ライオン
待っている間に無事ケー番の交換をして雪兎さんの新しい情報をゲットすればさらにこの人が近くなった気分になる。
そして出てきた定食に目を輝かせた。
「量が結構多い!」
「そうなんだ。安いのにおいしいし量も多い」
雪兎さんがしたり顔で頷いているのが可愛い。
「ちょっと交換しよ?」
獅王から持ちかけると雪兎さんが頷く。
なんかこんな何でもない事でも嬉しいなと浮かれてしまう。
雪兎さんのテリトリーに入れてもらえてる感じだ。昨日まで全然知らなかった雪兎さんが近い気がする。
いや、気じゃなくて実際そうなんだろうけど。なにしろ今の真面目でストイックそうなスーツの下に淫らなキスマークが点在してるなんて獅王しか知らないんだ。
白い肌を思い出し、昨夜の雪兎さんの快感を浮べた顔を思い出しただけで勃ってきそうだ。
から揚げを頬張る雪兎さんの口元が油でてらてらと光っているとそれだけでエロく見えてしまう。
「体…平気?」
「……平気…ではないけど…大丈夫だよ」
小さく聞くと雪兎さんが目元を赤くした。白い肌はすぐにピンク色に染まって目元の黒子がますます妖しく見えてしまうのは獅王にだけだろうか?
エロ目線になってしまいそうで雪兎さんからふっと視線を逸らせた。
「雪兎さん仕事の休みって休館日だけ?」
「いや?その他にも交替で休みがあるから」
「じゃ日曜とか土曜日も休みあったりする?」
「取ろうと思えばね」
「じゃ、是非取って?デートしましょう?」
「……いいけど」
雪兎さんが小さく頷いた。
「図書館のカウンターにいない日も結構あるみたいだけどそういう時って何してるんですか?」
「ああ。書庫の整理とかPC処理とか本の修理とか色々結構しなくちゃいけない事って多いんだよ」
「…なるほど」
「表には見えないからね」
ふっと雪兎さんが表情を緩める。仕事の事を聞かれるのは嫌ではないらしい。
「色々雪兎さんの事知りたいな?」
「……俺の事…?知ったら獅王は呆れるんじゃないかな…」
どこか投げやりな感じで雪兎さんが仕事の事を聴いた時とは全然違う自嘲めいた笑みを浮べた。
どうしてそんな表情をするのだろう?
そういえば昨日もそんな感じに見えた時があった。
「…獅王は…こういう所似合わないね」
「そうかな?ああ…外人サンに見えるから?」
「そうじゃなくて。お洒落でかっこいいから」
小さい声での会話だ。
定食屋さんはテレビがついててまるで昭和の時代のようなレトロ感。テレビを見ているタクシーの運転手さんらしき人とか疲れたサラリーマンが綺麗とは言えない雑然としたカウンターを占めている。
確かにそんな中で違和感はあるだろうけど、それは獅王だけではないと思うのだが…。
それにしても雪兎さんの口からかっこいいから、なんて言葉が出てくるとは思わなかった。
ちらちらと雪兎さんが見てるには分かっていたけど、口に出してはっきり言ってくれるのは嬉しい。
「髪…下ろしてた方が…いい」
「じゃこれから髪上げない」
「あ、べ、別に…いい、けど…。髪上げても」
「でも雪兎さんは髪下ろしてた方が好み?」
「……髪が綺麗だから。瞳の色も綺麗だ」
「……そんな褒められ方した事なかったけどな…。俺からしたら雪兎さんの黒い髪と黒い大きな瞳のほうが綺麗に見えるけど。ふぅん…」
やっぱり雪兎さんは獅王の外見は気にいってくれているらしい。
「結構ね…コンプレックスだったんですけど」
「え?」
獅王が誰にも言った事のない心情を口に出した。
「見た目がすっかり外人サンでしょ?小さい頃なんて髪は本当に金髪だったし。それで名前が日本人ってね…幼稚園や小学校の頃って容赦ないから…。なんで外人なのに日本人の名前なの?って普通に聞くし。自分は日本人のつもりなんだけど、確かに血は入ってるし…一体自分はどこ人なんだろう?とか思ったりね。中学辺りからは開き直ってましたけどね。……こんな事誰にも言った事ないんだけど、雪兎さんだけ特別ね?」
笑みを浮べながら雪兎さんに向かって口を開くと雪兎さんが少しだけ困った顔をしてそして顔を俯けた。
「……かっこいいから…似合ってる。名前も似合ってるし。ライオンの王で獅王っていうのもかっこいい。俺なんかユキウサギなのに…」
ぷっと獅王が笑うと雪兎さんが真っ赤な顔をして怒ったような表情で睨んできた。
「雪兎さんも似合ってますよ?可愛いですもん。俺のウサギさんだよね」
「…なんだよ…それ」
むっとした様な雪兎さんにまた笑ってしまった。
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