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追憶の彼方から放されたい 88

 そんな事をされてしまえばもう体は熱を出したいと訴えてくる。
 「お、ざき…」
 はぁ、と克巳が熱い息を漏らすと尾崎はついと克巳の体を離した。
 「尾崎?」
 「ダメ。本当は克巳のだけでもしてあげたい所なんですけど」
 「…時間ないんだったな」
 しゅんとすると尾崎が克巳の頭にキスした。

 「それもありますけど、お仕置きですから」
 「お仕置き…?」
 「そう」
 尾崎が意地悪そうな顔をして頷いた。
 「悪い子にはお仕置きでしょう」
 悪い子?何が?
 何かしただろうか?と克巳は首を捻った。すると尾崎は複雑そうな顔で苦笑を浮かべ克巳から離れると着替えを始めた。

 「寝てるのか…?シャワーは?」
 「ほんの少し仮眠だけはしましたよ」
 尾崎の均整の取れた男らしい裸体が朝日の中に浮かび上がり克巳はじっと見入ってしまう。
 「ぁ…」
 小さく声を上げたのは尾崎の前が勃ち上がっていたからだ。

 欲しいと…尾崎も思ってくれたのだろうか、と思うとさらに克巳まで下半身が熱くなってきてしまう。
 尾崎の熱くなっているアレが克巳の中を犯すんだ。体が疼きそうになるなんて…恥ずかしいと尾崎から目線を外し顔を俯けた。
 「…なに?欲しくなった?」
 尾崎がくすりと笑ってそんな事を言ってくる。
 「…尾崎…?」

 どこか酷薄そうな表情…。
 くそ!と尾崎が短く言葉を吐き出して壁をガンと叩いた。
 隣の部屋側じゃなくて窓の方の壁だ。
 そんな苛立ったような尾崎に克巳はびくんと体を竦ませた。
 何かに怒ってる…?
 尾崎ははぁと自分を落ち着かせる為にか髪をかき上げて息を吐き出しそして着替えを済ませた。

 「…克巳は帰る?」
 「え…と…」
 何に尾崎は苛立っていうのだろうか?克巳は尾崎の顔を窺う様に見た。
 「いるならいてもいいですけど。出かける時と帰る時は必ず電話を入れて下さい。俺が電話に出なくても留守禄にはなるので入れておいて。いいですね。必ず、ですよ」
 「……わ、かった」

 「何かあればすぐに電話。……そう言ってましたよね?」
 「……う、ん…」
 尾崎が怖い位の勢いで克巳の肩を掴みながら真摯な瞳でそう言い諭してきた。
 そしてまたやるせないような表情を克巳に見せると軽くキスしてくる。
 「……尾崎…?」
 どうして尾崎は苦渋を飲み込んだような表情をする…?

 聞きたくても自分も言えない事を抱えている克巳はどうしても聞けなかった。
 「…じゃ行ってきますね」
 「…いってらっしゃい…」
 それ以上何も克巳には言えなくてそのままベッドから尾崎を見送った。
 もしかして尾崎は何かを知っているのだろうか…?
 それとも何かあった…?

 だって話せないじゃないか。刑事になりたかったと、尾崎は言ったんだ。その尾崎を辞めさせるような事に自分はさせたくない。
 だからといってこのままでいいはずもないのだが…。
 誰にも相談できる相手もいない。
 唯くんはまだ高校生だ。光流くんだって大人びていても唯くんと同じ高校生。武川刑事はやはり警察関係だし…。父親にだって迷惑になるかもしれない。

 自分でどうにかとするいってもどうしたらいいのかなんて皆目見当もつかないのだ。
 だからといって克巳が自分を好きにさせて尾崎が喜ぶはずもないとも分かっている。
 尾崎の為といってそうなってないのも分かっている。
 「…けど…じゃあどうしたら…」
 尾崎のベッドの中で克巳は丸く体を丸めた。

 何かあんな裏取引のような事の証拠になるようなものでもあればいいのだろうか…?でもそんなの握りつぶされておしまいな気もする。何しろ相手は政界と警察がツルんでいるのだ。
 警察の上に立つ者があんなヤツなのか…。

 触られた感触を思い出せばぞわりと悪寒が背中を伝う。尾崎にならいくらでも触れて欲しいのに。自分から望めるのに相手が違うだけでこんなに違うものなのか。
 改めて自分の中の尾崎の存在について認識を新たにする。

 しかし…どこか苦しそうな尾崎のさっきの表情に克巳の中に不安が走る。何を考えてどう思って尾崎はあんな表情をしたのだろうか…?
 それでも嫌われたわけではない、というのは身体に残された赤黒い鬱血の痕でよく分かる。
 お仕置きだと…言っていたが何に対してのお仕置きなのだろうか…?

 「…もしかして知ってる…?」
 克巳が昨日…あの店に行った事を…?だから身体を点検するような行動をした…?
 だが尾崎は何も言わなかった。克巳も言えなかった。
 「どうすればいい…?」
 天井を仰ぎ克巳は目元を押さえた。
 
 
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