宗の舌が瑞希の唇を割って口腔に忍び込んでくる。
「ぅ……んっ……」
宗の舌が瑞希を捕らえようとするのに瑞希も己からそっと差し出して宗の舌に絡めた。そうすると宗は激しく吸い上げてきてまた声が、息がもれてしまう。
「あ……ちょ……待って…宗!」
「ああ?」
瑞希は宗の口に手を当て、ストップ、と顔を押し戻した。
「社長ご子息!!って!!!」
「ああ?今?いいよ…それあとで」
「あと!その……清水課長……」
考えれば彼氏と…って、言ってた。
「それもあと。だめ。瑞希」
宗が瑞希のTシャツを脱がせて首に唇を当てるときつく吸い上げた。
「やっ……痕ついちゃう…」
「つけてやる」
首の上のほうじゃシャツで隠せない。
「どうせ土日休みだからいいだろ」
二日で消えない位きつく痕をつける時だってあるのに…。
でも、いい…。
「…宗……して…」
何もかも忘れられるくらい。
宗が瑞希の身体を下にしてソファに身体を沈めた。
宗が我慢してたっていう位で、何度も何度も宗の熱を受け止めた。
それに安心する。
酷くたってなんだっていい。
宗が瑞希を欲しいと思ってくれるなら。
「瑞希、俺にはつくるな」
「…つくる……?」
「つくってる時あるだろ?自分を」
ぐっと宗が奥まで衝いてくる。
「ぁうっ!……宗…っ」
欲しい。もっと。全部…。
「だって…宗……俺、分かってる……自分…重い、から…」
「全然。重さでいったら俺の方重いだろ」
「そんな事、ない…縛り付けて…いい、から…」
「……それは言っちゃだめだろ…ばか…」
お風呂入って、またベッドで宗に抱かれて。
瑞希はいつ眠ってしまったのか覚えていなかった。
髪を撫でられているのに瑞希は目を覚ました。外はすでに朝で明るくなっていた。
「…起こしたか?」
「ううん……いい」
宗の腕に抱きついた。
「今日、兄貴んとこ行ってみるか」
「え…?」
瑞希は眉を顰めた。
桐生くんって子はいるのだろうか?
宗があの子をどう見るのかを見るのが怖い。
だってあの子は宗の特別だ。
いい、と首を振った。
それにはぁ、と宗が溜息を吐いた。
「なんて思ってる?言ってみろ」
「べ、別に…」
「全然別にって顔じゃないだろ」
「だって……宗、…あの子、特別……って……」
言ってもいい、のだろうか?
「だから違うって言ってるのに!決めた。やっぱ行く。俺は別に行きたくもないけど…」
「………。異母お兄さん…って、社長の、息子、だよね?ピアニスト…?」
「そう」
「会社、継ぐの…?」
「継がないだろ」
「え?宗が…?」
「継がない。いらねぇよ。大変なだけだ」
瑞希が絶句する。
お金持ちって分からない。
「言っただろ?親父は仕事仕事で帰ってこない。母親は遊び呆け。全部会社のせいだ。まぁ、全部がそうじゃないのかもしれないけどな。とにかく俺は継がない。兄貴もだろ。……とかいいつつ使える物は使ってしまうけど」
宗が苦笑した。
「親父の力でお前の上司、清水の携帯番号ゲットしたからな」
「あっ!!!」
瑞希はがばっと起き上がった。
「ま、前に…お父さん、に言ったって…っ!」
「言ったけど?」
それが?と言わんばかりの宗に瑞希は青くなった。
「社長……俺、と宗、の事…知って……?」
口の中がからからに渇いてくる。
「知ってる」
「あ……だから、新入社員、の挨拶…?」
それと声をかけられたのも?
「いや、それは関係ないだろ。仕事とプライベートは基本一緒にしない人だから。あれは出来る人間が好きだからな。そうじゃなきゃ声もかけないだろ」
「…でも……俺……」
女じゃないし…。
どうしようと顔色はますます悪くなっていく。
「別に気にしなくていい。兄貴んとこも知ってるし。あっちはまぁ、桐生がな…桐生佐和子の息子だから特別だろうけど。それのおかげで俺も全然何も言われなかったけど?まぁ言われたって関係ないけどな」
宗も起き上がって、そして瑞希にちょんとキスする。
「…桐生佐和子…?」
「そう。聞いた事位あるだろ?ピアニストの。桐生佐和子がどうも親父の中では特別らしいんだよな。イマイチ何故か知らないけど。いちファンであるのは確かみたいだが。桐生がその人の息子だから」
「…ええと……」
なんかよく分からないけど、と瑞希は首を傾げた。
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