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追憶の彼方から放されたい 141

 下半身だけシャワーで流してベッドに戻り尾崎の厚い胸にそっと手を添える。
 「……もっともっとイタしたいんですけど」
 「ダメだ」
 「…つれない」
 そういう問題じゃないだろ、と尾崎をちろりと睨むと尾崎が小さく嘆息する。

 「全然足りない」
 「そんな事言われたって仕方ないだろ。…怪我早く治せ」
 「……はい。治ったら克巳が動けなくなるまでしますからね」
 「……治ったら、な…」
 かっとしながら克巳も小さく頷けば尾崎が右腕でぎゅっと克巳を抱きしめる。

 克巳だってまだ体に熱が燻っている感じがする。火照った身体を鎮めるにはどうしたらいいのだろうか…?
 そう思いながら尾崎の胸に手を這わせ甘えるように頭をこすり付ける。
 「克巳…ダメ…」
 尾崎が声を掠らせればまだ熱の籠もった身体はそれだけで疼きそうだ。
 「…雅彦はどうなった?」

 熱を逃がす為、意識を逸らす為に聞いてみる。勿論気になっていたのも本当なのだが…。
 「今は余罪について追求ですね。色々やってたみたいで呆れる位です」
 「なぁ…雅彦は自業自得だからいいけど…あの日、尾崎と西岡さんの事とかはどうなっているんだ…?」
 「克巳が関与してる所は不問ですよ。克巳は何も関係なかった事になってますからね。表向きは」
 「…そうなのか?」
 「そうです。じゃなかったら証拠人として克巳だって行かないと。俺の事も勿論不問。あそこにいたのは梶原ですから」

 そういう事になっているのか…。
 「……色々と不透明なところが多すぎる件になってますけど…。一番はその先の繋がりの事ですね。申し訳ないと思いますけど…」
 「俺は別にいい。俺はいいんだけど…尾崎の事が…」
 「俺も克巳が無事で幸せだったらそれでいいんです」
 尾崎の静かな声が克巳の耳にくすぐったく響く。

 「ただね…折角一緒に一緒にいられるのになんで怪我してるかな…とは思いますけど。こうしてる今だって全然足りないのに」
 「……治ればこれから先も一緒なんだから」
 克巳は尾崎に向かって言いながら自分にも言い聞かせているのだ。
 「そうなんですけどね…。克巳も足らないでしょ?」
 「…うるさい」

 克巳が否定しなければ尾崎がくっと笑って克巳の頭にキスした。
 「…可愛い。治ったら克巳がもう許してって言う位したげますね」
 「…そんなにいらない」
 くっくっと尾崎の笑う声が耳に身体に響いてくるが、笑っても傷に響くことがなくなったのか顔を顰める事をしなくなった尾崎に克巳はほっとした。

 「傷…大丈夫か…?」
 「大丈夫です。問題なしですよ。克巳が協力的ですからね」
 「…イチイチうるさい」
 くっくっと尾崎が楽しそうだ。
 「…なぁ…本当に…こんな…急に一緒に住むとか…尾崎はよかったのか?」

 父親が勝手に押し進めた感じで強制的な気もするが…。克巳はもちろんこんな風に夜を尾崎のそばで過ごせるのは安心できるからいいのだが…。
 「いいですよ?ただ…克巳を嫁に貰ったというよりかは婿になった気分ですね」
 「ばかっ」
 克巳が小さく抗議すると尾崎がはっと声を出して笑う。

 「それでも全然。克巳が満足そうにしてるのを見られるのは嬉しいからね。最初のほうなんか克巳は全然表情もなくて…。それに比べたら今はもう可愛すぎる位ですから。今日も唯くんと一緒に料理とか、楽しかった?」
 「……ん。誰かが遊びに来るとかも…初めてだから…」
 はぁ、と尾崎が溜息を吐き出す。
 「困った…」
 何が?と克巳が尾崎を見た。

 「やることなすこと可愛すぎ」
 尾崎が軽く克巳にキスする。
 「友人として唯くんはいいです。武川さんもいるしね。でも誰にでも愛想は振りまかないように」
 「…そんな事しないけど?」
 「基本はそうでしょうけど…心配だな…。山口もねヤバイを連呼ですよ」
 「?」

 「克巳はちゃんと男の子なんですけど…人を惹きつける位に綺麗だから。雰囲気も柔らかくなったしね…前は壁があったのに」
 「今だって基本は変わらないと思うけど…ただ、こんな風に尾崎とゆっくりしてる時間とかは幸せだ…と…思う」
 こんな事を口にするのもちょっと恥かしいなと思いながら小さい声で言えば尾崎がまた溜息を吐き出した。
 「あんまり煽らないでください」

 「煽ってなんかない」
 こんな風に言葉の応酬だけでも楽しいのだ。
 「勝手に俺が煽られてるだけですけどね」
 そしてまた軽くキスを交わすのが幸せだ。
 
 
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