克己が目を開けると目の前に尾崎の顔があった。
尾崎は先に目が覚めていたらしくずっと克己が目覚めるのを眺めて待っていたらしい。
「おはよう。よく眠れた?」
「…ん…」
まだ寝ぼけながらもこくりと頷く。
「…何時…?」
寝起きで克巳の呂律がまだ怪しい感じだ。
「もうお昼近くです」
「………おなかすいた」
「でしょうね。昨日の夜は働いたから。用意してきますよ。克己はまだだらだらしてていいです」
尾崎がくすっと笑いながら克己に軽くキスしてぎしっと音を鳴らしてベッドを起き上がった。
克己は目は覚めたけど頭がまだ起きなくてベッドの中で半分寝ぼけている。
尾崎はちゃんと自炊しているらしくいつでもささっと何かを作ってくれる。だがいったい自分は何が出来る?…今の所何もできなくて甘やかされ放題だ。
尾崎が動いているのに自分だけが寝てるのも気が引けてのろのろと克己は起き出した。
いいけど身体はまだだるくて重石を乗せられているようだと思いながらものろのろと着替えを済ませて寝室を出た。
「なんだ起きたの?まだ寝てていいのに」
「…甘やかしすぎ」
「いいんです。俺がそうしたいんだから。甘やかして蕩けさせて俺だけしかいらないって思わせる作戦なんで」
もう十分そうなってると思うけど…。
克己はそう思いながらリビングでいつも座るクッションに座った。
…だるい。
いっぱい寝たはずなのに相変わらず身体がだるい。
「克己?具合悪い?」
「……どうかな…ダルいんだ…」
尾崎が克己の傍にきて額に手を翳す。
「熱はないみたいだけど…いろいろ疲れたからかな…」
尾崎が眉根を寄せて呟いた。
「大丈夫。だるいだけで別になんともない」
「…今日行くのやめますか」
「いいって!大丈夫」
きっと他の人は昨日から寝ずに色々してる人もいるかもしれないのに…。自分なんかたいした事してないのに。
「顔色が悪いわけじゃなさそうだから…。これで熱とか顔色悪そうだったら却下しますよ」
「大丈夫」
尾崎は心配性なのだろうか?難しい顔で克己を見ているのが大切にされているようで照れくさく感じる。
「…だから甘いって…」
そんな心配を人から向けられた事もなくてどうしていいか分からなくなってしまう。
「キミは俺に愛されてればいい」
「な、に…それ」
かぁっと顔がありえないくらいに熱くなってくる。
「可愛い」
くすりと笑われて赤くなっているだろう頬にキスされた。
「ホントどうしてこんなに可愛らしくできるのか…。はぁ…」
尾崎が疲れたような溜息を吐き出した。
「尾崎も疲れてるか?」
「俺?全然?」
「本当に?…その…俺がいて疲れるんじゃないか?」
「ないですけど?傍にいてくれた方が安心しますね」
「え?…そうか?…でも、なんで?」
「なんでって…どうやらキミは俺がいると疲れるらしい」
「それはない。安心するって…昨日も言ったはずだ」
「ああ…キミの安心と俺の言う安心の意味合いはちょっと違いますけど。好きな人の傍にいるのに疲れるって…。…というかそう思われてるって…」
はぁ、と尾崎がまた溜息を吐き出す。
「あ、そ、ういう意味じゃなくて…俺みたいなの…何も出来ないし…だから尾崎が疲れるかな、って…」
「克己に関しては世話するのも好きなので気にしなくていいです。愛されて甘やかされててください」
尾崎がそんな事を言ってまたキッチンに戻っていく。
一体自分はどうしたらいいんだろうか…。
あまりにも恥ずかしい事を面と向かって言われて逃げ出したい位だ。なんでアイツはそんな事を恥ずかしげもなく言えるのか…?
「なぁ?」
「なんです?」
「尾崎って日本人じゃないのか?」
「はぁ!?…日本人ですけど?どういう意味です?」
「だって…あんな恥ずかしい事…普通に言うから…」
「あのね…。……これからいっぱい言う事にしましょうか。慣れてください」
「…無理っ」
好きって言うのでさえやっとなのに。
「今度は克己からも恥ずかしい言葉を引き出してやりましょう」
にやりと尾崎が楽しそうに笑った。
「………今の顔…すっげぇ悪そうな顔だった」
「悪い男ですからね」
しれっと尾崎が答える。
「克己の前ではいい子にしてますから。だから胡散臭いなんて言われるんだと思いますけど」
胡散臭いって言ったのが引っかかっているらしく何度も念を押される。
「だから今はそう思ってないって」
「…たまには思ってるくせに」
鋭いところを突かれて克巳は口を噤んでしまった。
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