「それで?可愛いはどんな時?」
どうやら尾崎はそれを聞き出さないと気が済まないらしい。
「…やだって…言いたくないって…言ったのに…」
「ダメです。それともやっぱり武川本部長の息子さんは…」
「ない、って。なんでそんなに気にするかな…」
好きなのは尾崎だって言ってるのに。
「気にするに決まってるでしょう。克巳がこんなに可愛いのを知ってて…」
「いや、そんな事ないって言ってるのに…」
「あります」
どこまで行っても平行線らしい。
それはいいんだけど、恥ずかしすぎる!言われるのも恥かしいし、言うのも。
「嫉妬ですよ。最初の俺の電話にも出ないで会ってたとか…勘繰りたくなるから」
「だからないって…」
困ったやつだなと思いながらもそんなちょっとの事さえ尾崎が気にすると思えばそれ位克巳の事だけを考えているんだとも思えてちょっと嬉しくもなる。
「言うまで許しませんから」
じろりと尾崎に睨まれて克巳は観念した。
「………尾崎の事だ」
小さく囁くように口を開く。
「…………はい?」
「だから!…尾崎の事を好きなんだ、って…バレた時」
ぎしっと尾崎が克巳を押さえ込んできて克巳は付け足した。
「………え?」
それを聞いた尾崎が呆けた顔をしたけど克巳は恥かしくて尾崎の顔を見ていられなくなって顔を尾崎から背けた。耳まで熱くなっている。
ぐいと尾崎の胸を押して尾崎を避けさせて克巳は身体を起こした。
「シャワーしたいっ」
一日外にいたのに!汗もかいたし身体を流したい。
「してくる。くるなよ!」
尾崎が身体の力を抜いたことをいい事に克巳は尾崎から抜け出して勝手に風呂場に行った。
だって絶対汗クサイ。今はクーラーが効いてきて汗がひいてたけど、ちょっと外に出ただけでも汗かくんだから。
それでこの間みたいな事されたくない。だからといってシャワーを借りて体を綺麗にしてハイドーゾというのもなんだか…と克巳は一人で動揺しながら身体を流した。
どうにも恥かしくてシャワーに時間をかけていると尾崎が風呂場のドアを開けた。
「まだ?」
まだって…。
「来るなって…言った」
「待てない」
尾崎の視線が克巳のシャワーに濡れた身体をじっとりと舐るように凝視する。
「もういいでしょ?」
尾崎がバスタオルを広げ克巳を促してきたので克巳も観念してシャワーを止めると雫に濡れた裸体を隠す事もなくそのバスタオルにおとなしく包まれた。
尾崎は黙って克巳の身体を拭い、髪も拭いてくれ、そして終えると克巳の手を引いてもう一度寝室まで連れて行かれる。
「さっきの、本当に?」
尾崎が克巳をベッドの端に座らせた。
「………嘘ついたって仕方ないだろ」
恥かしくて声はぶっきらぼうになってしまう。言った事も格好もどれも人に晒すものではないのに尾崎は全部を曝け出そうとするんだ。
「アンタはずるい。俺の事ばっかり丸裸にして何もかも曝け出そうとして…アンタは何も教えないのか?」
「ん?俺の悪い事の事?」
くすりと尾崎が笑うがその顔はシニカルな笑い顔でとてもじゃないがいい笑顔ではない。
「おいおいに、って言ったでしょう?もっと克巳が俺の事を離せなくなってからじゃないと…。逃げられたら俺は再起不能になってしまう。最も逃がしませんけどね」
「じゃあ別にいいだろう?それに…」
逃げる、なんてそんなつもりはないしもう離せないのに…。
じっと尾崎の目を見た。銀縁の眼鏡が壁を作っているような気がして手を伸ばし眼鏡を取り上げた。
尾崎は克巳がする事を黙って享受している。
「逃げない」
克巳が取り上げた眼鏡を尾崎が掴み、そして克巳をベッドに押し倒しながらキスしてきた。
色々な熱い感情がこもったようなキスだ。
すぐに唇をこじ開けられ舌が入り込んでくると舌を絡めて口腔全体を舐られるように尾崎の舌が蠢く。
「んっ…」
たったキス一つで克巳の身体はじんと熱くなってきてしまう。尾崎の目が克巳を見ているのが分かる。眼鏡がなくなっただけで尾崎の普段隠している激情が見える様に感じてしまう。
「…全部出しても克巳は逃げないだろうか…?」
尾崎がはぁ、と熱い息を漏らしながら弱音を吐くように囁いた。
「逃げない」
どんな尾崎がいるのか知らない。
「初めて…の好きな相手だ。欲しいと…自分が思ったんだ。逃げるはずがない」
きっぱりと克巳が答えた。
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