ライオン
ワインのグラスを合わせてチンと小さく鳴らす。
今日からお付き合いを始めるから…だろうか?
可愛い事をする、とますます熱が上がってきそうになってくる。それにけっこう笑いのツボが緩いらしくくすくすとちょっとした事にも笑ってくれる。
図書館ではいつも表情を見せない位なのに今はこんな近くで色々な顔を見せてくれる。
それに名前も…。穂波さんとしか知らなかったのに今は名前も住んでる所も知って、そして目の前にいて一緒にご飯だなんて信じられない。
やっぱり頬を抓りたくなってしまうけど、それをしたらまたきっと雪兎さんは笑うに決まっている。
浮かれてばかりの気分だったけれど落ち着いてくると告ってすぐにOKしてくれた雪兎さんが何を思ってOKしてくれたのか分からなくなってきた。
それでも部屋にまで連れてきてくれたという事は少しは雪兎さんも自分の事を気にかけてくれていて好意を持っていたのだろうか?
全然図書館ではそんな気なんて微塵も感じなかったが…。
でも勿論OKをもらえるようなら嫌われてはいないと思うし、態度をみても好意的だと分かる。
たまに物欲しそうに自分を見てると思うのは多分自分が勝手にそう思い込んでるだけだと思うけど。
「あのね…いくつか約束して欲しいんだけど?」
雪兎さんが料理を口に運びながらそんな事を言い出した。
「約束?」
獅王は頭を傾げた。
「そう。…嘘はつかない。それに浮気しない。あとは別れたい時ははっきり言う」
「……今日から付き合い始めるっていうのに別れる前提ですか?」
「…前にお互い連絡がなくなって自然消滅という事があって…。俺は待つのは嫌なんだ。だから…」
思わず獅王はむっとしてしまった。
「それに…獅王くんは基本ノーマルでしょ?男の方が好きなわけじゃないよね?」
「……雪兎さんは…もしかして…?」
獅王くんは、と言った。
「…実は…そう。今まで付き合った事ある相手も遊んだのも全部男だよ」
「……」
ちり、と獅王に嫉妬が渦巻く。何人の男が雪兎さんの肌を知っているのだろう…?
口ぶりから一人二人ではないような気配に獅王は眉間に皺を刻んでしまう。
「…もし…気になるとか…嫌だというなら…部屋を出て行ってもいいよ…」
「気にはなりますけど。過去、ですよね?俺に浮気しないと言うなら雪兎さんもしないと約束するんですか?」
「する。勿論」
「…だったらいいです。俺だって女としたことあるし…」
それでも気になるは気になるけれど過去のそれを言っても仕方のない事だ。
雪兎さんは合わせていた目を伏せ、静かにまた食事を進めた。目は伏せていても目元の黒子が獅王を誘惑しているように思えてしまう。
目を伏せて合わせてくれない。
「雪兎さん?」
呼びかけると雪兎さんが顔をゆっくりと上げて獅王の方に視線を向けたがその黒い瞳が微かに揺れて見える。
何かに怯えてる…?
ウサギだから?…いや、まさか違うだろうけど。
「……嫌いになる?それに…話してみても…イメージと違ったんじゃない?」
どこか自虐的な感じの表情で口端をくっと上げた。
「え?ああ…イメージなんて勝手に思っていた事でお互いの事なんて全然知らなかったわけだし。だからといって嫌いになるかっていったらならないでしょ。…雪兎さんこそ…俺見た目でよくチャラく見えるし軽く見られますけど、軽くないですよ?遊びのつもりもないし」
「……そう?」
くすりと笑う雪兎さんは獅王の言う事など信じていなさそうだ。
…なんだろう?どこか危うさも感じる。
「最初は皆そう言うけどね…」
小さく囁かれた言葉にすこしばかりカチンとくる。信じてないって事か?
まぁ…確かに個人的に話した事もないしそれで好きです、付き合ってと言われても信じられないだろうけど…。
「本気ですから。告白から今までの短い間でも大分雪兎さんの印象は変わりましたけど嫌いなとことかないです。むしろ楽しい。次はどんな?って感じでドキドキする。それに…男の人なのにずっと好きで惹かれて…覚悟決めてるんでイメージと違うからってそれだけで嫌いになるほど俺軽くないです。受け入れてくれただけでもう舞い上がりそうだったから…。今日の事はずっと夢だったんじゃないかって思う位に。今もまだ雪兎さんのOKが信じきれない位」
「…俺の方こそ…君みたいにカッコいいこから告白されるなんて思ってもいなかった」
雪兎さんがふわりと雰囲気を柔らめて獅王はほっとした。
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三人の方から名乗りあったのですが…お一人メールお送りしましたが返答ありません。
お心当たりの方はお返事ください^^;
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