宗は何してるのかと思ってちらと見てみるとテレビをつけて見ているようで会話は聞こえてなさそうなのにほっとした。
「……俺…独占欲、…強いみたいで…」
こんな事人に言う事じゃないのに、二人が隠す事なく出してくれているのに自分を受け入れてもらってると安心出来た。
こんな風に思える事も始めてで、自分を出した事がない瑞希は戸惑ってしまう。
「え~?絶対宗の方が丸出しだけど?」
「え?」
ぷっと桐生くんが笑った。
「今だってイライラすごかったし?」
「え?」
「だって怜さんと仲良ししてるから」
またちらと宗を見たら宗の耳が少し赤くなってる。
聞こえてる…?
目はテレビを見てるのに耳はこっちに向いていたらしい。
終始桐生くんはお兄さんと離れない状態で宗に対する時とお兄さんの時の態度の差が歴然で、宗は別にそれが普通らしい。
心配してた様な事は本当に全然なくて、桐生くんがお兄さんをすごく好きなのが分かったし、お兄さんも桐生くんが大事なのが瑞希にも分かった。
自分と宗はどう見えているだろうか?
食事を終えてゆっくりした時間が流れるのに瑞希は意を決した。
「あの……」
「瑞希、言わなくてもいいぞ?」
すぐに宗が気付いて止めるように言ってくれたけど瑞希は頭を振った。
「いい。ちゃんと…話したいから」
そっと宗の服の端をつかんだ。
そして口を開いた。
お兄さんと桐生くんは黙って聞いてたけど、その態度にどこも変わる所はなかった。
「……宇多さん…全部宗だけ?」
桐生くんは笑みを浮べながら聞いてきた。
「うん……宗だけ……俺…何もないけど…」
桐生くんがにっこりと笑った。
「宗でよかったのかもね!しつこそうだし。きっと離さないでしょ。宇多さんその方安心しない?」
「…する」
だよね~、と桐生くんが頷いてる。
「あのね…俺が言う事じゃないけど…俺は宗は特別だよ?好きという意味じゃなくってね。宇多さんも怜さん、宗のお兄さんだから特別、って思うでしょ?だから、それでいいと思うんだ」
家族、という事だろうか?
こくりと桐生くんが頷いている。
「明羅と宇多くんは嫁同士」
ぶぶっとお兄さんが自分で言って笑ってる。
「怜さん!ふざけないでよっ」
もうっ!っと桐生くんがお兄さんの肩を叩いているけど、それもじゃれてるだけだ。
「でも宗いばりすぎだと思うけど?宇多さんの方が年上なのに」
「あ、それ…始め宗の方が年上だと、思ってたから。高校生って聞いてすごい驚いたけど…なんかそのまんまな感じだから」
「へぇ、嘘ついてたの?」
「ついてない。勝手に瑞希がそう思い込んでただけだ」
「訂正しようともしなかったんでしょ。宗、最低」
…最初はお金で買われたって言ったらきっと桐生くんはもっとずけずけ言ってくるかも、と思ったら、宗が小さく言うなよ、と辟易したように言ってきたのに思わず笑った。
「俺は別にいいんだけどな…」
「だめだろ。何言われるか分かったもんじゃない」
「お邪魔しました」
「またおいで。宗いなくてもいいから」
「うん。宗いなくていいよ」
「……誰がよこすか」
玄関先でお暇の挨拶にも笑ってしまう。
お兄さんの家を出て歩く中、もう夜で人通りは少なくて、宗の腕に思わず縋った。
「……どうだった?」
「うん……嬉しい」
宗の声が優しかった。
「…宗…ありがと…」
宗との事を話せるのも嬉しい。
「何かあったらあっちに相談でもいいから」
「………うん」
瑞希が一人でぐるぐるしている事も考えての紹介だったんだと思い当たる。
宗は瑞希の事を考えてくれている。
「なにかあったら桐生に言ってみな?嫁同士気持ち分かるだろ」
宗まで笑いながらそんな事を言う。
「…お兄さんとやっぱり似てるね」
「………嬉しくないし」
宗が肩を竦ませたのに瑞希が笑う。
「あとは問題は女か?」
「……もう、いいよ。………ねぇ、乗り込んでいいって言ったよね?本当に?」
「ああ、いいよ。一緒にいるの瑞希以外考えてないから」
嬉しい。
「俺、どうしよう…嬉しい」
「それはよかった」
宗も笑みを浮べた。
テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学