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追憶の彼方から放されたい 11

 克巳は自室に一人でテレビのニュースを見ていた。
 まだ進展は何もないらしく、夜になって捜索は打ち切られたらしい。見つからないのにほっと安堵するのは見つからない方が生きている可能性があると思うからだ。

 それでも間違っていないと頭のどこかで告げている。
 警察に協力って、ただカードが見える位で何の役に立つのかと思ったが、思いのほか自分は有能らしい。それは唯くんも同じで、きっと同じ場所を指したからだとは思うが…。
 唯くんはどうしているだろう?

 自分で役に立つなら、なんて言っていた唯くんの方がショックは大きいのではないだろうか?
 でも唯くんには武川刑事がいてくれるだろうからそこは余計な心配なのかもしれない。
 そういう克巳も思ったよりショックを受けたはずだったのに今は落ち着いていると思う。
 ずっと心の中が複雑に揺らめいていたのが、尾崎に当たって、話して、眠ってきたせいか今は普通の状態になっていると思う。

 「寝るとかって…」
 ないだろ、と自分のベッドで足を抱えながらテレビを見ていたが見たかったニュースも終わったのでテレビを消して横になった。
 尾崎はどう思っただろうか…?

 起きてからも変な顔はしなかったし…。そもそも力を持っている事を母親から聞いたらしいのに一番初めから尾崎は態度が普通だった。
 事実確認に来ただけで、あげく自分が刑事になりたいから利用すると公言してきたのだ。

 別にそれで克巳に害があるわけでもないし、おかげで唯くんと知り合えたのだからかえってよかったと思える位だ。
 気持ちを分かってもらえる存在というのは心強いものだと初めて知った。唯くんともう少し色々話をしてみたかったけど、今日は結局あまり話せなかった。
 そこがちょっと残念だったが別に今日じゃなくたって時間はあるだろう。

 メールや電話をしてもいいけれど、今はきっと好きな人と一緒にいる時間だろうから邪魔しちゃいけない。
 親から離れて好きな人と暮らしてるなんて…高校生なのに結構積極的だ。
 克巳など未だ実家暮らしだ。とはいっても父親と顔を合わせる事はほとんどないし別にいいのだが…。
 一番顔を合わせるのは小さい頃からずっと通いで来ている家政婦さんだが克巳の力の事を知っているのであまり近づいても来ない。

 それが克巳には丁度いいと思う。
 「好きな人、ね…」
 ふっと脳裏に尾崎の顔が浮かんで克巳はそれを消すように頭の上で手を振った。
 「…ない」
 今日はたまたまだ。克巳も初めて他人がいるのに、しかもその他人の部屋で寝てしまうなんて失態を見せたから動揺してるだけだ。

 それにしてもリビングで寝てしまったんだろうけど尾崎はどうやってベッドまで運んだのだろうか…?
 男を持ち上げるなんてすごいな…と感心した。
 「唯くん位なら…」
 自分でも出来るか?と思ったけどいや、無理だなと自分の非力さを冷静に分析した。

 尾崎は警察官なんかやっている位だし身体も鍛えているのだろう。克巳の背は平均よりはちょっと高いのに体つきは細い。
 そういえば尾崎にアンバランスだと言われたが何がアンバランスなのだろうか…?

 尾崎の部屋で眠ってしまったからか眠気はやってこない。
 「好き…ね…」
 一回も誰に対してもそんな感情を持った事はなかった。もし自分の力の事を知っても傍にいるような奇特な奴はいないだろう。いるとしたら利用しようとする奴くらいだ。

 そう、尾崎のように。それでも尾崎は克巳の力自体を利用しようとしているわけでもないのでましだ。それに態度も変わらないし。
 おまけに今日は警察の協力をしたくないならしなくてもいいと言っていた。
 「…なにを考えているんだろう?」
 自分から話しをふってきたくせに。変なヤツ。
 でもおかげで今日は気が紛れた。そして尾崎に言われた事をじっくりと噛み締めた。

 見つからなかったら…何年も…確かにそうかもしれない…。
 でもどうせなら悲しい結末に力を出すんじゃなくて、そうならないために役立てないのだろうか?
 同じ変な力を持っているなら予知でも出来ればよかったのに…。
 正夢は頻繁に見るが内容を覚えているわけではないので予知夢というほどではないだろう。

 予知夢でも見られれば犯罪を未然に防げるとか出来たかもしれないのに…。カード当てたって意味などないな、と克巳は溜息を吐き出した。
 
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