尾崎の用意してくれた飯を食べて、その後は尾崎に寄りかかりながらとろりとした時間を過ごした。
座椅子代わりに尾崎によりかかればその安定感と体温が気持ちいい。
だるく疲れた身体がすぐに眠くなってくる。
「克巳?眠い?」
「…ん…眠い」
「ベッド行く?」
「んん…もちょっとこのまま」
克巳がそう言えば尾崎はそのまま克巳の好きにさせていた。
「意外に甘えっこだ…」
「ん?嫌なのか?」
「全然。いくらでも椅子代わりでもなんでもしますよ」
尾崎の膝に入って全身の力を抜いて身体を尾崎に預けている。
「……椅子なのに変なとこが硬くなってるけど?」
「それは仕方ないですね。俺も我慢してるんでキミも我慢してください」
飄々と尾崎が言い放つ。
「だってねぇ…こんなあられもない姿で甘えてこられたらそりゃそうなりますって」
「……ん?」
うっすら目を閉じていて気づいていなかったがはっとして自分の姿を見た。
確かに下は何も着ないままだった。一応前は尾崎の大きいTシャツのおかげで隠れてたけど、ちょっと捲れば丸見えだ。
「…やっぱりベッド行く」
「ダメ。このまま、ね」
尾崎が後ろから克巳の耳にキスしてくる。
「椅子はキスしない」
「キス位はいいでしょう?」
克巳が素直じゃなくとも尾崎は気にしないらしいのに安心する。もっとも口ではそんな事を言いながら克巳だってして欲しいと思っているのだからそれ以上は黙る。
「明日も泊まる?」
「…帰る。明後日は警察に行く日だろう?」
「ああ、そうでしたね。そういえば克巳、お盆あたりに用事は?」
「何もない」
「俺休みあるんで、出かけるのに付き合ってくれません?」
「…いいけど」
「泊まりでね」
「泊まり?」
「そう。日帰り出来ない事もないんですけど。折角なんで温泉宿にでも泊まりましょう」
「……ん」
「日にちはお盆過ぎになるかと。少しずらしたから、部屋も大丈夫だと思うけど後決まったらちゃんと言います」
「分かった」
こくりと頷くと尾崎の手が克巳の腹をぎゅっと抱きしめてくる。
なんでたったこれだけでも満足なんだろうと思いながら瞼が落ちそうになってきた。
「…寝ていいよ」
尾崎の静かな声が克巳の耳に響いてくる。
セックスしてる時の激情もいいけれど、こういうのもいいもんだ、と思いながら克巳は瞼を閉じていた。
「克巳」
「ん…?」
尾崎の声に目を覚ますと尾崎はすでに着替えを済ませてベッドの端に座っていた。
「あ、れ…?もう行く時間か?」
「そう。もう少し寝かせておきたかったんですけど」
「…悪い」
「いえ。身体疲れさせたの俺の所為でしょうから」
尾崎が苦笑しながら克巳にキスする。
「俺帰ってくるまで待ってる?それなら後送って行きますけど」
「いや、電車で帰るよ。あ…でも鍵」
「これ」
尾崎が鍵を出して克巳に手渡して来た。
「合鍵。いつでも来ていいですからそのまま持ってて」
「……いい、のか?」
「勿論。そうしたら雨に濡れても熱も出ないでしょうし」
「あれはっ、たまたまだ」
そっと尾崎から合鍵を受け取り手の中に包み込んだ。
「克巳の服は乾いたのでそこに。俺としてはいて欲しいんですけどね。…さすがにそうはいかないかな…」
「学校の課題終わらせる」
「…ですね」
尾崎が嬉しそうにしながら克巳に何度も軽いキスを浴びせる。
「もう…行く時間なんだろ?」
ぐいと克巳が尾崎の顔を押しやると仕方なさそうに尾崎がベッドから立ち上がった。
「そうなんですよね。じゃ、行ってきます。行きたくないけど」
「…いってらっしゃい。あとじゃ鍵閉めて帰る」
「身体酷そうだったら俺帰ってくるの待ってて?」
「大丈夫だ」
いっぱい寝たからか昨日よりはずっといい感じだ。
「じゃ気をつけて帰ってくださいね」
「…ん」
もう一度尾崎が軽くキスしてそして部屋を出て行くと、克巳ははぁ、と溜息を吐き出して布団に包まった。
朝からこんなの…。
寝起きにキスに甘ったるい雰囲気。手には貰ったばかりの合鍵。
照れくさい…物凄く。
顔は絶対赤くなっていると思う。心臓もとくとくといつもより鼓動が早い。
胡散臭いスーツ姿がカッコイイに見えるのが恥ずかしい。
「……好き」
いなくなった家主に向かって小さく呟き、そんな事をしてる自分がまた恥ずかしい。
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