食べ終わってベッドにおとなしく戻った克巳の額に冷却シートを貼リ直して尾崎はまた行ってしまった。
「…なんなんだ…?」
いつものからかうような、バカにしたような口調はどこにもなく、目が心配そうに克巳を見ていて、手が何度も熱を確かめる為に額や首筋に触れてくる。
その度に体が構えてびくりと反応し、心臓がうるさく脈打つ。
そうじゃないのに!
好きなんかじゃない、と必死に自分に言い聞かせるのに勝手に体が反応してしまう。
「…疲れる」
それにありえない…。
ありえないのに…なんでこんな事になっているんだろう。
「ワケワカンナイ…」
そのくせ克巳自身帰る気もないんだ。
午前中に寝たからか眠気もなく体も大分楽になった気がする。
それはいいのだが、尾崎の手の感触が身体中のあちこちで覚えていて、それを意識するとかぁっと体が火照ってきていてもたってもいられなくなってくるのはどうしたらいいのだろう。
「ダメだ…」
どうにももうダメらしい。
自分の中では尾崎を意識しないでいるのはもう無理らしい。
「くっそ…」
あいつには彼女がいるのに…。
店で見た、尾崎が女性の肩に手を触れていた光景を思い出せば苛立つ。
この部屋にも来たんだろうか…というか、このベッドにも寝たんだろうか…?
朝みたいに、克巳がされていたように尾崎の腕に入って…?
「…ばかばかしい」
それを克巳が思っても仕方ない。
でも…。
あの手で体を触られたら…ざわりと肌が粟立って克巳は首を横に振って布団の中にもぐりこんだ。
ありえない事を考えても仕方ないのに…。尾崎が優しい真似をするから勘違いしたくなるんだ。
いや、担当になっているから尾崎は克巳を無碍に出来ないだけだ。それに一応義理の母親の息子でもあるから…。母親に克巳が疎まれていてもそこは事実だから外見で警察に見えなくとも一応警察官の尾崎は克巳を放り出す事はしないだろう。
義務感だ。
「………寝よ」
起きててもどうにも変な事しか考えられなくて克巳は無理に目を閉じた。
あんなに寝たのにやはり体は本調子ではないのかまたすぐに克巳は眠ってしまった。
これは夢だ。分かっている。でも…。
半分頭で夢と分かっているのに夢を見ていた。
目…覚まさないと…だめだ!
かっと克巳は目を開けた。
「…はぁ…」
顔が赤くなってるはず。
「尾崎の匂いがするから…悪いんだ…」
下半身をもぞもぞしながら呟いた。
「……リアルだ…」
キスされてる夢だった。しかもベロチューでおまけに体を触られてイくところだった。
夢見ながらイってたら多分…真面目にやばい事態になってたはず…。
人んちのベッドで…それはマズイだろ。パンツも穿いてないからきっと刺激されたんだ。
「…あ…何時だ?もう暗くなってる…」
またも寝すぎる位に寝てしまったらしい。おかげで熱は下がったようで昼間よりもさらに体が楽になっていた。
一部分は大変な事になっていたけど。
とにかく静まるまでじっとしているしかない。それなのにちょっと身じろぎするだけでびくんと反応してしまうそこが恨めしい。
「どう…しよ…」
全然治まる気配がない。夢で見た尾崎が今朝の尾崎と重なってさらにやばい。
「ん、ん…」
だめだ、と克巳はベッドから起き出して、勝手に申し訳ないけど…と思いつつバスルームを借りる事にした。
このままじゃだめだ。
冷たい水で冷やせば…。
尾崎にはまだ帰ってくるなよ、と念じながらそそくさと風呂場に向かった。
なんだって人んちなのにこんな事になっているのか…。情けない。
勝手に棚を漁ってバスタオルも見つけ風呂場に飛びこんだ。
シャワーを浴びるとその冷たさに体の熱が急激にしぼんでいく。
「はぁ…」
それに心底ほっとした。こんなの見られたら引かれるに決まってる。いや、もしかしたらその方がいいのだろうか?そうしたらきっと尾崎は二度と部屋にも克巳を入れなくなるだろう。こんな風に内側に入れる事がなくなれば克巳の心も変わるかもしれない。諦めがつくかもしれない。
「はぁ…」
頭からも冷たい水を被ればやっと全身が冷えた感じだ。
「克巳!?」
尾崎の声にはっとした。
「開けますよ!」
「やっ」
「ああ…シャワーだけ?それなら……って、何してるんです?それ、お湯じゃないでしょう!?」
「あ、いや…」
「熱あったのに何考えてるんですか!?」
いつの間にか帰ってきたらしい尾崎が服を着たまま風呂場に飛び込んできて冷たかったシャワーをお湯に変えた。
「尾崎…濡れ……」
「どうでもいい。一体キミは何を考えているんだ!?温まるならまだしも!」
「……は、な…して」
折角熱が治まったのに…濡れるシャワーの下で尾崎の手が克巳の冷たい体を抱きしめていた。
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