ライオン
やっぱりどこか雪兎さんに突き放されているような気がする。
獅王が告ってOKされてマンションに連れて行ってセックスもしたのにどこか雪兎さんは自虐的な表情を見せる。
なんでだろう…?
目元のホクロと伏せた睫毛が憂いを帯びている。どうして…?
そんな表情をしてほしくないなぁ…とつい獅王はじっと雪兎さんを見てしまう。
「…何?」
「いえ、なんでも」
雪兎さんが獅王の視線に気づいて顔を上げれば視線がぶつかる。
吸い込まれそうな黒い瞳だ。やっぱ綺麗だなぁと顔がやに下がりそうになる。
「戻ろうか。獅王、授業の時間は大丈夫?」
「平気です。後で俺の時限の予定とかメールしますね?それで雪兎さんと時間が合えばランチ一緒してください」
本当は毎日でも一緒したい位だけどそういうわけにもいかないだろう事は分かっている。学生の自分と仕事をしている雪兎さんとは違うんだ。
「バイト…増やそうかなぁ…」
雪兎さんと分かれて大学の構内に戻り、次の講義の席を取ると隣に林がよう、と声をかけて座ってきたのに気付いて呟いた。
「ん?バイト?」
「そう。だってさ…あの人は社会人なわけで…」
「ああ…」
なるほど、と林が頷いた。
「ランチ一緒してきたんだけど、払わしてくれねぇし…。いいって言ったのに…」
「年上の彼女…彼女じゃねぇか…彼氏だとそうなるかね?」
「…だからそれじゃ負担なるだけだろ?やだもんよ」
むぅっと獅王が唇を尖らせた。
「俺だったらラッキーって思うけど」
「本気だったら思わねぇよ。年はどうしたって下に変わりないけど対等でいたいし…守ってやりたいし笑って欲しいと思うし…」
「……お前…本気で本気…?」
林が驚いた顔で獅王を見た。
「ふざけて男相手に好きとか言わねぇよ」
「…まぁ、確かに…。しかしそれ言ったらここの教室の女泣き叫ぶよな…。なんで男と!って」
「…関係ない。好きになったんだから仕方ない」
「そう言いきれるお前がすごいと思うけど」
林が肩を竦める。
「男に本気になるとは思ってなかったなぁ…。でもレオがそんなに付き合ってる相手気にしてるの見た事ないし。高校ん時なんて来る者拒まずだったのに大学入ってからぱったりだもんなぁ?」
「……そういう気になれなかったんだ」
「レオみたいなもてるヤツでも足掻いてるってのが見えると楽しいけど」
「…どういう意味だよ」
「だってさぁ~黙ってても女が寄ってきていただきます、だったのに。ムカつくヤツと思うだろ」
「…外見にだけ寄ってくる奴等だろ」
「今彼はちげぇの?」
「………わかんね。まだそこまで色々知らないし。でも外見は好かれてるっぽい」
「お前の顔嫌う奴なんかいないだろ。嫌うのはライヴァル心持つ男位じゃね?しっかし今日は髪下ろしてるからいつにも増して視線がハンパねぇな?」
ちらちらどころかぎっちり凝視される視線も山ほどある。
「あ~…下ろすの多くなるかも。下ろしてる方がかっこいいって褒められたから。女の視線はうぜぇけど…」
「あっそ。勝手にやってろ」
呆れたように林が呟く。
だからコイツとは付き合いやすいんだ。余計な事も言わないし、物事をそのまま正面から受け止めるヤツだから。
雪兎さんもそう。名前とこの外国の血が流れる事をすぐに聞いてきて、そこも獅王にとっては好感触だった。
勝手にあれこれと詮索されるのは好きじゃない。それなら堂々と聞いて来いって思うのだがそんな人は少ないのだ。
この林も高校の時同じクラスになってすぐになんで日本人の名前なのにそんな外見?とストレートに聞いて来たヤツだった。
勿論ハーフだ、クォーターだと噂になっていたのは知っていたけれど、いちいち獅王は自分から吹聴してたわけではなく放置していた。
もう高校の頃には自分の外見がどうしたって純粋な日本人に見えるはずもないのは分かっていたし、人がそれを勝手に気にするのも身に沁みていた。遠巻きに噂する者、外見にだけ興味を持って近づいてくる者、それがほとんどだったから。
それから林とつるむようになった。林はただ疑問に思ったから確認しただけというのが分かったからだ。
女にとっては獅王と付き合うのはステータスで飾り物だった。
自分の顔や体にしか興味ないんだ。
人はそんなものかと思った。
ただ雪兎さんにだったら最初はそれでいいなんて思ったのは初めてだった。けれど雪兎さんは正面から投げかけて来た。
だからこそ…もっと惹かれた。
「…全部…欲しいなぁ…」
自分に夢中になってくれればいいのに…。
はぁ、と小さく獅王は溜息を吐き出した。
たくさんのポチいつもありがとうございますm(__)m
にほんブログ村小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村 BL小説