「克巳」
尾崎が克巳の頬を撫で、髪を撫でながらキスする。唇にも、額にも頬にも、耳にも、あちこちにだ。まるで愛しいといわんばかりの優しいキスだ。
「尾崎…あ、祐介…か…」
その繰り返されるキスにじんとして克巳は尾崎の首に抱きついた。
「このほうがいい…抱きつける…」
「ああ!もう…どうしようか!」
尾崎がぎゅうっと克巳の身体を抱きしめてきた。
「可愛すぎる!克巳…好きですよ。どうやら胡散臭いとキミは思ってるみたいですけどね」
「あ…うん」
「そこ…肯定ですか…」
尾崎ががくりと肩を落とす。
「…多分ね…自分の本当の所を隠しているから…だから克巳がそう思うんだと思いますけどね…全部出したら俺は相当ヤバイので」
「…ヤバイ?」
「そう。心の奥は激情が渦巻いてるんです。それが出てこないように自分を押さえつけている。だから克巳は胡散臭い、って見えるんじゃないかな、と。でも誓って本当に嘘は言ってない」
目を合わせた尾崎の瞳の奥にちらと激しい色が見えたような気がした。
「見せていい…というか…見たい」
「ダメですよ。暴走するから」
「…いい。全部…見たい」
はぁ、と尾崎が大きく溜息を吐き出す。
「どうしてそういうこと言うかな…。とにかくダメ。克巳に嫌われたくないんで」
尾崎もそんな事思うのか?と克巳は目を瞠った。
「…なんです?その目…」
「いや…尾崎もそんな事…思うんだ、と思って」
「思います。折角可愛い恋人を手に入れたのに逃げられたら堪らないですからね」
…恋人。
じわりと克巳の心の中が温まり、そして顔も締りがなくなってくる。
「はぁ……またそういう可愛い顔する…。一体どうしちゃったんです…?なんか色々ダダ漏れになってますよ…?萌え死にしそう…」
尾崎がまた克巳をぎゅっと抱きしめて耳元に囁いた。
「暴走しそうなのを少ない理性で止めてるのに…」
「別に止めなくとも…」
「止めなかったら大変な事になりますよ。本当は今すぐキミの中に入って滅茶苦茶に犯したい。…でもしたくないから…キミにだって気持ちいいと思って欲しいから留めてるのに…」
尾崎が克巳の目をじっと見た。
その瞳に情念の籠もったよう陰が見えた。奈落の奥底のような暗い影だ。
「…尾崎…」
そっと克巳は尾崎の体を抱き返し尾崎の耳元にキスした。
どこか胡散臭いと思っていたのは自分を全部見せていなかったからなのか…。自分を作っていたからか?
「今はいいけど…少しずつ…尾崎の事を教えて…?」
「……そのうち、ね」
尾崎はぎゅっと克巳の身体を抱きしめる腕に力を込めた。
「…ちょっと…嬉しい」
克巳が小さく囁くと尾崎が顔を上げて何が?と聞いて来た。
「尾崎が…ちゃんと答えてくれるのが…分かるから…」
はぁ、と尾崎が溜息を吐き出し、そしてくっと笑い始める。
「怖いな…嘘がつけなさそうだ。全部見破られそうな気がする」
「…嘘はつかないんだろ?」
「克巳にはね。今までなんて嘘だらけの人生ですよ?」
「別にいい。俺に嘘つかないなら」
尾崎が肩を揺らしながら笑って克巳にキスを繰り返した。
「キミには嘘は言わない」
誓うように尾崎が小さく克巳の耳元に囁いた。
「ん…」
そして克巳の身体に当たっていた尾崎の大きくなっているものに自分から腰を擦り付ける。
「…続きは…?」
「勿論可愛がってあげます。身体が溶けてなくなってしまいそうな位にね」
「ん…ぅ…」
軽く重ねるだけのキスから濃厚なそれに変わっていき、そして尾崎の指が再び克巳の下半身を弄り始める。また後孔で尾崎の長い指が克巳の中を解すように蠢き始めた。
もどかしいような動きに克巳の腰が揺れる。
尾崎が手を伸ばしてベッドサイドのチェストをごそごそと探っていた。
「な、に…?」
「ん?ローション。克巳が痛くないようにね」
元から持っていたのか用意したのか克巳には分からないが、用意周到ではあるらしい。
「あ、…ぅ…ん!」
「冷たい?ちょっとだけ我慢して」
とろりとしたものを塗り付けられ、また後ろを弄られる。
「あ…さっきより…」
後ろが拡がっている気がする。
「うん。指増やしたけど…痛くはなさそうだね」
「…痛くは…ない…けど……んんぅ…」
中をかき回されると変な感じだ。自分の中なのにこんな感覚など知らない。怖いような気もするが欲しいと目で訴えてくる尾崎が見えて克巳は言葉を飲み込みそれを享受した。
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