何を尾崎は隠しているのだろう?
克巳だって自分の力の事を隠して生きて来た。そんな人とは違うものを持っていないはずの尾崎なのに何を隠す必要があるのだろうか?
でも人なら誰しも見せたくない部分を隠し持っているのかもしれない。
今まで克巳は誰も自分の事を分かってくれる人はいないのだと思っていた。人とは違う自分なんかを人は受け入れるはずがないと思っていた。
だが、克巳の事を知っても変わらない人がいる事を知った。
そしてただ自分一人が人からはみ出したような存在と思っていたのが唯くんの出現で意識が変わった。
父親にもまさかそのまま受け入れられてるとも思ってもなかった。
一般には母親のような反応なのかもしれないが全部がそうとは言いきれないんだ。
尾崎だって母親から聞いていたらしいのに最初から変な目は向けてこなかった。
ああ…尾崎が最初から克巳をありのままで受け止めていたから…だから胡散臭いと思いながらもついていったのだろうか…?
…そうかも、と自分で納得する。
「ん…あ…」
さらに後ろで圧迫が拡がった。
ゆっくりずぶりと克巳の中に入ってくるのは尾崎の指か…?
「指じゃなくて…」
「いや、まだ早い…もう少し、ね。俺だって早く中に入りたいんですけどね」
尾崎はキスをあちこちに繰り返す。その一つ一つが嬉しい。
自分のような者に恋人が出来るなんて思ってもみなかった事だ。たとえそれが男だったとしてもだ。男だろうが女だろうが自分がそんな思いを持つようになるなんて思わなかったし、それを返されるとも思ってもなかったからまだ夢の中にいるような気分だ。
尾崎を抱きしめて何度も確認する。
この手は本当に尾崎を捕まえているのだろうかと。
そして尾崎はそれを肯定するかのように何度もキスしてくる。
「尾崎…」
もっといっぱい確かめられるようにキスが欲しい。
この前はキスがなくて悲しかった分、もっと…と欲張りな心が尾崎にキスをせがむ。
「キス好きなんだ?」
「…ん」
尾崎が口端を緩めながら顔を近づけてきて克巳も口を半開きにしながらそれを待つ。
もう尾崎のキスは身体中あちこちにされている。それでももっと、とかなり自分は欲張りらしい。
「ホントに困った子だ…。そんなに気持ち良さそうにキスするとか予想外だった…」
尾崎が楽しそうに笑いながらもキスを繰り返す。首筋にしたり鎖骨あたりを舐めたり。くすぐったくてそして気持ちいい。
克巳のことを分かって、全部を尾崎が受け止めてくれるのだから克巳だってそうしたい、と思うのに。
「…克巳…挿れたい…いい…?」
尾崎が掠れた声で克巳の許可を求めた。そんな確認する事ないのに…。
「いい、って言って、る」
浅くなっている息で頷けば後ろを穿っていた指を引き抜かれ、代わりに熱く滾ったものを押し当てられた。
「克巳…深呼吸して」
すうはぁと克巳が言われるまま呼吸を深く繰り返すと、それに合わせてゆっくりと尾崎が中に入ってくる。
「んん…っ」
指とは違う存在感。大きく後ろが拡がって尾崎を飲み込もうとしている。
「おざ、き…っ」
「だから…名前って言ってるのに…」
尾崎が苦笑しながら苦しそうに表情を歪めている。
「狭いな…克巳…痛くない…?」
痛くないわけじゃないけど汗をにじませた尾崎を見て小さく首を横に振った。
「いい…早く」
中まで全部埋めて欲しかった。そんな事を思う位に人を求めるなんて…とそれだけで自分が満たされた気分になってくる。
ゆっくり尾崎が克巳のすべてを満たしていくようだ。余裕なんかないのに全身が敏感になって尾崎を感じる。
息遣いも熱も…。
「祐介…」
名前で、と尾崎に言われて名前で呼ぶ。それだけでも感じてしまいそうだ。
「克巳…」
尾崎の掠れた声が耳を擽るだけでふるりと身体が震えてしまう。
「あ、ああぁっ」
尾崎が腰をゆっくり押し進め克巳の中を満たしていく。
「なんか…いっぱい…だ…んっ、く…」
ずくんとまた尾崎が克巳の中で質感を増す。
「ちょっと…黙ってた方がいいですよ?…これ以上はヤバイ…」
尾崎が苦笑しながら克巳にキスして口を塞いだ。そしてゆっくりと尾崎の腰が動き始めた。
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