ウサギ
気さくに手伝いますと言って立ち上がった獅王くんに悪い印象はない。
外見だけを見ていたら踏ん反り返ってても違和感はない感じなのに気遣いが意外と細やかだ。
「獅王くんは…ハーフ?」
名前は日本人の名前だったけどどう見たって純粋な日本人には見えない。
「いいえ。一応クォーターになるのかなぁ…?でも半分以上外国の血が入ってるかも…。両親がハーフ同士なんですよ。母方の祖母がフランス人で父方の祖母がイギリス人。その祖母二人ともさらにドイツとか北欧の血が入ってるみたいで…ルーツが最早分かりません」
獅王くんの説明に目を瞠る。
「ハーフとハーフ…ってどうなるんだろう?」
「だからね…多分5分の3位外国の血かな…?」
「5分の3!」
その表現にくすっと笑ってしまった。
「綺麗な目の色だよね」
くいと獅王くんの頬を手で挟んで顔を自分の方に向かせるとその目を覗き込んだ。
「…そう…ですか…?」
雪兎がこくりと頷くと獅王くんが間近でじっと雪兎を見ていてしっかりと絡んだ視線にいたたまれなくなって手を離す。
どきりとしてしまった。
本当に近くで見てもかっこいいってずるい。
「でも俺自身は日本で生まれたし日本で育ったんで日本人のつもりなんですけど」
「……英語とかは?話せないとか?」
「いえ、一応話せます」
「…そう」
さらに英語まで話せちゃうんだ?その容姿で英語話せませんだったら笑うのに…。
何をしても絵になる彼の姿に目が離せなくて無理やりに雪兎は獅王くんから視線を逸らせた。
それにしても不思議だ。今日の日中までは全然プライヴェートの事など一つも知らなかったのに今こうして雪兎の部屋で隣に立っているなんて。
サラダを作るために野菜をちぎるのを獅王くんに任せて、鶏肉のソテーを作る準備をする。
「ねぇ…?多分…獅王くんが思ってたの印象が…俺のね…違うと思うんだけど?」
いつも言われる事だから自分から先に聞いてみる。どうも人は雪兎に楚々としたイメージでおとなしいイメージを持つらしく、いつも勝手に思ってた印象と違うと言われるので先に牽制した。
「あ~…ですね。でもそのギャップが楽しいというか…あ、失礼ですか?」
伺うように獅王くんが聞いてきて雪兎は目を瞠りながらも首を横に振った。
そんな事言われたのは初めてだった。外見と性格の差に詐欺呼ばわりされた事もあった位なのに。
そこはちょっと嬉しいと思ってしまう。
ぐぅ、と腹ペコライオンのおなかが鳴った。
「あ!すんません!」
慌てる獅王くんにぷっと思わずふき出してしまう。
「早く作ろう」
そうしないと自分の方が食べられそう、なんて言えないけど。
なにしろライオンにとってウサギは獲物だ。いや、食べられちゃっても全然いいんだけど。…とういかどうぞと差し出したい位なんだけど。
まさかそんな事思ってるなんて獅王くんは考えてないのかもしれない。
雪兎だって獅王くんの事はちょっと意外だった。
もっとカッコつけてスカした感じだと思っていたのに。
「参ったな…かっこつけてたいのに…」
ぶつぶつと獅王くんが恥かしそうにしながら呟けばまたくっと笑ってしまう。
「いつでもカッコイイと思うけど?」
いや今はむしろ可愛いかも…と思えばまた顔が緩んでしまう。
でも少しばかり警戒が必要か…。自分が夢中になったらいけないから。遊びで付き合う位でいいんだ。特にノーマルの子なんだから。
ん?バイになるのか?何しろ自分に声をかけてきた位じゃ。でも女の子を相手にできるという時点でノーマルもバイも雪兎の中では同じカテゴリに入る。最終的に捨てられるのは男である自分だ。
だから…ちゃんと約束させないと。
「ごめんね?簡単なものばかりで」
ささっと作った料理をダイニングに並べ終わり獅王くんと向かい合わせに座った。
どうにか獅王くんは落ち着いたらしく、視線が彷徨う事もなくなっていた。
「いえ。全然!かえってすみません…急に…」
「俺の方から誘ったんだからそこは気にしないで。…ワインでもあけようか?」
何しろ相手の事をまだほとんど知らないとはいえ今日からお付き合いを始めるのだから、一応は。
雪兎が前に買っていたワインのボトルを出してくると獅王くんがすらりとそれを雪兎の手から取り上げきゅっとコルク抜きを刺し、ぐりぐりと回すと慣れた手つきでキツいコルクの栓を軽々と抜く。
「…慣れてるね」
「ウチ皆酒好きなもので。皆ザルなんですけど」
獅王くんが苦笑して雪兎も一緒にくすりと笑ってしまう。
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