すぐに署は終わったんだけど、さらに身体がだるくなってきた。
「克己、後ろに横になってて」
「…ん」
素直に頷き克巳は後部座席に横になった。
かっこ悪いってどんな事だろう?光流くんのお父さんはかっこよくて尾崎はかっこ悪い?そういえば尾崎の友達が悪い事してたって言ってた。
「………克己?」
「ん~?」
「………聞かないんですか?」
信号で止まったのか運転席の尾崎が後ろを振り向いた。
「ん。今はね。別にいい。尾崎がおいおいに話してくれるって言っただろう?だからいいよ。内緒だ、絶対話さないっていうなら聞き出してやるって思うけど…そうじゃないから」
「…みっともない話なんでなるべくなら話したくないんですけどね…」
「みっともない?そんな事ないだろ。過去があって今があるんだから」
「………」
信号が青になったのか尾崎が黙ってまた車を動かし始めた。
「具合は?ひどいですか?」
「うーん…本当に体だけ。気持ち悪くもないし頭もはっきりしてる。身体だけが異常に重い」
「……俺の所為ですかね…」
「いや、違う。…もしそうだったら…今頃はもっと楽…になってる…はず」
尾崎は激しくしたから、ではない。それは確実だ。朝から身体の重さが変わっていないんだ。
「疲れだと思う。昨日のはありえないくらいに緊張してたから」
尾崎が克巳の身体をかなり気にしているようだ。気にしなくていいのに…。
車が克己の自宅に着いたが克巳は本当に起き上がるのも億劫だった。
「尾崎…悪いけど車、門の中まで入れてもらっていい?庭突っ切るのもだるい」
「…構いませんが」
克己は携帯で家に電話をして門扉を開けてもらい、尾崎は車を敷地の中まで入れた。
すると尾崎は車を停めた後、何も言わずに運転席を降りて後部座席のドアを開けると克己を抱き上げた。
「尾崎っ」
「具合悪いんですからいいでしょう?」
「…ん」
離れがたかったのも本当だったので克己も頷いてしまう。
「克己さん!大丈夫ですか!?」
家政婦が抱きかかえられて帰還した克己に仰天した顔を見せた。
「スミマセン。私がついていながら具合を悪くさせてしまって」
「いや、尾崎の所為じゃないから。俺が勝手に具合悪いだけ」
「このまま部屋までお連れします」
「お願い致します」
「廊下まっすぐ、そこの階段上、上がったら右、はいソコ、俺の部屋」
克己が手を伸ばしてドアを開けて、尾崎がそのまま克己の部屋に入ると克己のベッドに横にしてくれる。
「…初めての克己の部屋だ」
「尾崎が俺の家に来るって事は…普通はないよな?」
「まぁね」
くっと二人で顔を合わせて笑ってしまう。
克己の母親の再婚相手の息子なんだからどうしたってこんなとこにいていいはずがない。
尾崎が克己のベッドの端に腰かけて克巳の髪を撫でる。尾崎の大きな手が気持ちいい。
撫でられる手にすりと自分からも擦りつけた。
恥ずかしい事も言うけれど、こうやって黙って優しい事もしてくれる。克巳に必要な事を分かっているみたいにだ。言葉がないと不安に思うのも恥ずかしいが本当なんだ。なにしろ自分は人とは違うから。それを尾崎は分かっているのか克巳を安心させるように言葉を与えてくれる。
行き過ぎで恥ずかしいのはわざとな気もするが。
だからといって嘘ではないのもわかっているつもりだ。
「部屋までお連れします…なんて、俺が離れたくなかっただけなんですけど」
「それを言ったら俺も…だ」
「…よかった」
ほっとしたように尾崎が笑みを浮かべる。
「…当たり前だろ」
本当はもっと一緒にいたい、と思う。昨日のように尾崎の腕の中で安心して眠りたい。気持ちよすぎるくらいに寝られる。
守られていると思うのか、ぐっすりと眠っている気がする。
そういえば一番初めて連れて行かれた日から眠ってしまったんだった。
くっと克巳が思い出して笑うと尾崎が不思議そうな顔をした。
「何を思い出したんです?」
「ん?初めて連れて行かれた日から尾崎のそばで寝てたな、と思って」
「ああ…俺は驚きましたけど。あれ?と思ったら寝てましたからね」
「尾崎の傍は気持ちいいらしい」
「それは光栄です」
仰々しく尾崎が答える。
「誰か人がいて寝るなんて初めてだった。しかもぐっすり」
「揺すっても起きませんでしたからねぇ。仕方なくベッドまで運んで、それでも起きなかった」
「ベッド運ばれたら起きないな。あそこは尾崎の匂いがするし」
「…また可愛い事を」
尾崎がそっと顔を近づけてきてキスする。何度も啄ばむように。確かめるようにだ。
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