マンションに着いて宗は瑞希の腕を引っ張って部屋に入った。そのまま瑞希の着替えの置いてある部屋に入ると、宗が無言で瑞希のスーツに手をかけて脱がせていく。
「そ、宗?」
「…着替え」
宗の成すがままにされて、Tシャツを着せられる。
着替えを終えるとソファに連れて行かれ、宗が瑞希の身体を足の間に入れて背中ごしに抱きしめてきた。
何から話せばいいんだろう…?
「……宗…?」
「…………俺は瑞希を好きだと言った」
「………」
瑞希は宗の言葉に顔を俯けた。
「…何が不安だ?…ずっと、だろう…?」
「………ずっと、だよ……俺、宗に釣り合わない……」
「は?釣り合う?なんだそれ」
「だって、…宗は……かっこいいし、なんでも出来るし…、会社だって自分でしようとしてる位だし…俺なんて、……親にも捨てられた、んだよ…?」
ぐっと宗の抱きしめる力が強くなった。
「…瑞希はそれがトラウマになってることは分かってる。…でもな、俺は離す気ないから。…って何度も言ってるんだけど、全然信用ねぇんだよな……」
はぁ、と宗が溜息を吐き出した。
「…いいよ。信用なくても、お前が逃げようとしたって掴まえにいけばいいんだろ?」
「…逃げない…」
「嘘だ。二回目だろうが。桐生の事も誤解して、また」
「だってっ!……手、握ってた、……」
「は?いつ?」
「………」
宗が頭を捻って考えて込む。
「ああ!あれは是非お前を紹介しろって頼まれてたんだ」
「……はい?……俺?」
何故?
「お前と一緒に歩いてる所を見られたらしい。ちゃんと瑞希は俺のものだからダメだと断ったんだが、それでもいいから、と…」
宗が困った様にしていた。
「え……?」
瑞希は宗に振り返った。
「え?ってなんだ?……瑞希は俺のものじゃないのか…?」
「ううんっ!…宗ので、いい…」
宗がにっと笑った。
「…俺は?」
「宗…は…?」
「誰の?」
「………俺の、で…いい、の…?」
「当たり前だろ。誤解する位だったら、それで瑞希が一人でぐだぐだなる位だったら乗り込んで来い。まぁ、どれも誤解だと思うけどな」
「そんなの…出来ない……」
「していいから。別に俺は隠す気ないし」
「え?」
宗が瑞希の顎をぐいと掴んで唇を重ねた。
「瑞希……」
宗の吐息が熱い。
瑞希は体勢を変えて宗の首に腕を回した。
「やだ……俺…宗、…全部、欲しい……」
「……全部あげてるつもりなんだけど…。まだ足りない?」
「足りない…っ」
「いくらでも、好きなだけやるよ。だから…逃げるな」
「宗…っ」
ぎゅっと宗に抱きついた腕に力を込めた。
「怖いんだ……宗に…嫌われたり、飽きられたりしたら……」
だって瑞希の事を知ってもいてくれたのは宗だけだ。
「とりあえず嫌いなとこはない。……瑞希こそ、嫌にならないか?」
「……?宗を?どこが?」
「上司の携帯まで連絡入れて勝手に追いかけるような奴で」
「…………嬉しい、から」
だってそれ位宗が瑞希を必要としてくれた、って事だ。
「もっと……離さないでいてくれた、ほうが、いい……から…」
宗が瑞希の唇を啄ばんだ。
そして宗の手がTシャツの中に入り込んでくる。
「そ、宗……」
瑞希の声が掠れた。
全然宗は今週はしてくれなかった、けど…。
「…して、くれる…の?」
「…くれる、って……」
宗が絶句してた。
「だって……宗、もう…俺、して…くれない、かと…」
はぁ、と宗が溜息を吐き出した。
「前もそうだったな…。お前がひどいと思って……仕事も大変だし、帰って来ても食事用意だなんだって動いてるし、胃も完全に治ってないと思って……。足りなかったんだ…?」
「…足りない、……」
「だったら言えよな。俺我慢してたのに」
「……我慢しなくていい、のに……俺、いつでも、宗…に、して欲しい…」
瑞希は耳まで真っ赤になる。こんな事言うのなんて恥ずかしい。
「……やっぱ俺ばか?必死に我慢してあげく瑞希は帰ってこないし?」
「だって……宗…女の子と……」
「はいはい。俺が悪いんです。これから人と会うときは瑞希いる時にするから」
「そんな、事…しなくて…」
「だってそれでまた誤解されたら俺は気が気じゃない」
宗が嘆息した。
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