだ?」
 「…一応…。江村さんの事も随分気にしてたし…」
 「ちっさいよねぇ。叔父貴があんなんだとは思ってもなかったけど。唯は別にいいんだ?」

 「……だって…可愛いんだもん」
 「………は?」
 光流が目を大きく見開いた。


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