ウサギ
最初は真剣にとかそんな事言うけど、結局最終的に捨てられるのは自分なのに…。
それでも付き合うなんてOKしたのはやっぱり自分は寂しいんだろうか?
「……俺はウサギだから…寂しいのも嫌だ」
こうなったら我儘言い放題にしようか?我慢する必要などないか?それで嫌になったらすぐにでも獅王くんは離れていくだろうし、かえってその方がいいかも、と心の中で頷く。
今までずっと捨てられないように気を遣っていたけど上手くいった試しなどないし、それならばいっそ最初から期待しなければいいんだ。
「そうですね…ウサギですもんね」
獅王くんがくすっと笑って頷いた。そんな顔も本当にかっこよくてこんないい男が彼氏とかって…とついじっと獅王くんに見入ってしまう。
「そういえばウサギって性欲強いって話ですよね?」
「…うん。そう、だね…」
獅王くんの言葉にどきりとしてしまう。
もう前の彼と別れて三ヶ月も経って…たまに遊んではいたけれど…身体は確かに飢えている。
「……獅王くん…泊まって…いく?」
雪兎は自分から誘うようにちらりと獅王くんに視線を向けた。
「………いい?雪兎さんがいいなら勿論俺はいいけど」
一瞬目を瞠ってからにっと獅王くんが笑う。
「………いいよ」
何でもないようにしながら雪兎が頷くと獅王くんはじゃ遠慮なくと嬉々として答える。
…本当に?彼は自分を抱く気などあるのだろうか?男の体を抱けるのだろうか?
いや、かえって何日か経ってやっぱり抱くなんて無理ですって言われるより今日の方が傷は浅くなるだろうからその方がいい。
信じて裏切られるのはもうたくさんだ。
だったら最初から期待しなければいいんだ。
獅王くんなんてそれこそ女の子も選び放題だろう。そのうちにきっと男相手に何してるんだろうと気づくに違いない。
本当なら自分は大人だしまだ未成年でノーマルの獅王くんと付き合うのをOKすべきではないのかもかもしれないが少しでもこんなカッコイイ子と付き合ってみたいと欲が働き考える暇もなくOKしてた。
きっとその内に獅王くんも雪兎に対して幻滅するだろう。
もしかしたら泊まると言ったけど今日にだってそうなる確率も高いはずだ。なにしろ自分は男なんだから。興味があるだけなのかもしれないし。
「雪兎さんは一人暮らし長いの?」
「…大学の時からずっと、だね」
「俺位の時からか…俺なんかすっかり甘えちゃってるけど」
「甘えられるならそれでいいんじゃないか?俺はそういう状況でもなかったから…」
「…そうなんだ?」
さらにもっと突っ込んで聞いてくるのかと思ったけれど聞いて来ない獅王くんにほっとした。
「…色々聞きたいし知りたいと思う。けど、急ぎませんから」
獅王くんの言葉にはっとした。
「急がなくてもいい…よね?これからお付き合いするんだから…?」
「…まぁ」
「雪兎さんもなんか俺の事で知りたいとかあったら何でも聞いて?」
「………タメ口」
「ダメ?」
くすりと獅王くんが笑っていて訳もなくイラっとしてくる。
「別に…」
付き合って顔を合わせるのに丁寧な言葉は確かに疲れるからいいんだけどなんとなく獅王くんが慣れていて余裕があるようで面白くはない。
「色々な雪兎さんを見せて?」
「………」
にこりと笑みを浮べる獅王くんはやっぱりタラシだろうと雪兎はちろりと睨んだ。一瞬またどきんとしてしまった雪兎は年下の獅王くんに先導権を渡したくはないと意地を張ってしまいたくなる。
おとなしそうに見られがちだが実はかなり負けん気は強いのだ。売り言葉に買い言葉なんてしょっちゅうでそのせいで大変な目に合った事もある。
それでも負けてなどやるものか、とそれだけが雪兎の意地だった。
人に頼る事もない。今までだって一人で全部乗り越えてきたのだから。
「色々な俺…?じゃあまずはシャワーでも浴びてこようか」
「…え?」
獅王くんがかっと頬を上気させるのを見て雪兎はくすりと笑った。
どうやら今の所はセックスを期待されているらしい様子にちょっと気分はいい。
果たしてあとどれ位獅王くんは保てるのか?
「それとも獅王くんが先の方いいかな…?俺は後片付けしてるから先に使って来ていいよ?」
「…もう?」
「早いほうがよくない?明日俺は仕事があるし、君も学校あるんじゃ?」
「そうですけど…。じゃあお借りします」
獅王くんはもっと悩んでグズるかと思ったけれど心を決めたのか自分の食器を下げそしてバスルームの場所を聞きあっさりと風呂場に消えた。
…本当に?
けしかけた自分の方が信じられない位だ。
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