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ライオンとウサギ 22

ウサギ
 
 はぁ、と溜息を吐き出して館内の時計を見た。
 もうそろそろ13時近くだ。
 獅王は来るだろうか?
 体がだるくて仕方ないけれど、今日はカウンター業務が主だったのでまだいい。これが書庫の整理とかだったら肉体労働で今日は無理だったかもしれない。

 ここの市民図書館は新しくて綺麗で蔵書もたくさんあるし、子供用のスペースがあったりと利用者が多い。
 その中でも獅王が目立って人は視線で追ってしまう。
 背が高くてモデルのような彼だから当然だろうけど。それとも外国人に見えて…?いや、そうじゃない。やっぱりかっこいいから、だ。
 子供をつれたお母さんもぼうっと目で追うのが分かる。

 いつも雪兎は獅王が図書館に来るのを気づかないふりをしていたけれど今日は違う。
 ざわりとした雰囲気に受付カウンターから顔を上げると獅王と目が合った。
 いた、という顔で獅王がふわりと表情を変えると周囲がまたざわりとして獅王を注視しているのが分かった。
 …これはちょっと恥ずかしいような、優越感のような…。
 ゆっくりと長い足で悠々と歩きながらこちらに向かって来た。
 カウンターにはお客さんはちょうど一人しかいなくてそれも手続きを終わった所だった。

 「すぐ出られる?」
 そのお客さんはチラと獅王の方を見ながら離れると獅王はカウンターに手をついて雪兎の方に顔を近づけるとそっと囁いてきた。
 「すぐ行く。…外で待っててもらってもいい?」
 「うん。じゃ入り口の外の…昨日のベンチのとこいますね」
 獅王がにこにこと笑みを見せながら頷きまた出て行った。

 今日は髪を下ろしたままだからかドキっとした。
 それに着替えて来たのか、朝と昨日と服装が違う。
 いつも獅王はお洒落な格好をしているけど…、なんだか今日はさらに煌いて見えるのは気のせいだろうか。
 お昼に行ってきます、とカウンター業務を代わってもらって外に出ると獅王が昨日告白してきたベンチに座って空を眺めていた。

 秋空だけど空気がキンとした感じで冬に向かっていってるのが分かる。
 紅葉で落ちている葉っぱに公園のベンチ…。かっこいいし絵になるなぁ、と少し見惚れてしまう。
 「…お待たせ」
 「雪兎さん!」
 ぱっと獅王が雪兎の声に顔を向ける。

 「どこ行くんです?図書館内のレストランでランチじゃないんだ?」
 「ん…安いとこでもいい?」
 「そりゃ勿論いいですけど!あ、雪兎さんのケー番とメアド教えて下さい」
 「あ、…そうだね。聞いてなかった」
 いつでも図書館で会えると思っていたけれど、獅王が来なければ連絡の取りようがなくなるんだ。
 いや、図書館のデータには獅王の連絡先など載っているか…。

 図書館の裏手にあるさらに細い路地に入った寂れた食堂の前に来ると獅王が目を瞠った。
 「ここ?」
 「そう。安くておいしい。サラリーマンとかタクシーの運転手で混んでるんだけど、学生はわりと少な目なんだ」
 「以外だ!もっとお洒落なランチしてるのかと思ってたら、ランチというより定食?」
 「そう」
 獅王がくすくす笑っている。

 暖簾をくぐるといらっしゃーい、という元気な声。あまり大きな店じゃないし、外から見たら少し雑然とした感じに見えるだろうしで学生は敬遠してるのかもしれない。
 しかも大学からだと向かい側のさらに裏手になるから少し距離もあるように感じるのかもしれない。
 窓際の二人掛けの席が空いていたのでそこに獅王と向かいあわせで座った。

 「俺生姜焼き定食」
 獅王が迷いもせずに店にぶら下がっている定食メニューから即決で決める。
 そこにおばちゃんが水を運んで来た。
 「すみません、生姜焼きとから揚げの定食一つずつ」
 雪兎がそのまま注文するとおばちゃんが雪兎を獅王を見比べながら毎度、と声をかけて厨房に大きく声を張り上げた。
 くっくっと獅王が笑っている。

 「雪兎さんって面白い…」
 「…面白い?」
 どこが?と思いながら向いの獅王を見て首を傾げた。
 「あ、…獅王はもっとお洒落なとこがよかったか…」

 ここにモデルのような獅王は合わない、とはっと気付いた。自分のお気に入りがここだったから何も考えないで連れてきたけど。
 「ううん?こういうとこも好きですよ?」
 獅王が穏やかな笑みを見せたので雪兎はほっとした。
 
  
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