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追憶の彼方から放されたい 117

 キスしながら舌を絡め唾液を交わらせる。
 どこもかしこも克巳の身体が悦んでいる気がする。そして心が苦しい。
 「お、ざきぃ…」
 「もどかしそうですね…」
 尾崎がくっと笑い、そして克巳の腰を片手で抱くと足を立て腰を下から打ちつけてきた。

 「あ、ああ、んっ」
 びくっと克巳が腰を反らせようとするが尾崎の腕がしっかりと華奢な克巳の腰を押さえている。
 「…克巳…いい?」
 「んッ!」
 深く尾崎の屹立が克巳の中を衝いてくる。
 「くっ…」
 尾崎も短く声を上げた。

 「食いちぎられそうだ…克巳も動いて」
 動いてと言われても…。
 「ん…ふぅ…」
 身体から力が抜けそうだ。
 「克巳?ギブ?」

 「だめ、だ…アンタはおとなしく、して…あ、ぁッ」
 くっと尾崎が楽しそうに笑みを浮べながら下から衝かれ声があがる。
 「前もぬるぬるにして…すぐにイきそうだな…?」
 「ん…だって…」
 尾崎の身体が熱い気がする。もしかして熱が出ているんじゃないだろうかとはっとした。

 「あ…尾崎…?身体…熱…?」
 「ん?ああ…平気だ。それより克巳の中の方が熱いし早く出したいんだけど?このまま放置なんてしないでくださいよ?」
 「ん…あぁっ…」
 尾崎がキスして克巳の舌を貪るように絡めながらさらに下から衝いてくる。克巳もそれに合わせるように腰を揺らした。
 「上手いな…もう出そうだ」
 「ん…お、れも…早く…」

 ぐちぐちと繋がっている箇所からいやらしい音が聞こえる。尾崎も怪我をしてるのに、自分から跨って腰を揺らしてなんていやらしいんだろうと思いながらも我慢なんて出来そうになかった。
 「は、やく…っ…」
 尾崎の額に汗が浮かんできてその額を手で拭った。やっぱり熱い。
 「克巳…」 
 「んんっ…くっ…」

 早くときゅっと克巳が後ろを締めると尾崎が克巳の腰を押さえてぐっと奥まで突き刺し、克巳は一際声を高くあげると喉を仰け反らせた。
 ひくひくと身体が震え、そして力が抜けそうになるけれど尾崎の身体に被さるわけにはいかないとどうにか堪える。
 「ん…はぁ…あ…しまった…」
 荒い息で自分が尾崎の身体に放ってしまった白濁に慌てた。尾崎にはゴムをつけたのに自分にはつけてなかったから尾崎の腹の上に浴びせてしまった。

 慌てて尾崎の上から退こうとしたが尾崎の手が離してくれない。
 「いいですよ。そのままで」
 「んなわけにいかないだろ!包帯までは…かからな、かった…みたいで…よかった…けど…」
 恥ずかしすぎる。 
 「包帯にもつけて欲しかったな…」
 「ばか!」

 尾崎の包帯は肩から胸まで厳重に巻かれていたけれど、どうにかそこまでは克巳の吐き出した精液は飛んでなくてほっとする。
 「離せ」
 「やだな…。くそ…怪我してなかったら夜通しするのに…全然足らない」
 「ダメだ。熱…あるだろう?身体が熱い。…ごめん…俺が…」
 熱まであるのに尾崎に無理させたと落ち着いてきた呼吸と身体と頭の中で反省する。

 「俺は全然足りないですけどね」
 克巳は尾崎の手を離させてそっと身体をずらす。
 「ん…っ」
 ずるりと尾崎が抜ける感覚に声を漏らすと尾崎がはぁと溜息を吐き出した。
 「…やっぱ全然足りない」

 「いいから…怪我治るまでだめだ」
 「…克巳が乗ってきたのに…」
 「そ、そう…だけど…」
 「嘘ですよ…。嬉しかった。そんなにしたいと思ってくれてたんだと思って」
 「あ、コラ!おとなしくしてろ。…俺がするっ」
 尾崎が後始末をしようとして動こうとするのを制止し、克巳はティッシュを手に自分の放ってしまったものや尾崎のゴムも外していく。 

 「…身体拭こうか?シャワーもできないし…」
 「…そうですね。頼んでもいい?」
 「ん」
 克巳でもできることがあるとなればちょっと嬉しい。怪我させた上に我儘でついてきてさらに面倒をかける事になったらとんでもない事だけど、尾崎は腕が自由にならないからその分克巳がしてやれる事を増えるのは嬉しい事だ。

 「シャツ貸して」
 「どうぞ」
 何も着ないのもちょっと…と尾崎のクローゼットから勝手にシャツを取り出して羽織り風呂場からタオルと洗面用の桶にお湯を張って運んで来ると尾崎の身体を清拭していく。
 「ありがとう」

 尾崎の身体を前に赤面し、視線を泳がせながら清拭してると尾崎が穏やかな声で礼を言ってきて克巳は首を横に振った。
 「俺の方こそ…助けてくれてありがとう」
 「助けるのは当然でしょ」
 拭くのを終え、下を穿かせるのを手伝い安堵したところで尾崎が克巳の頭を怪我してない方の腕で抱え込んで来た。

 「克巳が無事で本当によかった…」
 「ん…ありがとう」
 尾崎の声が克巳の身体に染みこんでくるように感じた。
 
 
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