「おやおや」
「はっ!この間もべったりつけてやがったがまたかよ!なんだスキモノじゃないか!」
くっと克巳は羞恥に顔を背けた。
尾崎につけられたキスマークが服の下に無数あるのは勿論知っている。
薄くなりかかっているものもあるがまだそれでもはっきり残っているものも多数だった。
痛い位に吸われた痕だ。
Tシャツを切られ上半身を曝け出される。
「怖いかね?震えている…」
くっくっと克巳の上に乗った薄汚いヤツをぎっと克巳は睨んだ。
ナイフを翳され自由にならないからだがもどかしい。
「おとなしくしていれば傷つけないよ?」
猫なで声が気色悪い。もうずっとさっきから悪寒がして鳥肌が立っている。
さらりと身体を撫でられればびくりと身体が震えた。
「敏感な身体らしい。思ったとおりに白くて綺麗な肌だ。…余計なものはいっぱいつけているようだが…」
「やめ…っ」
気持ち悪くて吐きそうだ。
身体を撫でられたその場所から身体が腐食していきそうな感覚に陥ってくる。
「下もこんな感じなのかねぇ?見た限りではスカした男だと思っていたが随分と情熱的な男らしいな」
ゆっくりと身体をさわさわと撫で付けられぐっとえづきそうになる。
克巳は顔を歪め唇を噛み締めやりすごす。
「男の体見たってなんとも思わないと思ってたけど…ちょっと…いや、かなりこれはエロいな…」
雅彦が後ろから呟いている。
ナイフを克巳に向けたまま克巳を押さえ込んでいた野朗が片手を克巳のベルトに手をかけた。器用に片手で克巳のベルトを外し、そしてジッパーの下げられる音が部屋に響く。
嫌だ!
尾崎以外の手は気持ち悪いだけだ。バカ!早く来い!と心の中で克巳は尾崎に毒ついた。
どうすればいい?前にはナイフ、後ろに拳銃、自分は裸。
最悪じゃないか。
ヤられたら尾崎に嫌われるだろうか…?
肌を触られるだけでも気持ち悪いのにあんなとこに尾崎以外のモノを突っ込まれたら死んでしまいたくなる。
穿いていたカーゴパンツの前を緩められ手をかけられ、下げられる、と思った時克巳の上に乗っているヤツが手を止めた。
「どうかしましたか?」
雅彦が不思議そうな声を出した。
「……来たようだ」
「え!?」
…もしかして尾崎か!?
「立て!」
雅彦が真っ青な顔で焦りを前面に出し克巳の身体を起こそうとした。ナイフを突きつけていた副総監はくっくっと笑い出し克巳の上から退いた。
「ここは知られないと!」
「警察は優秀だったらしいな」
副総監は諦めたのかただ笑いを漏らすだけだ。
ドアががちゃがちゃと音を立てている。
警察だ、という声も多数聞こえてきた。
尾崎の声が混じっているのか克巳には判別はつかなかったがそれでもとりあえず危機は脱出しただろうか?と幾分気が抜けそうになったが、雅彦の腕は松見を離さず、克巳の身体を捕まえ、こめかみに拳銃をつきつけてきた。
ドアが開けられるのがスローモーションのようにゆっくりに感じる。
「動くな!」
声を上げたのは雅彦だった。
ドアから乱入してきた無数の刑事だろう人達の動きが一斉に止まった。
尾崎っ!
拳銃をそれぞれ手に入ってきた刑事が視線を鋭く中の状況に向けられる。
尾崎は声を上げる事もなく銀縁の眼鏡の下から克巳を真っ直ぐに見た。
そして切り刻まれたTシャツの残骸に眉を顰め、さらに拳銃を突きつけられた状況に渋面を浮べていた。
「令状だ!諦めろ!」
「うるさいっ!黙れ!こいつがどうなってもいいのか?」
かちりと安全装置を外す音が部屋に不気味に響いた。
かたかたと雅彦の手が震えている。克巳の心臓も音が聞こえるんじゃないかという位にどくどくと鳴っている。
そんな中でも尾崎と絡めた視線は外れない。尾崎から目を離せば終わりという気がしていた。その尾崎が克巳の目を見ながら視線をちょっと落とす。
他の刑事と同じように拳銃を構えていた尾崎だが、くっとほんの少しだけ腕を動かしてそして克巳をじっと見た。
拳銃がつきつけられてはいるけど克巳の腕は自由だ。
目線を横にいる雅彦にちらと向けてから尾崎を見ると小さく尾崎が頷いた。
腕を雅彦に食らわせろ、って事か?
目で問うと尾崎がもう一時小さく頷く。頷いて見えるのは克巳にだけだろう小さな動きだ。
雅彦の手がぶるぶると震えているのが分かる。
「コイツがどうなってもいいのか!?拳銃を捨てろっ!」
雅彦が大きく喚いた。
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