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追憶の彼方から放されたい 37

 日中はあんなに寝てばかりいたのに今は全然眠くない。
 いや、寝てばかりいたから眠くないんだろうけど…。それに寝たおかげで体調も復活したらしい。
 ニュースの音を聞いていたが、ニュースを終えるとテレビが消え、音がなくなった。
 そして電気の消える音がしてから尾崎が寝室に入ってきた。

 「狭いけど、詰めて」
 すっかり我が物のように克巳がベッドを陣取っているが、ここは尾崎のものだ。
 「狭くて悪いね」
 「…いえ…」
 尾崎に背を向けながら克巳は横を向いてなるべくベッドの端にいくように身体を移動する。

 夏の暑い時期なのになんで男二人でくっ付いて寝るんだろう?それでも部屋はエアコンがついていて快適な温度になっているから暑苦しいわけではない。
 「そんなに端っこじゃなくても」
 尾崎が克巳の後ろから声をかけてきて克巳の体を包むようにしたと思ったらぐいと腕で克巳の体を引き寄せてきた。

 声が近いし尾崎の腕が体に巻きついている。
 体を思わず強張らせるが、尾崎の腕が離れていかなくて、しかも克巳の項に尾崎に息遣いを感じた。
 助かったのは尾崎の腕がTシャツの布越しだった事だ。もしそれが肌だったら…。
 「あっ」
 そう思ったら尾崎の手が移動して克巳のむき出しの足をするりと撫で上げて来た。

 たったそれだけなのに尾崎の手が直接肌に触れられただけでびくりと克巳の体は震える。
 やばい…。
 だって下に何も穿いてないし…尾崎に背中を向けてるって事は尻を出してる状態じゃ…?
 もぞりと克巳が体を動かすと尾崎がはぁ、と熱い息を克巳の項にかけた。
 それにぞくりと肌が戦慄いた。

 「克巳…」
 尾崎が掠れた声で克巳の名を呼び、さらに克巳はどうしていいかわからなくなる。
 「ちょ…っ」
 ぐりと尾崎が腰を克巳に押し付けてきた。そこにははっきりと尾崎が反応して固くなっているものを感じた。
 それを感じた途端に克巳の前もじくりと反応してしまう。
 だって尾崎は克巳に反応してるという事だ。

 「…困ったな…」
 尾崎に呟きにそうだろう、と克巳も思う。なにしろ尾崎は彼女がいるんだ。
 「……具合…悪くない…?」
 「…もう…大丈夫…」
 声が震えそうだ。
 そろりとまた尾崎の手が動いて克巳の前に触れてきた。何もつけていないそこは簡単に尾崎の手に触れられてしまう。

 「…さっき出してあげたのにまたちょっと勃ちあがってますね」
 確認事項のように尾崎に囁かれ克巳はかっとした。
 「後ろに入れないけど…ちょっといい…?」
 尾崎がごそごそと身じろぎしていると克巳の後ろに固いものを押し当てて来た。
 「あ…っ…や、め…」

 「入れないから…」
 尾崎が克巳の項にキスしながら囁いている。
 「キミももう」
 尾崎に触れられて少しだけの反応だったそこはもうすっかりと形を変えてしまっていた。背中に尾崎の全部を感じれば自分の意思と裏腹にもうすっかり臨戦態勢になっていた。

 ぐい、と尾崎が足の間に自分のそそり立ったものを押し当ててくる。
 入れないと言ってた通りに後孔ではなく足の間だ。
 股の後ろから大きく育った尾崎がゆっくりと腰を動かし始め、そして手は克巳のものをまた手で愛撫し始めた。
 「もう先から零し始めてる…」
 「言う…な…」

 尾崎は気持ちいいのだろうか…?
 克巳の耳元で短い息を漏らし、克巳の耳や項にキスしながら小さく言葉を囁く。
 そういう尾崎のものも先からこぼれているらしく擦れるたびにぬちぬちと音が微かに聞こえてくる。
 どうしてこんな事になっているのか。

 尾崎は好きでもない相手とこんな事が出来るのか。でもまだ最後の一線は越えてないからいいのか…?克巳にしたら十分これもセックスだと思えるけれど…尾崎は違うのか?
 でも確実なのは好きではないという事だろう。
 唇にキスもないし言葉もないんだから…。

 「あ、ぁ…」
 だが、克巳の体は与えられる快感に我慢が出来ずに気持ちいいと訴えてくる。
 声が出そうで口を両手で塞いで我慢しようとしたけれど、でもそれでも声は出た。
 「んっ…ぅ…」
 「気持ちいい…?イきそう…?…俺ももう出そうだ…」
 尾崎の声がヤバイ。そんな掠れた官能を含んだ声で囁かれたらそれだけでもう身体がびくりと体が反応してしまう。

 「あ、ぅん…」
 「克巳…」
 尾崎が後ろから大きく克巳を衝くように腰の律動を激しくした。
 擦れて、前も扱かれあっという間に追い立てられる。
 「や…で、…る…」
 「出して」

 「あ、ああぁっ!」
 またあっという間に出してしまい、体を硬直させると尾崎の熱い飛沫を股の間に感じた。尾崎のをかけられたらしい…。
 はぁ、と息をつくと尾崎が克巳の後ろで項にキスしている。
 …どうして…こんなに虚しいのだろう…。
 好き合ってるわけでもないのだから当然か…と克巳は泣きたくなった。
 
 
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