ウサギ
携帯のアラーム音に雪兎はうっすらと目を開けた。
身体がだるい…風邪か?と一瞬思ったが違う!と目の前にある目を閉じていてさえもかっこいい顔に目を瞠った。
そうだ、昨日…。
獅王は横を向いていて、その腕の中に雪兎を抱え込んでいた。
布団から筋肉のついた広い肩がはみ出している。
「…獅王」
そっと名を呼ぶと獅王の髪と同じように薄い色の睫が揺れた。
眉も生粋の日本人とは違う複雑な色をした薄いブラウンだし、どこを見ても日本人には見えない感じだ。
髪の色も今はいつものように髪を上げていないからか余計に金髪のように見える。
朝の光を浴びたら絶対きらきらして綺麗だろう。
「…ん」
見惚れていると獅王が声を漏らした。
「…起きる時間?」
「俺はね。獅王は寝てるなら寝ててもいいよ」
そっと囁くと獅王がゆっくりと瞼を開いた。するとやはり日本人とは違う色の瞳がじっと雪兎を見た。
「起きる」
ふわ、とあくびを漏らしながらぎゅっと雪兎を抱きしめた。
「おはよう。雪兎さん。身体大丈夫?」
「…大丈夫じゃないかも」
体全体が気だるい。
「うわ、まじ?…すみません…ホント」
「…いいよ」
くすりと笑ってしまう。なにしろ誘ったのは自分だ。獅王はいやらしい身体だと思わなかっただろうか…?
実際飢えていたかのように何度も何度もなんて…初めてなんだけど…。
でもそんな事を聞くことも羞恥があるので出来ず、そろりと獅王の腕を退けようとしたら獅王はかえって力を入れて雪兎の身体を抱きしめで圧し掛かりキスしてきた。
「ん!ダメだ…時間が…」
「キスだけです」
キスだけでも身体が疼くんだ!…なんて言ったらますます引いてしまうだろうか?
「ん…」
キスだけと言いながら獅王は朝から濃厚なキスをしかけてくる。
「あ…ダメ。マジで我慢できなくなっちゃう…」
獅王が苦笑しながら雪兎から離れれば体温が離れた事が少しばかり物足りなくなる。それじゃだめだろ、と雪兎は仄かにキスで上気してしまった顔を獅王から背けてベッドから足を下ろした。
「朝は寒いですね!…というか雪兎さんの身体が…エロ」
はっと自分の身体を見るとキスマークが散らばっている。
「…獅王も服着て。朝ごはんは食べる?食べていくなら用意するけど?」
「…いい?雪兎さんと朝コーヒーしたい」
獅王の表現にふっと笑ってから頷きそそくさと着替えを済ませたが、着替える間もずっと獅王の視線が突き刺さっていた。
あんまり身体も貧弱なんだから見るな、と言いたいのを我慢しながら着替えを終えると獅王がベッドから出てきた。
「おま…裸でどこにいく?」
「え?だって脱衣所に服おきっぱなんです」
けろっとして獅王は立派な身体を惜しげもなく晒して悠々と脱衣所の方に行った。
確かに風呂に入ってそのまま脱ぎっぱなしになっていたけど、バスローブ位羽織ればいいのに。
筋肉の張ったいい身体だった。着やせするのか服を着ているときはそんなに筋肉があるようには思えないのに…。
重いからだを引きずるようにしてキッチンに行くと獅王が洗濯機回しますね、と声をかけてきてお願いする。
雪兎は今日も普通どおりに仕事なんだけどちょっと…身体がかなりだるい。
「あ~…雪兎さん辛そうなんで、座ってて。俺します」
キッチンに戻ってきた獅王が雪兎の背中に手を添えてダイニングに座らせてしまうと自分で動き始めた。
…結構役に立つな、と感心してしまう。
「雪兎さんは?今日の用意とか別にいい?」
「ああ、まぁね。普段どおりだから」
はぁと重い体に溜息が出そうになるのを抑えながら、回る洗濯機の音と充満してきたコーヒーの香りに珍しい朝だな、と不思議に思ってしまう。
自分以外の存在が部屋にあって朝飯というのが不思議だった。
「卵は目玉焼きでいい?半熟?」
「なんでもいい」
何時に家出ます?とか獅王の質問が続き雪兎は気だるくぼうっとした頭のままテーブルに行儀悪く頬杖をついたまま獅王の質問に答えていく。
自分が動かないままで朝食が出てきてコーヒーが出てきて向かいには朝の光の中で金色に髪を光らせる獅王のかっこいい顔。
…悪くない。
なんて思うのは当然だ。
「雪兎さんお昼ってどうしてるんですか?」
「昼?大抵は外に出るけど」
「あ!じゃあお昼一緒しませんか?…それとも…そんなにウザイ?」
恐々と獅王が窺ってくるのにいいよ、と雪兎が答えれば嬉しそうに獅王が笑みを見せた。
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