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熱吐息 piacere~喜び~7

 宗と歩いて宗のお兄さんの家に向かった。
 歩いていける距離…?
 そういえば宗と桐生くんは近くの駅に一緒にいたんだと思い当たった。
 どうしよう、緊張する。
 「…あのな、そんな緊張しなくていいって」
 宗が苦笑している。
 でもそんな事を言われたって緊張しないなんて無理だ。
 「そこ」
 宗に案内された家が近いのにびっくりした。
 電動の門扉に広い庭に平屋。
 贅沢な作りだと思う。
 宗はもう電話を入れていたのでインターホンを押すと門扉が開いた。
 瑞希は不安でどきどきして宗の後ろからそっと服の端を掴んだ。

 家族なんて知らないからどんな感じかなんて知らない。
 それに宗の特別な子、桐生くんがどんな子かも知らない。
 そしてもし瑞希の出自の事を知ったら…?
 今まで変わらなかったのは宗だけだ。
 ぎゅっと手に力を入れた。

 「おう、入れ」
 玄関に出迎えて立っていたのは宗のお兄さんなのだろう。背が宗と同じ位でかっこいい人だけど、にやにやして宗を見てた。
 「二階堂 怜です。こっちが桐生 明羅」
 「……宇多 瑞希です」
 瑞希は頭を下げた。
 「怜さん?…宗?」
 そして一緒に並んで立っていた桐生くんがきょとんとしていた。
 可愛い!
 ちょっと見た時綺麗だと思ったけど、間近で見てもすごく綺麗で可愛い。
 「……友達…?」
 桐生くんが眉を顰めて宗を見ていた。
 「ばか、違うだろ」
 宗のお兄さんがくつくつと笑ってると桐生くんが顔を仄かに赤くした。
 「あ、ああ……ええと、宇多さん?………宗でいいの…?」
 意思の強そうな目で桐生くんが瑞希をじっと見て聞いてきた。
 「…え?」
 「なにそれ?」
 瑞希の隣で宗がむっとした声を出す。
 「だって、宗だよ…?ちょっとストーカーチックっぽいから」
 桐生くんがそう言うと宗のお兄さんが思い切りお腹を抱えて笑いだした。
 「失礼な奴だな」
 宗が面白くなさそうに眉を寄せた。
 「ほんとでしょ。宇多さん、付けまわされたりとかしてない?」
 「…………」
 宗が黙る。きっと清水課長の携帯調べて居酒屋に来た事とか考えてるんだろう。
 「付けまわされたりはないけど…それでも、俺は…その…嬉しいから、別に…」
 桐生くんが大きな目をさらに見開いた。
 「聞いた!?怜さん!?」
 「聞いた、聞いた」
 宗のお兄さんは大爆笑してた。
 「宇多くん、入って」
 「………だから嫌だって」
 宗はばつが悪そうに頭を搔いていた。
 
 リビングに通されて驚いた。
 大きなグランドピアノが置かれている。ピアノってこんなに大きかったっけ?
 学校のピアノはもっと小さかったような…。
 ピアニスト、というんだからピアノがあって当たり前なんだろうけれど。
 ソファに宗と並んで座るけどどうも落ち着かない。
 向かいの宗のお兄さんと桐生くんは互いの顔を合わせて、宗と瑞希を見てまた顔を合わせて笑っている。
 その様子はどう見ても恋人同士の甘い雰囲気で見ているこっちまで赤くなりそうな感じだった。
 「……バカップルだろ?」
 宗がそっと瑞希の耳に囁いた。
 宗を見ても宗の目は桐生くんの前でも変わっていないのに瑞希は安堵した。
 「で?いつ知り合ったの?」
 桐生くんが興味津々で聞いてきた。
 「去年の12月23日」
 「……コンサートの日?」
 「そ。終わって帰る途中に瑞希の車にぶつかった」
 「は?………へぇ、宗でもそんなドジするんだ?」
 くすっと桐生くんが婉然と笑った。
 「あ、あの…その日俺、車来たばっかりで浮かれてた、から」
 「ううん。宇多さんのせいじゃないよ。ぶつかる宗が悪い」
 にっこりと桐生くんが笑みを浮べて言い切る。
 …どうも桐生くんの印象が、違う感じがする。
 「……宇多さんって綺麗だねぇ。…ふぅん…」
 くすくすと笑って桐生くんは宗のお兄さんに身体の体重を預けて、宗のお兄さんはそれを当然のように手を桐生くんの腰にまわしてる。
 「お前らな…」
 宗が呆れたように二人を見てた。
 「何?別に宗の前だったらいまさら取り繕う事ないもの」
 桐生くんが勝ち誇った様に言った。
 「はいはい。…俺は何しろ初めてイタシタ日も知ってるし?」
 かっと桐生くんの顔が真っ赤になった。
 可愛い…。
 瑞希は思わず見惚れてしまう。
 「宇多くん年いくつ?」
 宗のお兄さんが聞いてきた。宗の家族には嫌われたくない、と思うとどうしてもしどろもどろになってしまう。
 「22です。あ…3になった」
 「はっ!?」
 宗が大きな声を出した。
 「いつ!?」
 「ええと…先週…」
 瑞希はびくっとして身体を竦めた。
 「………何?宗、宇多さんの誕生日も知らなかったの?…信じられない」
 桐生くんが嘆息しながら軽蔑するように宗を見ていたのに瑞希は宗に申し訳なくなって体を小さくした。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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