ウサギ
ぴしゃん…
水音が聞こえてはっと目を覚ました。
「あ、れ…?」
「あ、…目が覚めました?」
雪兎の後ろから声が響き、きょとんとして一瞬どこにいるのか分からなくなる。
どうやら風呂場でお湯の中に入っていて後ろで獅王くんが雪兎の体を抱きしめていたらしい。
「すみません…ヤりすぎだった…」
「…いや…いいけ、ど…」
自分からも散々求めた事は覚えているので責める事など出来ない。
「あと…勝手にお湯張ってました」
「……それも…いい、けど」
すでに体は綺麗にしてくれた後らしい。しかし…と自分の視界に体が見えるとあちこちにキスマークが散らばっている。
ちゅっと後ろから獅王くんが雪兎の耳を食みながらキスしてくる。
くすぐったい。
今までセックスの後にまでこんな甘い事した事がなかった。
「…くすぐったい」
照れくさくてくいと獅王くんの顔を手で押しやる。
しかし腕一つあげるのにもだるい。
「後ろ綺麗にしたけど…大丈夫かな?それと雪兎さんも…大丈夫…?」
「…どうだろう…」
まさか失神するくらいまでなんて思ってもみなかった。
「すみません…自制利かなくて」
「…いいよ」
獅王くんが悪いわけじゃない。自分から浅ましく求めた結果だ。
それに…よかったし。かなり…。
獅王くんの太い腕が雪兎の体を力強く抱きしめている。
顔は知っていてもきちんと向き合ったのは今日が初めてなのに…。
そういえば自分の事を思ってたのと違うとか…獅王くんは思わなかったのだろうか?
嫌じゃないみたいな事は言ってたけど。
だけどこんな状況じゃどうにもいたたまれなくて聞けやしない。
「体温まった?」
「…ん」
一杯のワインと少しのビールだけで酔っていたのだろうか…?
なんか自分もかなり大胆だったようだけど。
「…あっ」
ぐいと獅王くんが雪兎の体を抱き上げると湯船から立ち上がりそのまま脱衣所に行く。
「…立てるかな…?」
そっと濡れた身体を下ろしてもらったけど足腰に力が入らなくてよろけると獅王くんの腕がすぐに雪兎の体を抱きしめた。
「…やっぱ無理か。ごめんね?無理させちゃった。寄りかかってて」
獅王くんに抱きつく形になっているとバスタオルで素早く体を拭いてくれる。
そして拭き終えるとバスローブをちゃんと用意していたらしく着せられ、また雪兎を抱き上げる。自分で…と言いたいところだけどしっかりと歩ける自信もなくてそれに甘える事にするが恥ずかしいは恥ずかしい。
獅王くんの胸に顔を押し付けて自分の顔を見られないようにすると獅王くんはまるで腕の中に閉じ込めるようにますますぎゅっと腕に力を入れた。
「可愛いなぁ…」
小さく獅王くんが呟く声がした。
「え?」
「え?」
雪兎が顔を上げると獅王くんもきょとんとして雪兎を見た。
「あれ…?俺、今声に出てた?」
「…出てた」
「…可愛いって…もしかしてあまり言われるの嫌?」
「………嫌っていうか…言われた事ないけど」
「嘘…?こんなに可愛いのに…って年下の俺から言われても雪兎さんにしたら面白くないかもですけど」
「…別に…獅王くんがそう思ってるなら…いいけど…」
可愛い?どこが?イマイチ…どころじゃなく獅王くんの感覚が分からない。
「くん、って要らないですよ?俺の方年下だし呼び捨てでいいです。どうもくんとかさんとか俺つけられるの苦手で…何でかむず痒くなるっていうか、そんな感じになるから…畏まった感じがするから…かなぁ?」
のほほんとした感じで獅王くんは雪兎を腕に軽々と抱いたままそんな事を言う。
「それに雪兎さんに獅王って呼ばれるの好きだし。くん、なんてつけられるといかにも年下な感じ?」
「…じゃ、獅王にする」
「ん」
嬉しそうに表情を崩す獅王は素直だ。
いっそ自分を隠してばかりいる雪兎には出来ない表情だと思う。
「泊まっていいですか?朝まで雪兎さんを抱いてたいなぁ…」
寝室に向かいながらおねだりするように獅王がそんな事を言って雪兎は少し動揺する。
今まで寝た相手と朝まで一緒なんてほとんどないが…。だからといってダメというのも…まさか言えない。
「獅王がいいなら…いい、…けど」
「やった。あ、シーツぐしゃぐしゃなっちゃったんだけど…?」
「…………替え…クローゼットの引き出し…」
雪兎をベッドの端に座らせると獅王がクローゼットを開けシーツを取り出して交換する。
甲斐甲斐しく動く獅王に雪兎はくすりと笑ってしまった。
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