ライオン
駅を降りて歩きながら色々聞いてもいいのだろうか?と思いつつ獅王はきょろきょろと視線を彷徨わせる。根掘り葉掘り聞いたら詮索好きって思われるだろうか?それでも基本的な事は聞いておきたい。
「あの…年…いくつですか?」
「26。獅王くんは18?19?……8歳も違ったら…オジサンじゃない?」
「全然!」
26!見えないし!大学出てすぐ位の年かと思ったらちょっと上だったらしいけどそれでもマイナスになんか思えない。
「誕生日は?」
「誕生日?」
くすっと雪兎さんが笑う。
「冬だよ?2月10日。獅王くんは?」
「俺はもう過ぎてる。過ぎたばっかだけど…10月15日」
「そうなんだ…?じゃあ今は7歳違いか」
「…年は関係ないです」
可愛いし。
そう?と雪兎さんが獅王の方を見上げてくすりと笑うその顔をもの欲しそうに眺めてしまいそうで獅王は視線を雪兎から外して前に向けた。
…なんか…我慢きかなさそうでヤバイ気がする。
…なんか…誘われてる?って気になってくるんだけど…。
電車の中でも半開きになった口元とか、身体預けてきたりとか、伏せられた睫毛が震えてるとか、上目遣いの濡れた瞳とか。
いや…ちょっと人に酔ったみたいで具合悪かっただけでそれに勝手に自分が煽られてるだけだ。
…だって綺麗で可愛いんだもん!
日本人形のような雪兎さんにずっと視線が吸いつけられる。なんだろ…外見はどうであれ自分は日本人だと思ってるのに自分の中の外国の血が騒ぐのだろうか?
溜息を吐きたくなってしまう。
でもまだ付き合ってもらえるなんて信じられない位だけど…。
かなりな年下か…。
外見だけだったらスーツ着てもおかしくない位の自信があるけど、雪兎さんは社会人だし見た目はどうであれ年齢差が埋まるはずない。ガキくさいような事をしないようにしないと。
「獅王くん、こっち」
道路を曲がって雪兎さんについていくとマンションのエントランスに入る雪兎さんの後ろを追いかけた。
名前もウサギとか、可愛すぎる。
自分がライオンだから…ウサギ食べちゃっていいのだろうか?なんてバカな事を考えながら華奢な雪兎さんの背中を追いかけた。
「ここの5階の角部屋」
しっかり場所を覚えて獅王は頷いた。
司書って給料いいのだろうか…?一人暮らしでマンションなんて。
そんな詮索はしちゃいけないだろうけど。なにしろまだ今日から付き合いを始めたばかりなんだから…。雪兎さんの事は何も知らないんだからゆっくりと知っていけばいい。
エレベーターで5階まで上がり案内されて玄関を開け、電気をつけた雪兎さんの部屋に入った。
「適当に座ってていいよ」
雪兎さんがコートと上着を脱ぎ、ネクタイに指をかけて外す。
そのネクタイを自分が外したい、…とか思っちゃったのは内緒だ。どうにも…ストイックで清楚に見えるのにどこもかしこもエロく見えてしまうのは欲求不満なのだろうか…?
「何か飲む?…あ、未成年か…」
「酒でもいいですけど。どうせ飲んでも酔わないし」
「酔わない?」
「そうなんです。ザルみたいで」
「……羨ましいな。俺はすぐ顔に出るから」
「雪兎さんは色白いし顔赤くなりそうですね」
「……なるけど」
むぅっと拗ねたような表情をするのが可愛い。
けっこう広いリビングのソファにいいのかな?と思いつつ腰掛ける。落ち着かないのはまだ落ち着かないんだけど。
そして部屋をそっと窺った。
ワンルームではないらしくベッドは見当たらない。綺麗に整頓された部屋は雪兎さんの性格をも現しているようだ。
物が散乱している事もないし今も脱いだ上着とコートを手に別の部屋にいなくなって、恐らく寝室のクローゼットにでもかけているのだろう。
部屋着に着替えてくるのかと思ったら上はワイシャツのままで下もそのままで戻って来た。
「すぐに何か作るね」
「…手伝いましょうか?」
自分だけが座っているのもなんだな、と思って獅王も立ち上がると雪兎さんが目を見開いた。
「獅王くんは料理するの?」
「…少しなら。うち本当に放任なんで。朝と夜飯はまぁ作ってくれますけど高校の頃とか腹へってそれじゃ間に合わなくて」
くすくすと雪兎さんが笑った。
「背大きいから…いっぱい食べた?今も?」
「わりと今も食べますね」
正直に答えるとまた雪兎さんが目を細めて笑う。
やっぱり綺麗で可愛いなとついじっと雪兎さんに見入ってしまった。
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