「尾行は本当にちゃんと撒いて来ただろうね」
「撒いて来た。こいつの携帯も車に置いてきたし」
「それならいい。携帯にGPS入れているからね。なにしろ機密扱いの存在だから」
「へぇ…本当にそうなんだ?テレビに売った方よかったかな」
「バカを言うな!勿体無い!そんなに言うならビデオを後で送ってやってもいいぞ?外国に飛ぶ気だろう?それならそっちで売ればいい。私の身の保障も危ないからな」
「あ、そういうコトなら。じゃちょっとばかり見学させてもらおうか…売れるようなモノじゃないと困るんで」
「早くトンズラした方がいいんじゃないかい?」
「いや、だってここ誰にも知られてないんでしょう?尾行も撒いてきたしほんのちょっとなら大丈夫でしょう」
「まぁ、ここは私の息子の名義だしまだ正式に契約はしていないから」
副総監は雅彦と話していた顔をニヤニヤしながら克巳の方に向けた。
「ベッドもなくてすまないね」
「男の何がいいんだか…」
雅彦も克巳をじっと見て克巳はじりとあとじさる。
「痛い事はしないからね…おいで」
副総監がいやらしい笑みを浮べながら克巳に向かって手を差し出してきて克巳はふるふると首を横に振る。
「…いやだ」
「二課の尾崎と言ったっけ?あの男がどうなってもいい?君の相手は彼だろう?何も傷つけるつもりもないし君は気持ちよくなってればいいだけだ」
ぶるぶると克巳は怖気をさせながら首を振り続ける。
…気持ち悪い。
「ほら…来なさい」
ぬっと手を克巳の前に差し出してきて克巳の腕を捕まえようとしたのを克巳はぱしっとその手を叩いて振り払った。
「逆らう気か?」
途端に今までにたにたと締りのない顔をしていた副総監の顔に怒気が浮かんだ。
「いやだ!触るな!」
「そんな事今更だろう?君は買われたんだ。はした金でね」
「こいつに売られる筋合いはない」
雅彦の方を睨みつける。
「叔父さんは親戚が困っているのに手助けもしてくれないんだ。だったら息子のお前がしてくれたっていいだろう?」
「そんな事する義理なんかない!」
じりじりと二人に追い詰められ背中がどんとドアにぶつかる。
「逃げるなよ?」
雅彦がスーツの下から拳銃を取り出し克巳に向けた。
「撃つのはやめてくれよ?」
くすくすと副総監が楽しそうに笑っている。
「警察…なのに…」
本当なら雅彦を捕まえなきゃいけない側だろうに。堂々と犯罪者側に回っているなんて。
「佐竹くん、捕まえてこっちに連れてきて。ビデオのセットしないと」
「やめろっ」
雅彦が拳銃をつきつけながら克巳の腕を引っ張った。
掴まれた腕を克巳は振り回す。
「離せ!」
「うるせぇ!」
がつっと額に衝撃が走った。
「うっ」
「こら!傷は作っちゃだめだと言ってるだろう!」
「すみません!暴れたんで」
衝撃でくらりとした身体を引きずるようにされ部屋の中央まで連れてこられた。部屋にあるのはセットされた三脚とビデオだ。その前にどんと克巳は身体を押されて倒れ掛かった。
「ちょっと押さえて。傷はつけるなよ?」
ずっと副総監の顔は締まりなく緩んでいる。
気持ち悪い…。
「やめろ!離せ!」
「男にヤられてるんだろう?別に今更いいだろうが?」
雅彦が克巳の身体を羽交い絞めして自由を奪いながら好色そうな目で克巳を見る。
克巳は逃れようと手を振り回したが後ろから肩を押さえ込まれて自由にならない。
「恐怖に歪むいい顔だ」
副総監の満足そうな顔にぞっとする。こんなのが警察…?こんなのの下で尾崎は真面目に働いているのか?
いや…こんなのだけじゃない。光流くんのお父さんみたいな人だっているんだから…。
上半身を雅彦に押さえられ、足をばたつけせてどうにか押さえ込まれたからだを抜け出そうとするがもう一度こめかみの辺りを殴られた。
「おとなしくしてろっ!」
「傷つけるなと言ってるのに…」
はぁ、と副総監が溜息をつきながらゆっくりと克巳に近づいてきてくらりとしてしまった克巳がくっと痛みに耐えている間に馬乗りになられた。
「やめろっ!!」
はっとして声をあげるが克巳よりもずっと恰幅のいい身体に乗られてさらに自由が利かなくなる。
「おとなしくしなさい」
どこから出したのか副総監の手にはナイフが握られていた。
「傷つけられたくないだろう?」
ぴたりと顔にナイフが当てられた。頬に金属の冷たさを感じる。
「おとなしくしてないとどこかを傷つけてしまうかもね…」
人となんとも思っていない冷たい目をむけられぞっとした。
「脱がせやすい服だったらこんな事もしないんだけどねぇ。まぁこれもこれで楽しそうだ。
くっと薄気味悪い笑みを浮べながら克巳のTシャツをナイフで裂いていった。
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