前ボタンのシャツを尾崎にそっと腕をなるべく動かさないようにしながら着せればほっとして買ってもらった惣菜を食べ尾崎に薬を飲ませた。
「甲斐甲斐しいですね」
尾崎は微笑ましいと言わんばかりの優しい視線で克巳を見ているがそれが恥ずかしい。
「いいから!あと寝て。あ、熱のシート…あるよな?」
「ああ…克巳に買ってきたの残ってるはず。冷蔵庫のポケットのとこ」
冷蔵庫から取り出し、尾崎をベッドに寝せて額に貼り付けた。
「…髪は熱下がったら明日にでも洗ってやる」
「…お願いします」
くすくすと尾崎が笑っている。
克巳は兄弟がいたわけでもないし誰かを看病するとかもした事がなかったから世話をやけるのが楽しくなってきた。
おとなしく尾崎が言う事をきいてベッドに横になっている。
「克巳も早いけど寝ましょう?今日は疲れたでしょう?戸締りとか電気もお願いしても?」
「ん」
克巳はいそいそと戸締りを確認してリビングなどの電気を消してくる。克巳が楽しんでいる事を尾崎も分かって頼んでるのだろうが、それも頼られているみたいで嬉しい。
「してきた」
のそりと尾崎のベッドにあがり、怪我してない方の尾崎の右側に陣取る。
「俺…来て…よかった…?」
「……まだ気にしてたんですか?だからそれは克巳がダメと言ったんじゃなくて俺がキレそうだったからダメって言っただけだったのに…。来てくれてよかったと思ってますよ?」
「……本当に…尾崎が嫌だ、ダメだ…って時以外は…ダメって言うな…」
小さく克巳が抗議すると尾崎が克巳の頭を抱き寄せた。
「言いません」
「ん…。前も言ったけど…尾崎になら何されても別にいい。だけど…拒否されるのは…キツい」
「ごめんね」
尾崎が克巳の髪やこめかみにキスしてくる。
「うーん…体勢がキツいな…自由きかないってしんどい…。本当はもっと克巳にイタズラしたいのに」
「だめだ。寝るの。身体熱いな…しんどい?」
「でもないですけどね。傷の所為の熱だろうし」
克巳は自分から尾崎の胸にしがみつくようにした。
「……いっぱい言いたい事抱えて腸が煮えくり返っていたんだけど…克巳に全部毒気を持ってかれた感じだな…風呂場でのやらしい克巳と自分から乗っかってくれた克巳に全部持ってかれたかな…」
「ばっ…な、に…言って」
「いえ、マジで。俺が怪我しててよかったかも。じゃなかったら克巳を傷つけてたかも…って位に自制が利いてなかった。だから病院でもついあんな事言って…。克巳がそれでも行くって言ってくれてよかった」
「…俺はただ尾崎とこうやってるだけでも…安心するし…」
「すみません。俺はこれだけじゃ全然足りないです」
「傷!治ったら!」
「………治りが悪くなるので無茶しないようにします」
「そうしろ」
「克巳も心配するしね?」
「…当たり前だ」
「ああ…でもホント…今日の克巳のエロさにはくらくらしちゃいました。もしかしてそれで熱出たんじゃないかな?」
「んなわけないだろ!もう寝る」
「はいはい」
ずっと尾崎は克巳をからかって遊んでいるので克巳は有無を言わさず寝室の電気を消した。
「克巳…何があっても助けます。どんな事をしたって…キミがいないと俺は自分が壊れそうな気がする位で…だから克巳も無茶はしないようにしてください。…愛してる」
かぁっとして顔が絶対真っ赤になってる!と思ったが暗い部屋では尾崎には見られないのにほっとする。
「お、れ…も……。ちゃんと自分から父さんに言う…から…俺が一緒にいたいのは尾崎だけだ、って」
「……その時俺も呼んでもらってもいい?そうしたら克巳くんを下さいって掻っ攫ってこれそう」
「そ、そ、…それ…って」
「プロポーズって事で」
「ば…っ」
自分なんか人と違うのに、男なのに、何も出来ないのに…それでもいいのだろうか…?
「克巳?返事は?」
「俺…なんかでいいのか…?」
「克巳だけがいいんだけど。好きも愛してるも克巳以外に言った事ないですよ?」
「そう…なのか?」
「そう」
しんとした暗闇で静かな会話だけが聞こえる。
「…何もできないけど…出来るように頑張る…俺なんかで…尾崎がいいなら…」
「いいに決まってるでしょ。それとなんかなんて言わない様に。俺の方こそキミに釣り合ってないのに」
「どうして?」
「は?キミは江村代議士の息子さんでそれこそどこかの良家のお嬢さんを嫁に貰ってもおかしくないのに…」
「そんなのいらないからいい。それに父は父だし俺は俺だ」
「…そういう所が好きですよ」
そういう所がどういう所が自分では全然分からないが、尾崎がそう言うならそれでいい。
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