好きが返されるとは思ってもいなかった。
いつから?どこが?尾崎はそう思っていたのだろう?
…それを言ったら自分もだが。
尾崎のTシャツを着せられていてまたも下は穿かされていない。
自分の服をきょろりと探したが見つからなかった。
動かすのも億劫な身体をベッドに起こし、それだけで大きな溜息が漏れてしまった。
まるで鉛かなにかが圧し掛かっているみたいだ。熱で動けない時とまた違う。
立ち上がろうとしたら足に力が入らなくてへなへなと床に崩れてしまった。
なんだこれ、と思いながら呆然としてると尾崎が気配を悟ったのか部屋に来た。
「動けない…?」
「…ああ」
くすりと笑ってからすぐに克巳を抱き上げたけど、慌てて捲れそうなTシャツを押さえた。
「別に隠さなくとも」
「………」
そのままリビングに運ばれて座らせてもらうと一息つけた。
「もうちょっと待ってて。ニュースでも」
尾崎がテレビをつけたのでそのままニュースを見て、尾崎はキッチンに戻る。
……なんか恥ずかしいな。
お尻が落ち着かなくてもぞもぞしそうだ。
尾崎は上機嫌で、そんな様子を隠そうともしないらしい。克巳はニュースを見てるふりをしながらちらっと尾崎の後姿を見た。
広い肩幅に肩甲骨が浮き上っている。暑いのか上は上半身裸のままで料理してるらしい。
「克巳?パスタあったからパスタにしたけどいい?」
「…ん」
文句言える筋合いなどないし、好き嫌いもほとんどないので頷いた。
胡散臭いと思ってたはずなんだけどな…と自分がおかしくなる。
今は満たされている気持ちで自分の中が溢れていた。
これが幸せという感じだろうか…?
誰も自分なんかを受け入れてくれる人などいないと思っていたが…。
唯くんが幸せそうにしているのが分かる気がした。
「あ…」
流して見ていたニュースに目を留めた。
「尾崎」
「はい?」
「これ!知ってるか?」
「ん?」
克巳がニュースを指差すと尾崎が火を止めてリビングの方にやって来た。
ニュースは政治家の収賄についてで名前があがっていたのは若手二世議員の大垣だった。
「ああ、話はちらっと聞きましたが…。元々いい噂は聞きませんからね。こいつの親父も相当あくどい事してたみたいですが、それ以上とも聞くし。父親が大物だから寄ってくるやつも相当らしいですね。そういやなんか克巳の親父さんとはあんまり?」
「…らしいね」
「コイツが一方的に克巳の親父さんを目の敵のようにしてるらしいですけど。それだって大物の父親がいなかったら力なんてないんででしょうが…。克巳も知ってるんだ?」
「いや、この間法事の時に色々親戚連中に聞かされた。……あ、そういや…」
「うん?」
「ちょっと前に…父親が刀を手に入れたらしいんだ。自分で買ったのかどうかは知らないけど。そこにたまたま居合わせて…その刀がちょっと嫌な気をしてたから…手放した方がいいって言ったらあっさり手放したらしいんだけど。…それの行き先が…」
克巳がテレビを指差した。
「大垣?」
「…らしい」
大きく目を見開いてからぷっと尾崎が笑った。
「あ…こういうのバラしちゃいけないのか?贈賄?」
「名目がどうなってるか分かりませんけど。俺は何も聞いてませんからいいですよ。克巳の親父さんに睨まれたら困るし」
「…困る?」
「当たり前でしょ。大事な一人息子にこんな事しちゃってるのに」
尾崎が立ち上がりながら軽くキスする。
「なので何も聞いてないし知りません」
「…ふーん」
克巳は何気なさを装うとしたが上手くいってないと自覚していた。こんな何気ない時にキスとかが照れくさくて耳まで熱くなっている。
「…なんですかその可愛い態度は」
スルーしてくれればいいのにしっかりと尾崎はそこを突っ込んで来た。
「折角今日はあとは我慢しますって言ってるのに…襲われたいんですか?」
「…無理。後ろにまだ何か入ってる気もするし身体中みしみしするのに。…でもあんなに何回も出したのに…アンタ…まだ出来るの…?」
「溜まってましたからね。…しかし…」
尾崎が頭を抱える。
「そういうコト言ったら煽るだけだと言うのに…。理性を総動員させて我慢しますから。ご安心ください」
やれやれと言いながら尾崎がキッチンに行く。
「もうすぐできますから、克巳はおとなしく黙ってニュース見ててください」
「………わかった」
どうやら余計な事は言わない方がいいらしい。…だが尾崎がまだ欲しいと思っているのなら、とそこは安心してしまった。
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