「江村さん…航さん睨んでなかった?」
唯くんが武川刑事がよその部署の人に呼ばれて出て行った後にこっそりと聞いて来た。
「睨まれてたね」
「ごめんなさい」
「別にいいよ」
唯くんが困った様に謝るが克巳は特にそれで問題があるわけじゃない。
「…いいけど…。聞いてもいい?武川刑事とはお付き合いしてるの?」
「は?え?」
見る間に唯くんが真っ赤になっていく。
「な、どうして?」
「だって…これ」
ついと克巳が唯くんの首を指で触れた。
「キスマーク見えてるよ?」
「え、ええ!?や……ホントに!?」
「嘘ついてもね…」
くすりと笑うと唯くんがますます真っ赤になっていった。
「な、なんで…航さんって…?」
「だって一緒に暮らしてるんでしょ?」
「そう、ですけど…うわぁ…」
「ごめんね!お待たせ!」
そこにばたんとドアを開けて熊谷さんがやって来た。
医師の免許も持つ人で特殊な力の検査とかを受け持つ人だ。
「あ!あの…江村さん!この事…」
唯くんが心配そうな目で訴えて来た。
「言わないよ」
そう克巳が言うと唯くんが表情を崩した。武川刑事の事が好きなんだろうな、と克巳が見ても分かる位に唯くんは素直な表情が出ている。
しかし…捕まるだろう?こんな可愛い子に、どう見たって尾崎よりも年上の武川刑事が手を出してるなんて。でも唯くんを見る時の目だけは優しいのは克巳も武川刑事に会うのは今日が二回目だが分かる。
わりとあからさまだな、と呆れた。嫉妬とまではいかなくとも警戒の目を向けられているのもすぐに分かったけど、克巳にしたら別にそれは痛くも痒くもない。
「今日はちょっと本格的な実験も色々するよ。最初に唯くんはESPカードの確率取るから」
そういって熊谷さんがESPカードを取り出した。
唯くんは5回やって7枚当たりが3回と8枚当たりが2回だった。カードが見えているわけでないというけれどすごい確率だとは思う。
克巳がやったら全部見えてるから100パーセントは当たるが。
見えてないでこれだけ当たるなら勘も鋭いのだろうか。
そして次に熊谷さんが何か物の入ったビニールの袋を取り出した。
「唯くんは人の気持ちしか読めないって言ってたけど一応ね。江村くんは何か読み取れればそれで。あ、唯くんは手袋とかしちゃったら無理なのかな?」
「え…と服の上でも大丈夫だから…多分平気だとは思いますけど…でも物を…っていうのは…ないかも…」
「じゃ最初に唯くん触ってみて」
白い手袋が用意されていて唯くんがそれをつけて袋の中から物を取り出した。
ipodだった。
唯くんが真剣な顔で物を触っているけれど何も感じないのか頭を傾げてやがて諦めた様に首を横に振った。
「分かりません」
「じゃ、次江村くん」
克巳も同じく手袋をつけて触れた。
「………これ…熊谷さんのじゃないですか?」
「あははは~!当たり~!なんで分かった?」
「え…すごい!」
唯くんが目を輝かせている。
「なんで…って…どういったらいいかな…波動…みたいなのが同じというか…纏ってる気…とか…そんな感じ…かな…」
「じゃあこっから本番。別に気負わなくていいんだけど」
熊谷さんが地図を二冊出してきて唯くんと克巳の前にあるページを広げた。
「中学生が行方不明になってるニュース見た?」
唯くんと顔を合わせてからこくりと頷くと唯くんも頷いた。
「写真がこれ。この子。この子のいる場所分かるかな?」
「そんな当て方…した事ない」
「俺も」
唯くんの呟きに克巳も頷いた。なるべく変な力に自分から近づこうなんて思ってもみなかった事で少し戸惑っていると、どうやら唯くんも同じらしい。
だが…。
唯くんと視線を合わせてから頷き、写真を見て地図を見た。
じっくりと見ているとどうしても一箇所が気になる。
別の場所に目を向けようとしてもやはり一度目についたところから反れない。
「二人とも…?分かった…の…?」
熊谷さんが恐る恐る聞いて来た。
「分かったかどうか…分からないけど…一箇所だけがどうしても気になって…」
「あの…僕、も…」
唯くんも?
克巳は唯くんに目を向けると唯くんも克巳を見ていた。
「…じゃあ二人でせーの、で指でさして?いくよ、せーの」
克巳が一点を指した。そして唯くんも。
それはある山の名前で唯くんも同じ所を指差していた。
そのまま指差した体勢で唯くんと視線を合わせると二人で青くなった。
そしてそれを見た熊谷さんも顔を青ざめながらちょっと待っててとばたばたと出て行ってしまった。
「……どう、なんだろう…?」
「……さぁ?」
唯くんが不安そうな声で呟き、克巳も顔を顰めた。
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